賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ。 の商品レビュー
村上龍のエッセイ集。 世界と政治と経済の動きを見ている人の目線だなぁと。 自分の立ち位置や意識レベルに気づかされる試金石みたいに感じる。 タイトルの意味は、幸福の追求より信頼の構築が今、わたしたちに必要だということ。 印象に残ったのは下記2点。 【対立】 対立するのが当然とい...
村上龍のエッセイ集。 世界と政治と経済の動きを見ている人の目線だなぁと。 自分の立ち位置や意識レベルに気づかされる試金石みたいに感じる。 タイトルの意味は、幸福の追求より信頼の構築が今、わたしたちに必要だということ。 印象に残ったのは下記2点。 【対立】 対立するのが当然という考え方だったら、最初からソリューションと交渉準備しなければならない。 現実として、対立は個人から国家までありとあらゆるレベルで生じるから、本当は幼児期から、対立というのは当然のこととして存在すると教え、その解決のためには何が必要かを教えなければならない。 【幸福】 「思考放棄」に陥った人や共同体には特徴的な傾向があるように思う。「幸福」を至上の価値として追い求め、憧れ、生きる上での基準とすると言うことだ。 今、私たちに必要なのは、幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。 幸福は、瞬間的に実感できるが、信頼を築くためには面倒で、長期にわたるコミュニケーションがなければならない。国家だけではなく、企業も、個人でも、失われているのは幸福などではなく、信頼である。
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2013年の村上龍の本。雑誌メンズジョーカーに掲載されたものをまとめた内容。ややくたびれた感のある独特の言い回しだが読んでて楽しい。 以下メモ ●おじさんも若者もバカみたいに大声で話し、笑いながら酒を飲む。きっと辛い人生を送っているのだろう。ひとりで暮らしていてほとんど他人と話...
2013年の村上龍の本。雑誌メンズジョーカーに掲載されたものをまとめた内容。ややくたびれた感のある独特の言い回しだが読んでて楽しい。 以下メモ ●おじさんも若者もバカみたいに大声で話し、笑いながら酒を飲む。きっと辛い人生を送っているのだろう。ひとりで暮らしていてほとんど他人と話すことがない人が、たまに誰かと会うと爆発的に喋るのと同じ。誰かと笑い合うという雰囲気に飢えていて、たまに実現すると、大量の電気信号が脳を流れ、興奮物質が異常に分泌されるのだろう。ユーリアルバチョコフは理由もないのに笑わなかった。 ●野田政権が政治生命をかけて増税という政策をとるなら、自民公明の「合意」を取り付けるのではなく、消費税引き上げという新しいマニフェストを用意し、解散総選挙で国民の信を問うべきだった。 ●公約が簡単に反故されてもこれまで国民が許してきたのは、政治家がどんなにバカでもとりあえず自分の給与も生活レベルも年々上がっていたから。 ●学生から「収入はそれほど要らないから趣味を楽しめて家族を作り、ごく普通の幸福な暮らしができればいいです」と言われたので「それでは、ごく普通の幸福な暮らしを実現するためには年収はどのくらいあればいいと思うか」と聞くと答えられなかった。だからアンケートで「あなたは幸せですか」と聞くのは意味がない。「あなたが幸福だと思える暮らしには年収がいくら必要ですか」という質問にすべきである。 ●紅白を中止して「東アジア歌合戦」にすればよい。特に東アジアの国々とは仲良くした方が良いと思っているわけではないが、NHKがこれを開催すれば「世界でもアジアでも大きな変化が起こっていて、私たちはその変化に適応しなければならないのです」という強いメッセージを発することが出来る。また東アジアの大衆音楽の文化的主導権も、とりあえず保持できる。日本のメディアには不思議なことに「文化的主導権を奪われるかもしれない」という危機感がゼロだ。 ●北朝鮮の指導者と指導部が理性を失ったり明らかに発狂する以外、攻撃されることはない。したがって北朝鮮のプライドが満たされるようにある程度真剣に受け止めたふりをして、基本的には静観するのが正しい。 ●私たちの社会においては、幼児期から「対立は悪」と教える傾向がある。意見の対立、利害の対立はそもそもその存在自体が悪という考え方。幼稚園や保育所でも「みんなと仲良くしなさい」と教えられる。幼児は対立という概念と解決の方法を学ぶことができない。 ●選手が監督を批判するのはタブーだし、部下が上司に異議を唱えるのも許されない。さらに上司が単独で責任を持って決めた、とするよりも合議制で決められることが多い。「私が決めた」ではなく「みんなで決めた」の方が丸く収まる。決めたのが個人でなくみんな、なので、トラブルや失敗の時の責任が曖昧になる。 ●対立を回避するためのツールとして日本人は洗練された「敬語」を持っているが、対立が生じた時のツールは少ない。謝ったところで「あなたがそうまでいうなら全部水に流しましょう」とならずに「謝って済む問題じゃないだろう?」となる。解決策を考えられるのか。 ●勢いのあるIT会社でも、低賃金で単純なプログラムを組む人と、クリエイティブな能力を駆使する少数のスペシャリストという区分が確立している。モチベーションのある子供や若者が高度なスキルを身につけられるようなトレーニング施設もない。体力のある企業が激減しているので入社後に適切で充分な研修を受けられる社員は少ない。多くの企業はすでにスキルを持つ人材を中途採用し、実務のトレーニングを受けていない大多数の新卒者は経験も技術も知識も得られないまま単に年をとっていく。 ●多くの人が思考放棄に陥っている。シリアスな現実から目をそらし、希望的観測を交えて将来を予測し、考えることから逃げる。思考放棄に陥った人や共同体には特徴的な傾向がある。幸福を至上の価値として追い求め、憧れ、生きる上での基準とするということ。 ●私たちに必要なのは幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。外交で言えば日本は緊張が増す隣国と「幸福な関係」など築く必要はないが、信頼関係は重要。企業も個人と失われているのは幸福などではなく信頼である。
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10 カンブリア宮殿の村上龍のエッセイ。 「寂し国の殺人」以来、二冊目。 今回も、脱力感ある感じで淡々と進むのが心地よかった。 一時の幸せを装うさみしい若者たち。他者に合わせることで、幸せを感じようとするがなんだか虚しい。 本質的には信頼関係を求めている。それが失われた現代...
10 カンブリア宮殿の村上龍のエッセイ。 「寂し国の殺人」以来、二冊目。 今回も、脱力感ある感じで淡々と進むのが心地よかった。 一時の幸せを装うさみしい若者たち。他者に合わせることで、幸せを感じようとするがなんだか虚しい。 本質的には信頼関係を求めている。それが失われた現代の日本を村上龍の視点で描かれてるように感じた。
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村上龍の作品は,基本すべて読んでいるが,特にこのシリーズのエッセイ集は好きでいつも楽しみにしている.内容は「賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ」というタイトルに集約されている. ・今私たちにひつようなのは幸福の追求ではなく,信頼の構築である ・信頼を築くには面倒で長期間にわたるコミュニ...
村上龍の作品は,基本すべて読んでいるが,特にこのシリーズのエッセイ集は好きでいつも楽しみにしている.内容は「賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ」というタイトルに集約されている. ・今私たちにひつようなのは幸福の追求ではなく,信頼の構築である ・信頼を築くには面倒で長期間にわたるコミュニケーションがなければならない.
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
対立は、よいことではないが、あってはならないことではない。意見や価値観、それに利害の対立があるのは面倒ではあるが、一般的で普遍的なこと、という認識が足りないと、実際に対立が激化したときに、それに気づき、ソリューションを考えるのがむずかしくなる。(p.134) 独裁者に弾圧されているメディアは、独裁者は倒れれば自由を手に入れることができる。だが、日本の大手メディアが高度成長時のパラダイムから抜け出すことは非常にむずかしい。具体的には、政府の政策による利害が国民の階層間で違っていることへの言及ができない。(中略)国民に一体感を醸成する「情報の伝え方」しか知らない。ある特定の階層から苦情が来ることに耐えられない。分かりやすいキャッチだから例に挙げるが、「みなさまのNHK」なのだ。(p.189) 「思考放棄」に陥った人や共同体には特徴的な傾向があるように思う。「幸福」を至上の価値として追い求め、憧れ、生きる上での基準とするということだ。わたしたちの社会では、よく「幸福であるかどうか」が問われる。(中略)今、わたしたちに必要なのは、幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。外交でいえば、日本は、緊張が増す隣国と、「幸福な関係」など築く必要はない。しかし、信頼関係にあるのかどうかは、とても重要だ。幸福は、瞬間的に実感できるが、信頼を築くためには面倒で、長期にわたるコミュニケーションがなければならない。国家だけではなく、企業も、個人でも、失われているのは幸福などではなく、信頼である。(pp.202-203)
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村上龍の主に若者向けに書かれたであろうエッセイ集。 救いがない現状を淡々と吐露している。 淡々としている分、この国に漂う終末感も余計はっきりと感じられて色々不安になる。
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歳をとったなぁと思うけど、でも相変わらず正直な人だなと思う。そして相変わらずシンプルな表現や言い回しがとてもスマート。
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馬鹿みたいに大声で話、笑いあう人々を見るたびに、きっとつらい人生を送ってるんだろうな、と思う。一人で暮らしていてほとんど他人と話すことがない人がたまに誰かと合うと爆発的にしゃべるのと同じだ。
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ページ数は200を超えるが、文字数は然程多くなく、さっと読める。なのに示唆に富み、現代日本及び世界について多くを考えるきっかけとなる。本シリーズはどれもそうだが、めちゃ良書。
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龍さんが自分で歳を取った、なんて精力的に活躍していると思っていたのでビックリ!(確かに近影は年齢を感じました)でも人生って案外こういうモノなんだろうなぁ。今回はアベノミクスにも言及しています。政治家や上司がこういうコトを分かっててくれるとすごく世の中変わるだろうに、ちっとも変わら...
龍さんが自分で歳を取った、なんて精力的に活躍していると思っていたのでビックリ!(確かに近影は年齢を感じました)でも人生って案外こういうモノなんだろうなぁ。今回はアベノミクスにも言及しています。政治家や上司がこういうコトを分かっててくれるとすごく世の中変わるだろうに、ちっとも変わらないのはなぜ?龍さんのエッセイが好きなので毎回不思議に思います。
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