沈むフランシス の商品レビュー
p24 桂子は思う 人がかたちにしたものは残っても、人そのものは残らない。その人がどのような風貌をそなえ、手や足、からだをどのように動かして、どのような声で話したか かたちにとどまらないものはのこらず消えてしまう。 p133 わたしは、これまでのことだって知りたい。いまこの瞬...
p24 桂子は思う 人がかたちにしたものは残っても、人そのものは残らない。その人がどのような風貌をそなえ、手や足、からだをどのように動かして、どのような声で話したか かたちにとどまらないものはのこらず消えてしまう。 p133 わたしは、これまでのことだって知りたい。いまこの瞬間は、とつぜんここに現れたわけじゃないでしょう。あなたに子どもだったときがあって、わたしだって子どもだった。それからいろいろなことがあって、そのうえにいまがある。いまっていうのは、経験と記憶のうえに、たよりなく」のっかているものだから、ときどきは振り返って、自分はどうしていまここにこうしているのか、考えてみたほうがいいんじゃないの。 これまでにあったことをぜんぶ聞きたいなんて言っていない。あなたのなかに残っている記憶とか、感情とか、かたにのさだまらないままでいいから、なにかの折にすこしずつ聞かせてほしいだけ
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もう男と暮らすなんて二度とゴメンだ、仕事も辞めて離婚もする、私のことを誰も知らない北海道の小さな村で暫くは一人で生きてゆく、と心に決めて実際に行動した35才のバツイチ女性。非正規の郵便配達員として小包を届けた先の男とすぐにベッドインする? カラダから始まる恋もあると言うが、撫養桂...
もう男と暮らすなんて二度とゴメンだ、仕事も辞めて離婚もする、私のことを誰も知らない北海道の小さな村で暫くは一人で生きてゆく、と心に決めて実際に行動した35才のバツイチ女性。非正規の郵便配達員として小包を届けた先の男とすぐにベッドインする? カラダから始まる恋もあると言うが、撫養桂子さんの押しかけに冒頭から入り込めず、心の機微をすっ飛ばして最後は割れ鍋にとじ蓋のハッピーエンドだったとしても、紹介文にあるような大人の恋愛小説と呼ぶには少し説明不足感が否めない。なにより二人のセリフが少ない。 ただ男性の方はわかります、妻と別居していて不倫もして、実家が太くてお金に困ってなくて、部屋もきれいで料理もできて、ただ女性とヤリたいだけ、、、こんな男はいそうなので違和感はない。音響出力装置に対するこだわりも男だなって感じるけれど、ベッドの中に小型マイクは杜撰すぎる入力装置でテクニカル的な細部も気になるといえば気になるが、全体像としてはなるほど理解できる。 まあなんだかんだ言っても楽しく読めたのだろうか、モチーフを「水」と決めて、水にまつわる冬の北海道の自然描写や、お酒もアクアビット(生命の水)という徹底ぶりだ。男の部屋の様子や二人が過ごす時間の手触りなど実に巧みに書かれていて、文章を味わうように読める。きっと松家さんは上質なものがお好きなんだと推察します。
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なぜこの本を読もうと思っていたのか忘れており、タイトルにも?となっていたが、そのフランシスと判り納得。そりゃ読まないとね。 物語の視点も描写も嫌いではないが、何かが物足りなかった。
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確かにフランシスが沈んだ・・最後がちょっとわからなかった。 久しぶりに松家さんの物語を読んだ。「火山のふもとで」に感動して以来。 松家さんの世界観らしい書き方を感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
やっぱりこの人の文章には魔力がある。雄大な自然、そこに抱かれる小さな田舎村の人々と暮らしが匂いと音とを持って頭の中で易々と立ち上がる。私も田舎で育ったので、大小無数の星がまたたく(本当に絶え間なくパチパチとまたたくのだ)夜空を見たことがあって未だに脳裏に焼き付いているのだが、その光景がさっとよみがえってきた。「世界全体を圧するような無数の光の点から、何かがこちらに向かってくる。耳を聾するおおきな音が天から舞い降りてくる」そう、あの圧倒感。 移り変わっていく風景とちょっとした音や匂いを受け取りながら、その日その日で決まった工程を繰り返す仕事で「冬眠」する感覚、黒曜石の石器に見ず知らずの古代人の手を感じて彼らの表情や生活に思いが行く瞬間、そういう文の感触がとても柔らかく、好み。 車の音と出入り、コミュニティの中の情報が絶えず突き合わされることで誇張なく全てを監視されているド田舎の描写はリアリティある。 しかし、前も似たようなこと思ったけどストーリーと登場人物が文章に比べて低俗でだらしなさすぎる。御法川さんが「だまされてはだめ。あたらしいほんとうの音をきくようにこころがけなさい」と言っても、それで桂子がやるのが現実から目を背けて不貞行為を続けることなんかーいと思うと締まらない。しかも結婚してるのずーっと隠されてて、二人目の不倫相手っていうどうしようもなさ。 何の後ろ盾もない東京の余所者女(非正規雇用!)が田舎のインフラ・土建の有力者二人の顔に泥を塗っているのに、呑気に不倫続行していて恐ろしい。 「この光があるうちは、なにも絶望することはないのだ」なんて言っても、離婚揉めているようだからすぐに大小の実害が出て村を出ていかざるをえなくなるだろうし、下手したら訴えられて慰謝料ぶんどられるのに全然大丈夫じゃない。 この人の本は3冊目だけど、毎回料理と家具が趣味の男が女に不自由しない話だな〜と思うとちょっとアレ。
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『火山のふもとで』が圧倒的によかったので、期待しすぎたかな感。 最後の絶望と希望の混ざり方に、非常に複雑な気持ちになった。 あと、松家さんが描くセックスの女側の描写にあまり入り込めなかった。距離を感じた。笑
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デビュー作「火山のふもとで」で美しい日本語使いと魅力的なキャラクター造形に感銘を受けた松家久之氏の第二作。前作との一番の違いは執拗なsex描写。舞台としての北海道の田舎町はとっても魅力的で共に一人暮らしの男女は見た目も考え方もえらく都合が良い。 「やがて犬の鼻のようにおもっていた...
デビュー作「火山のふもとで」で美しい日本語使いと魅力的なキャラクター造形に感銘を受けた松家久之氏の第二作。前作との一番の違いは執拗なsex描写。舞台としての北海道の田舎町はとっても魅力的で共に一人暮らしの男女は見た目も考え方もえらく都合が良い。 「やがて犬の鼻のようにおもっていたものにじかにふれる」という描写が秀逸。 北海道の自然、気候、動物たちの姿は素晴らしいけど… 3.3
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情景描写が綺麗。 雪だけでもあれだけ表現できるなんて。 でも 2回目家に行った時に「なんできたの」なんて言われ方したら 踵を返すなぁ 笑
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ただただ美しい。その一点に尽きる大人の恋愛小説。仕事を辞め、中学生の一時期暮らしたことのある北海道の安地内村に東京から引っ越し、非正規で郵便配達人とて暮らし始めた三十代半ばの桂子は配達を通して知り合った少しミステリアスな和彦と恋仲となる。小さな村のこと、桂子は和彦の不穏な噂を耳に...
ただただ美しい。その一点に尽きる大人の恋愛小説。仕事を辞め、中学生の一時期暮らしたことのある北海道の安地内村に東京から引っ越し、非正規で郵便配達人とて暮らし始めた三十代半ばの桂子は配達を通して知り合った少しミステリアスな和彦と恋仲となる。小さな村のこと、桂子は和彦の不穏な噂を耳にして心を騒つかせる。北海道の自然、2人がリビングのステレオで聞く様々な風景の音、局長や御法川さんの温かい優しさ、それだけでなく、一向に心を開かない和彦へのもどかしさや、桂子の気持ちを踏みにじるような秘密を持つ和彦さえ美しく感じた。心に残る一冊。
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北海道、枝留。 黒曜石の埋まる、小麦と原生林と雪の村。 水力発電機の純度の高い電気と音。 目的地ではなかったはずの土地。
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