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岩波講座 現代社会学(1) の商品レビュー

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2016/10/17

本シリーズの編集委員を務める井上俊、上野千鶴子、大澤真幸、見田宗介、吉見俊哉の5人が、比較的長めの論考を執筆しています。それぞれの論文のタイトルは、見田宗介「声と耳 現代文化の理論への助走」、井上俊「動機と物語」、上野千鶴子「〈わたし〉のメタ社会学」、大澤真幸「〈資本〉の想像力―...

本シリーズの編集委員を務める井上俊、上野千鶴子、大澤真幸、見田宗介、吉見俊哉の5人が、比較的長めの論考を執筆しています。それぞれの論文のタイトルは、見田宗介「声と耳 現代文化の理論への助走」、井上俊「動機と物語」、上野千鶴子「〈わたし〉のメタ社会学」、大澤真幸「〈資本〉の想像力―精神分析の誕生」、吉見俊哉「アメリカナイゼーションと文化の政治学」となっています。 見田はフーコーの「性の政治学」について、井上は動機のヴォキャブラリーに関する現代の研究について論じており、それぞれ現代の社会学における注目すべきトピックを掘り下げて、社会学がいま何を問われているのかというより普遍的な問題圏への展望をおこなっています。 個人的にとくに刺激を受けたのは、大澤の論文でした。精神分析の創始者であるフロイトその人の無意識、とくに彼の父ヤーコプに対する潜在的な意識について精神分析的な考察をおこない、彼の学問が反ユダヤ主義に対抗して形作られていったことを明らかにします。その一方で大澤は、行為と体験の集合の全体を「経験可能領域」と呼び、もっとも広義に理解された〈資本〉とは、現在の特殊な経験可能領域をより普遍的な経験可能領域の地平へと組み込んでいく運動のことだと主張し、特殊的な「ユダヤ人」という民族と、普遍的な「人間」という理念との間に存する落差が精神分析の誕生を準備したという議論が展開されていきます。

Posted byブクログ