夜になっても遊びつづけろ の商品レビュー
第1エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』から始まる、社会/メディアへの遠慮なき批評が大炸裂! 高校時代の幻の投稿原稿も発掘・収録。痛快な言葉のパンチ力に抱腹絶倒! 対談=上野昂志/解説=中島京子
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私が金井美恵子さんの小説やエッセイを楽しめるようになったのは、そんなに前のことではない。あの取っつきの悪い独特の文章に途惑いながらも読んでいくうちに、いつ頃からか一番好きな書き手の一人になっていた。 だから、ここに収録されているもの、特に年代の古いものはほとんど未読だった。なん...
私が金井美恵子さんの小説やエッセイを楽しめるようになったのは、そんなに前のことではない。あの取っつきの悪い独特の文章に途惑いながらも読んでいくうちに、いつ頃からか一番好きな書き手の一人になっていた。 だから、ここに収録されているもの、特に年代の古いものはほとんど未読だった。なんといっても驚かされたのは、金井さんは十代にして既に金井さんだった、ということ。巻頭の「処女作の頃」は十九歳の時書かれたもの、巻末には「美術手帖」への投稿が載っているのだが、このときはまだ高校生。それでもこれらは紛れもなく「金井美恵子」の文章なのであった。 「辛口」なんぞという言葉が裸足で逃げ出す徹底した批判意識、にもかかわらず思わず笑い出さずにはいられない可笑しさ、いやまったく、そもそものはじめから金井さんのスタイルは完成されていたのだと感嘆のため息が出る。 背筋がヒヤヒヤするような鋭い言葉に震え上がりながらもワハハと笑う、これぞ金井作品を読む醍醐味だ。もちろん、真正面から「批評」として書かれたものも数多く収録されているのだが、不出来なファンとしては、他では読めない著者ならではの毒気たっぷりの文章に「待ってました!」と声をかけたくなってしまう。 そういう意味でのお気に入りをいくつか。 「グラスに顔があってもいいじゃないか!と岡本太郎はいう。グラスに顔があってはわるい、とはだれもいってないじゃないか!」 岡本太郎を「時代に遅れてしまった、かつてのアヴァンギャルディスト」と呼ぶその舌鋒は鋭い。 「すばる」の特集で、開高健の「衣食足りて文学は忘れられた?」という問いに答えて曰く、「まず思ったのは、これはある種のデブの発想だな、ということ」。ひぇ~。 「読んで面白くて笑ったマンガについて、思想的なり批評的なり、ともあれそうあるべきために習得した言葉では語れないものについて、とりあえず、くだらない、という言葉はつかわれるのココロ。そういうのは、やっぱり、頭がタリラリラーンなのだ」 これは「クーダラナイ、クーダラナイのココロ!!」と題されたもので、全編この調子。こういうところが金井さんの格好いいところ。「こまわり君が好きっ!!の巻」というのもあるよ。 「浪曲子守歌」を聞くと「わたしは胸がいっぱいになってしまう」そうだ。「むろん、わたしがこの歌に感情移入をするやり方は、女房に逃げられた土方渡世のおとっつあんの背中に背負われた赤ン坊の立場になって、歌を聞くことなのである」。なんかおかしい。ただ、この一文は次のように締められていて、うーんと唸らされる。「ない物ねだりをすれば、歌謡曲の子守歌には、”子を呪う”という情念が欠如していることが不満で、日本の子守歌の、ほとんどが“子呪い”の黒い底流を潜めていることを思えば、そういう歌が作られてもいいはずだ」 「金井美恵子インタビュー」が掲載されていて、これがまた読み応えがある。略年譜も嬉しい。満足満足。続く2は「猫、そのほかの動物」だそうで、トラーにまた会えるのが楽しみだ。
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エッセイ・コレクションの第1巻。 映画評が多いように感じたが、その他の話題も豊富で飽きない。 初期のエッセイは若書きというか、書き方がやや荒々しいものも散見されたが、徐々に金井美恵子の文体になっていく様子が面白かった。 これでもう少し小説の刊行ペースが早ければなぁ……。
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