三日月がわらってる(4) の商品レビュー
揺れ動くココロとカラダ……再びの強い絆への分岐点
いつの間にか『沢田篇』と銘打たれている(?)沢田先生登場以降の展開だが、艶々作品にはやはり恋敵という名の官能的悪役が必要ということなのだろうか。さらに侵食の度を増す沢田先生との関係がどうなるか、という見どころに満ちた第4巻である。 流れとして言ってしまえば、事実(らしきもの...
いつの間にか『沢田篇』と銘打たれている(?)沢田先生登場以降の展開だが、艶々作品にはやはり恋敵という名の官能的悪役が必要ということなのだろうか。さらに侵食の度を増す沢田先生との関係がどうなるか、という見どころに満ちた第4巻である。 流れとして言ってしまえば、事実(らしきもの)を知ったユキオとサキ先生との距離が遠くなったり近くなったりするのを読み手としては目の当たりにする訳だが、沢田先生がこの2人にとっての障害である以上、その末路についてのある程度の予測は(まさかの可能性もゼロではないとか思いつつ)できているのだが、それ故に「どう見せてくれるのか」に注目すれば、それは予測の範疇でありながら、しかし予測を超えてもいたとも称せねばならないだろう。 当事者だけであれば越えられないかもしれない難問について、結果的にかもしれないが2人を応援してくれる人達がユキオとサキ先生の双方の側にいることで描かれる逆転の構図は大いに溜飲を下げるものである。今回はサキ先生が最後に頑張った!ユキオはサキ先生に謝りなさい!といった趣もあるのだが、それはそれとして、サキ先生が気づいた「全部」と「一部」の相違を『初恋』とする件は、あたかも恋に恋するお年頃の、夢見る夢子ちゃんだった自分からの卒業でもあったことを示唆する含蓄を感じるものでもあった。それ故に沢田先生に対するサキ先生のココロとカラダはいつになく乖離しており、逆に言えば、それ故に官能的な興奮度は増しているのである。惜しむらくは直接的な官能場面も描写も本巻全体としてはさほど多くなかったところか。 このまま進むのかな?どうかな?といった残滓は払拭し切れないものの、今後の方向性は見えただけに次巻の展開(コミカルなテイストが帰ってくるかも?)は楽しみにしたい。 なお、余談ではあるが、生徒という子供としか日常的には接することがなく、常に先生と呼ばれる存在として描かれる沢田先生に見られる滑稽なほどの偏った思考や言動、あるいはその欠如に哀れを感じたのは単なる深読みではなく作者もまた描こうとするものがそこにはあったのだろうか。
DSK
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