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湯浅泰雄全集(9) の商品レビュー

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2021/01/23

『神々の誕生―日本神話の思想史的研究』(1984年、以文社)と『歴史と神話の心理学』(1984年、思索社)のほか、5編の論考を収録しています。 本巻に収められているのは、著者の日本思想史研究にかんする諸論考で、古代から近世まで幅広い時代があつかわれていますが、中心になっているの...

『神々の誕生―日本神話の思想史的研究』(1984年、以文社)と『歴史と神話の心理学』(1984年、思索社)のほか、5編の論考を収録しています。 本巻に収められているのは、著者の日本思想史研究にかんする諸論考で、古代から近世まで幅広い時代があつかわれていますが、中心になっているのは古代の日本人の心性で、ユング心理学の枠組みにのっとって解釈の試みがなされています。記紀神話についての議論は、「現象学的」と著者自身が呼ぶ立場からなされたものであり、歴史学の立場にもとづく上田正昭の研究と、国文学の立場にもとづく西郷信綱の研究を総合することがめざされています。とくに、記紀神話に見られる古代の日本人の心性が、人格神の観念へと移り変わっていき、それが天皇を中心とする古代の政治体制にどのようにして結びつくのかという問題をめぐって議論が展開され、ユング心理学における「女性原理」と「男性原理」という概念を利用しながら、古代の日本人の精神史を歴史的事実と一体的にとらえるような視座を示しています。 ユング心理学的な神話解釈と、和辻哲郎から引き継いだと思われる国民文化論的な枠組みが著者の議論の前提となっており、個人的には全面的に同意できないように感じていますが、ともあれひとつの立場から日本の古代の思想史を整理する試みとして読みました。

Posted byブクログ