ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」 の商品レビュー
私利私欲と十字軍のパワーは思いもかけない成果も生む。ガマの神がかった精神が、インドへの航路を開いたが、来られた方の人々にとっては、何と恐ろしい災いだった事だろう。今に至るキリスト教とイスラム教との対立の歴史も、さらっとおさらいしてくれていて、流れが分かりやすかった。
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ガマのインド航路発見が持つ意義を キリスト教とイスラム教の対立という観点から大きく捉え、 解説する一冊。 当時の人々が持つ宗教観や歴史的な背景、 地理的な事情を非常に丁寧に説明し、 その上で船乗りたちやインド人、アフリカ人らの 息遣いや生活ぶりを詳細に描く手腕は あっぱれとしか...
ガマのインド航路発見が持つ意義を キリスト教とイスラム教の対立という観点から大きく捉え、 解説する一冊。 当時の人々が持つ宗教観や歴史的な背景、 地理的な事情を非常に丁寧に説明し、 その上で船乗りたちやインド人、アフリカ人らの 息遣いや生活ぶりを詳細に描く手腕は あっぱれとしか言いようがない。 個人的にはガマの功績が持つ意味合いについて、 コロンブスやマゼランに隠れがちな印象を持っていたが、 これをようやくきちんと理解できたと感じている。 人が人である限り聖戦は終わらないのだろうか。
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25文字×22行×2段組みで370ページ、原注で80ページに及ぶ大著。 ヴァスコ・ダ・ガマの航海録・冒険譚ではなく、キリスト教世界とイスラームの戦い、今なお続く「十字軍」「聖戦」としての視点から捉える。 ゆえに本書はイスラームの成立~地中海への勢力拡大、イベリア半島をめぐる支配とレコンキスタについても語る(ヴァスコ・ダ・ガマは140ページごろまで出てこない)。 もちろん彼の初めてのインド行についても、当時の航海日誌などをもとに詳細に描かれているが、やはり本書のキモ・核となる部分はヴァスコ・ダ・ガマが初めてインドに到着した以降だろう。 そこで、宗教の名のもとに行われた数々の蛮行・・・この背景には、ヴァスコ・ダ・ガマのインド行は、当時のヨーロッパで信じられていた「プレスター・ジョンの国」と手を結び、イスラム勢力を駆逐することを第一目的としていたことにある。彼らはインドからイスラムを追い出し、さらにキリストの教えを拡げていくという使命を負っていた。 しかし、実際には第2の目的であった富を得るための行為がメインになり、さらに自らの蛮行により支持を得られないままポルトガルは主役の座を降りることになる。 そしてエピローグとして語られる、1世紀あまりのポルトガルの繁栄(それはインドへの航海に関する諸々を秘匿することによって維持された)のあとにもたらされた世界・・・インドではヴァスコ・ダ・ガマの到着~独立までを(植民地時代を含めて)「ヴァスコ・ダ・ガマの時代」と分類しているという。 ヴァスコ・ダ・ガマがアジアで初めて発射した大砲。それはヨーロッパがアジアを帝国主義で支配する時代の号砲である。およそ1,400年前に衝突したキリスト教世界とイスラームは、同じルーツを持ちながら、しかし、神の仕事を剣と銃で行うことの疑問を持たぬまま、現代にいたるまで対立を続けている(著者は植民地主義の結果として創設された、世界秩序としての「国連」や「民主主義」も生活様式を押し付ける、という西洋のたくらみが継続している点で、目立たなく姿を変えた十字軍である、と述べている)。 「すべての聖戦をお終わらせるための聖戦」の不可能性について触れ、著者は筆を置く。 単なる冒険譚ではない、この一言の重みを考えさせられる一冊。
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