中国文学講話 の商品レビュー
神の世界と人の世界とが未だ未分化であった時代、各地方に神を祭る詩が生れ、それは一種の囃子として人々の間に頌い継がれていた。 武力による統治が進むと統治者たる王が生れ、王を中心としてその一族による領土の支配が進む。しかし一族の中にもそこから溢れたり食み出したりする者が現れ、片や、庶...
神の世界と人の世界とが未だ未分化であった時代、各地方に神を祭る詩が生れ、それは一種の囃子として人々の間に頌い継がれていた。 武力による統治が進むと統治者たる王が生れ、王を中心としてその一族による領土の支配が進む。しかし一族の中にもそこから溢れたり食み出したりする者が現れ、片や、庶民の中から商魂たくましい者が現れると、知識を持つ支配層くずれと商魂を持つ庶民あがりという、二つの人種が結託して新たな階層ができあがる。 この階層では世間や社会を観察することによって思想が生み出され、創始者の許にやがて弟子が集うようになると、教育が職業化する。教育者は更に各国からの招聘を受ける内に自らの信念や思想を貫徹し、世の中に拡めることに心血を注ぐようになる。 西周以前の『詩經』などにみられるような大衆(の統治者に対する不平不満を著した)文学は、戦国以降の『楚辞』などにみられる文人(の社会に対する不平不満を著した)文学にかわる。 思想家の中でも儒家が漢朝により取り立てられると、道家がそれに反発するように独自路線を行った外は、特に目立った動きもなくなってしまう。 詩は時として上への不満を吐き出す為の手段にもなった。 中国文学と銘打っているのに、文中に引用されている詩歌の半分ほど乃至はそれ以上が日本語訳のみ掲載。それが書き下し文ならまだしも筆者による完全な意訳で、しかも処々作品名すら未記載なので、日本文学についての本なのかと勘違いしてしまうくらい。 一番嗤うのは、そうやって日本語意訳だけ載せたあとに「これをみましても、宋になると詞の形式がたいへん複雑になり…」とあくまでも原文を見せた体で書かれていること。唐詩の漢字五文字やら七文字やらに対する日本語訳も、宋詞の日本語訳も長さ大して変わらないのに、「こんなに複雑」って言われても…。 ただ、書籍の内容を概してみればやはり気付きは多い。
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