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爪と目 の商品レビュー

3

198件のお客様レビュー

  1. 5つ

    12

  2. 4つ

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  3. 3つ

    52

  4. 2つ

    40

  5. 1つ

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2024/03/06

『しょう子さんの忘れていること』 本当の名はしょう子さんではないしょう子さんの姿をありありと想像できる。何もかも荷物をおろしたのに揺らされる苦痛を思うと顔が歪んだ。 『ちびっこ広場』 主人公の大樹への想いが、左の肋骨の下から3本目の辺りが、がじっとするくらい伝わってきた。 生々...

『しょう子さんの忘れていること』 本当の名はしょう子さんではないしょう子さんの姿をありありと想像できる。何もかも荷物をおろしたのに揺らされる苦痛を思うと顔が歪んだ。 『ちびっこ広場』 主人公の大樹への想いが、左の肋骨の下から3本目の辺りが、がじっとするくらい伝わってきた。 生々しかった。 『爪と目』 読み進めるほどに血の温度が一気に下がるような小説だった。 見られている。 罰は必ず与えられる。 あなただけが傷つかなかった今までは、もうお終い。 そう言われているようだった。 長年的確に説明出来なかったあらゆるタイプの異性に強めの恋愛感情を抱かれやすい人の特徴が的確に説明されていて、ああこう言えば良かったのだと思った。 レーシックをする前に、ソフトコンタクトレンズを長年愛用していた。数年前まで、外さずに眠ってしまいソフトコンタクトレンズが目の中で膨張する悪夢をみることが度々あった。 昔、爪を噛む癖のある友人が2人いた。2人ともベビースモーカーだった。噛む時は、煙草をくゆらせる時より、目が見開かれていた。 子どもを産んでしばらくしてからは、ベランダにでる時は、必ず跨いで入ろうと思えば入れるが、背丈が小さい子には届かない小さい方の窓を開けて出ていた。その時のざわざわした砂つぶのような小さいけれど確かにある恐怖に近いもの。 そんなことを思い出した。

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2024/02/09

不穏な空気が漂う文章が好き。 エンタメ性というよりは、文章そのものを 楽しむような作品に感じたので、 芥川賞受賞作なのも 納得。 藤野さんの作品は、エンタメ性の高いものも あるので、その時々の求めるものを読めるのも良い。

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2024/01/30

149回(2013年上半期) 芥川賞受賞作 わたしの爪とあなたの目の痛々しさ どちらも自傷 爪は他傷にも及ぶ あなたとわたしの間には 笑いや愛情などのあたたかなもの は育まれない 死んだ母のブログがとてもリアル そういう人っているいるって思う ある意味無個性 でももっと無個...

149回(2013年上半期) 芥川賞受賞作 わたしの爪とあなたの目の痛々しさ どちらも自傷 爪は他傷にも及ぶ あなたとわたしの間には 笑いや愛情などのあたたかなもの は育まれない 死んだ母のブログがとてもリアル そういう人っているいるって思う ある意味無個性 でももっと無個性なあなたが その無個性を模倣してそれっぽい 生活を築き上げていく わたしも与えられたお菓子やジュースを もくもくと消費していく 現代社会の闇というか 現代社会を生きる普通の人たちの不気味さを描いた 作品なのかなと思った

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2024/01/18

父親との不倫相手を、娘の視点で書いた小説。そのため、「あなた」という二人称で書かれていた。娘の視点にあどけなさはなく、妙に大人びていたのが印象的だった。気持ち悪い描写もあったが、引き込まれた。芥川賞受賞の表題作のほか、2作品収録。

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2023/10/04

3歳の女の子を「わたし」、義母を「あなた」と表現する文体。読み辛いという感想を持つ人が多いようだけど、私にはすんなり入ってきた。文章も読みやすいし、さくさく読み進められたんだけど、肝心な何を伝えたいのかが全くわからなかった(ーー;)

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2023/08/16

「あんたもちょっと目をつぶってみればいいんだ。かんたんなことさ。どんなひどいことも、すぐに消え失せるから。見えなければないのといっしょだからね、少なくとも自分にとっては」 ときには図太い神経を持つことも必要だと感じた。子どもは感受性が高いために、大人の細かな態度の変化や心情に気づ...

「あんたもちょっと目をつぶってみればいいんだ。かんたんなことさ。どんなひどいことも、すぐに消え失せるから。見えなければないのといっしょだからね、少なくとも自分にとっては」 ときには図太い神経を持つことも必要だと感じた。子どもは感受性が高いために、大人の細かな態度の変化や心情に気づいてしまう。3歳児視点で進むのが恐怖をより掻き立てている。

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2023/04/17

感想 嘘と間違い。個人の視点から抜けられないがなんでも語る。虚偽を差し込めばそこに矛盾はない。故意に、話に一貫性を持たせるために、嘘をつく。

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2023/01/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表題作は「あなた」と「わたし」の事が書かれた、客観性がありそうでない、不安に駆られる話だった。何しろ3歳の頃の記憶を、のちに思い出して語っているようだから。事実なのかどうかも判然としない。知らないはずのことまで語るその視線が不気味だ。 でもそんな中で、「あなた」を表す淡白でヒリヒリした言葉に夢中にさせられる。麻衣はたしかに魅力的な女なのかもしれない。サラッと相手の求めるものを演じ分けてみせながら、この人の目には何も映っていないのだと思うとゾクッとする。 同類である麻衣と陽奈が長く時を共にしているのが言葉の端々から感じられる。こんな事があった後も一緒にいて、ここぞという時に「とっておきの言葉を聞かせてあげた」という静かな復讐が何事もないように行われる。こんな形で返ってくるとは思っていなかったのではないか。またそれも想像が膨らんで怖い。 他二作品も文体や不穏な雰囲気が好みだった。「ちびっこ広場」は愛情ある母親を描いているのに、ラストでヒヤッとする。 一見なんでもない話のように読ませておいて、あとで振り返ってアレっと気づく、じわじわと忍び寄ってくるような一冊だったな。

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2022/04/27

 小説という表現方式は、たぶん、どこまで行っても「誰か」の眼で見た「世界」が、「誰か」によって書かれるほかには書きようがないと思います。その「誰か」が「私」であれば、自分の内面だらか見えちゃう心の奥底を告白したり、なんでも見えてしまう「神様」だったら、あの人のことも、この人のこと...

 小説という表現方式は、たぶん、どこまで行っても「誰か」の眼で見た「世界」が、「誰か」によって書かれるほかには書きようがないと思います。その「誰か」が「私」であれば、自分の内面だらか見えちゃう心の奥底を告白したり、なんでも見えてしまう「神様」だったら、あの人のことも、この人のことも全部説明出来ちゃったり、たとえば漱石は「ネコ」の眼で「人間」を見させることで「人間」を描いて、まあ、笑わせたわけで、読むときも、なんとなくそのルールを信頼して読んだりするわけです。  この作品は、その「誰か」の設定が工夫されているところがミソなのですが、驚いたことに、その「誰か」は作品中に実在する幼い少女であるにもかかわらず、見えるはずのない他者の経験まで「書き」つけることが出来てしまうという、ぼくのような老人から見れば、ただのルール破りの存在なのですが、なぜか「芥川賞」だったりするわけです。  老人にはルール破りとしか思えない方法によって生まれるのが、好意的にお読みになっている方がおっしゃっている「ホラー」な感じであり、「不気味さ」なわけですが、老人にはマニュキアの爪の皮でコンタクトレンズを穿るという結末に対する作家の思いこみこそがホラーで、この作品を評価した選考委員の評価基準が不気味でした(笑)。  いやはや、何をしてもムードが描ければいい時代がやってきているようですが、そこのところが実に不気味ですね。

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2021/12/30

ホラーである。それも痛い系の、それが気になって読むのが辛かった。愛情のない家族。誰も愛していない父、継母、死んだ母、そして3歳の私。母の死後、父は不倫相手の「あなた」を家政婦兼性のパートナーとして家に入れる。3歳の私の視点で語られるストーリー。近眼でコンタクトをする継母と暮らすよ...

ホラーである。それも痛い系の、それが気になって読むのが辛かった。愛情のない家族。誰も愛していない父、継母、死んだ母、そして3歳の私。母の死後、父は不倫相手の「あなた」を家政婦兼性のパートナーとして家に入れる。3歳の私の視点で語られるストーリー。近眼でコンタクトをする継母と暮らすようになって「わたし」に爪を噛む癖が…。相手を人として捉えず、抑えた感情を嫌悪感と異常快楽で埋め尽くす。芥川賞というよりもホラー大賞をあげたい。

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