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アフリカの創世神話 の商品レビュー

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2019/05/04
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アフリカ諸部族に伝わる創世神話を紹介し、その背景にある社会構造・環境・思考様式などを解説した書。宇宙や人間社会の成立を物語る神話を通して、アフリカ社会の世界観、ひいては人間と神話の関係を説く。 本書は、アフリカの諸部族が有する神話――特に世界や文明の起こりを説く創世神話を概観し、その中に現れる文化的傾向を説明する本である。本書で取り上げられるのは5つの部族の神話であり、いずれも天地の分離や神と人間の離別、祖人の誕生や部族社会の起源を語ったものである。それらは我々がよく知る経典宗教の物語や、ヨーロッパやアジアの体系化された神話とは異なる世界観を示してくれる。渡河の道を切り開くと同時にその道程を塞ぐディンカの祖人ロンガー、人が人として生きる道を編み出したルグバラの祖人たち、徹底した双極性を体現するドゴンの祖霊ノンモ、至高神マウ=リサに始まるフォンの万神殿の神々、ロジの神ニャンベと祖人カムヌの対立――。 そこにあるものは、アフリカの人々が自らを取り巻く自然や社会の中に何を見出したのか、人知を超えて不条理な世界にどう対峙したのかという姿である。面白く感じたのは、アフリカの諸神話において神(特に至高神)が不条理の体現、言葉通りの"人知を超えた"存在として語られていることである。罪と言うには余りにも些細な事で地上を去り、地上の人間生活には一切の関心を持たず、しかしその一方で世の不条理や人間の悲惨な運命の原因と目される《はるかなる神》。聖書の絶対善としての神や、ギリシャや日本の人格的な神々とは違う相貌を見せるアフリカの至高神は興味深く感ぜられた。 アフリカの神話を専門的に扱う数少ない書物であると共に、アフリカ神話に通底するエッセンスを分かりやすく解説した良書。

Posted byブクログ