尼僧とキューピッドの弓 の商品レビュー
ドイツにある尼僧修道院に、取材のため長期滞在している日本人の”わたし”の目を通して描かれる共同生活のようすと、”元尼僧院長の独白”の2部構成になっている。 フェアな人には皆、すこし心を許すものであり、外国人ということもそこに加味されるものである。 第二の人生をこの修道院に捧げる尼...
ドイツにある尼僧修道院に、取材のため長期滞在している日本人の”わたし”の目を通して描かれる共同生活のようすと、”元尼僧院長の独白”の2部構成になっている。 フェアな人には皆、すこし心を許すものであり、外国人ということもそこに加味されるものである。 第二の人生をこの修道院に捧げる尼僧たちは、離婚経験もあれば子供もいたりする。男性との関わりに疲弊した過去をもっていても、豊かな記憶や想いと一緒に生きている。 最後のほうで、わたし が修道院のことを執筆する(物語る)モードになっていく感覚が面白い。 なにか液体が土に滲んでいくようだった。 そして突然、平面的なものが立ち上がる。 元尼僧院長の独白は、自由意思を求めながら40歳になってしまう、このままではいけないと思ったところから修道院の生活に落ち着いたが、結局は元の夫に絡めとられてしまう。今までの生き方について、自分が選んできた道はないと思ってきたが、すべて自分が選んだことなんだということがわかった彼女は、(カラスになって)修道院を出ていこうとする。 多和田さん凄いです。
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☆2 容 おもしろいのだろうな、という感想。たしかに文章はうまいし描写も愉快だ、私は特に心打たれなかったけれど、おんなの自我とかなんとかに思いを馳せたい人などは読んでもいい。 ☆2 水無瀬 実験的であるところを評価。名まえとは記号であるということを強調するような、渾名にしては...
☆2 容 おもしろいのだろうな、という感想。たしかに文章はうまいし描写も愉快だ、私は特に心打たれなかったけれど、おんなの自我とかなんとかに思いを馳せたい人などは読んでもいい。 ☆2 水無瀬 実験的であるところを評価。名まえとは記号であるということを強調するような、渾名にしてはヘンテコな登場人物を表す仮称がいちばん面白いか。
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この尼僧修道院の歴史的建物や庭や池の場所としての魅力、尼僧たちの存在感や感情の厚み。そこにやってきた「遠方からの客」がゆっくり近づいていく時間。それらを心地よく感じていた最後の方の瞬間に、時間がぐりゃりとしてハッとした。そして第二部「翼のない矢」、第一部では多くの謎をのこしていた...
この尼僧修道院の歴史的建物や庭や池の場所としての魅力、尼僧たちの存在感や感情の厚み。そこにやってきた「遠方からの客」がゆっくり近づいていく時間。それらを心地よく感じていた最後の方の瞬間に、時間がぐりゃりとしてハッとした。そして第二部「翼のない矢」、第一部では多くの謎をのこしていた修道院長からの告白。とても肉感的。言葉にできないベルンハルトが自分のことのように哀れで醜く感じる。彼が悪魔に操られて矢を向けたのは流壺さんだったか。 幻惑的でありながら、常にフラットな態度で世界に触れる多和田葉子さんの小説が好きだ。
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この作品は修道院を舞台としており、個性的な尼僧たちが共同生活を営んでいる。主人公は取材にやってきた日本人作家である。しかし小説には一つ見落とせない空白がある。キューピッドの矢にハートを射られ駆け落ちしてしまったと噂される元尼僧院長である。 第一部は主人公が小説を書けるようになる小...
この作品は修道院を舞台としており、個性的な尼僧たちが共同生活を営んでいる。主人公は取材にやってきた日本人作家である。しかし小説には一つ見落とせない空白がある。キューピッドの矢にハートを射られ駆け落ちしてしまったと噂される元尼僧院長である。 第一部は主人公が小説を書けるようになる小説である。最後の方で主人公は、まだ自身が想像もしていない、後に書かれるであろう未来の作品(虚構)を先取りしているかのような(?)老女のおかげで、目の前の壁が幕に変わり舞台(虚構)が現れる体験をする。作品を書けるようになったということだ。 第二部は、第一部で不在の中心としてあった尼僧院長が、主人公が書いた第一部の英訳を読み、誤解を解くために自伝を執筆する話である。ただの噂話としてぽっかりと空いていた穴が一人の人間の強靭な意志によってしだいに肥大化し、やがて主人公によって書かれたテクストを飲み込むまでに豊かな物語となって行く様はまともな人間なら目が離せない。
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なんか読んでて疲れるので、半分くらいで断念。 背景描写を想像したり、話の筋をつかむのが(僕には)非常に困難。
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ドイツのとある修道院の尼僧たちの生活を描いた小説です。ここに登場する修道女たちは一般的なイメージと異なり、あまりに世俗的でした。プロテスタントの修道院ということが、理由のひとつなのかもしれません。カトリックだと、その暮らしぶりはもっと厳格なのでしょうネ。この小説は二部構成になって...
ドイツのとある修道院の尼僧たちの生活を描いた小説です。ここに登場する修道女たちは一般的なイメージと異なり、あまりに世俗的でした。プロテスタントの修道院ということが、理由のひとつなのかもしれません。カトリックだと、その暮らしぶりはもっと厳格なのでしょうネ。この小説は二部構成になっていますが、本来その構想はなかったようです。でも、この物語は二部があってこそ、登場人物ひとりひとりの個性が際立ってくるような気がしました。二部では駆け落ちして修道院を去った、元尼僧院長の過去が語られます。しかしながらそれは、タイトルから連想されるようなロマンチックなものではありません。ここにはひとりの女性の半生が、切々と綴られているのです。ひとは自分の居場所を求めながら生きているのかもしれません。でも、ほんとうに落ち着ける場所って、土の下なのかもしれませんネッ。
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ボラーニョの『2666』をこじんまりとさせたような構図の小説だと感じた。 面白さでは『2666』が圧倒的に勝っているけれども、こっちは短いので気軽に読めます。
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単行本が出たときにタイトルが気になっていたので、文庫化を機に購入。 講談社文芸文庫に収められている『飛魂』や『ゴットハルト鉄道』より取っつきやすい内容で、登場する尼僧たちも何処か可愛らしい造形になっている。 主人公の『わたし』が出会う尼僧につけた渾名は『飛魂』を思い出すユニークな...
単行本が出たときにタイトルが気になっていたので、文庫化を機に購入。 講談社文芸文庫に収められている『飛魂』や『ゴットハルト鉄道』より取っつきやすい内容で、登場する尼僧たちも何処か可愛らしい造形になっている。 主人公の『わたし』が出会う尼僧につけた渾名は『飛魂』を思い出すユニークな漢字の組み合わせだった。
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