日本経済の憂鬱 の商品レビュー
本書は、「正体不明のアベノミクス」という章から始まっています。著者の佐和隆光氏は、アベノミクスは経済学や経済思想において一貫性がなく、単に現実主義的な経済成長至上主義であるという点を批判しています。 経済学派の中で完全に少数派になったマルクス派を除けば、経済学は大きく新古典派とケ...
本書は、「正体不明のアベノミクス」という章から始まっています。著者の佐和隆光氏は、アベノミクスは経済学や経済思想において一貫性がなく、単に現実主義的な経済成長至上主義であるという点を批判しています。 経済学派の中で完全に少数派になったマルクス派を除けば、経済学は大きく新古典派とケインズ派に分かれますが、前者は政治思想としての保守主義と、後者はリベラリズムとセットになっています。小泉元首相は、一方では靖国参拝という伝統主義にこだわりながら、経済的に自由至上主義を貫いたという点で、正統派保守主義者であった(と絶賛している)のに対し、その後継者であったはずの安倍首相の思想・信条は余りにも分かりにくく、その政策には一貫性がないと批判しています。 安倍首相が経済成長に力点を置いた政策をとっていること自体には肯定的ですが(民主党に比べれば遥かにましという意味で)、壮大な「社会実験」であるアベノミクの結果が吉と出るか凶と出るかは分からないと言っています。そして、その最大の理由は、日銀の首脳陣に居並ぶリフレ派エコノミストの、「異次元金融緩和が実体経済に及ぼす効果あり」とする論拠が、「インフレ期待(予測)」という計測不可能な心理的要因だからだと言っています。 個人的には安部首相が憲法改正議論に力点を置かず、経済政策に力を入れて規制改革・規制緩和さえキチンとやってもらえれば、アベノミクが新古典派とケインズ派のチャンポンでも構わないと思っています。要は、日本経済を立て直すためにできることは何でもやりましょうということですから。
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戦後政治・経済史について分かりやすく解説いただいていると感じた。 著者の近いところでの具体例をもって説明されているところが多く、それだけに読者も気持ち良く感じるほどの断言をしていただいており、共感と反論を感じながら、立体的に読み進めることができた。
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