日本思想史講座(4) の商品レビュー
烏兎の庭 第七部 2.25.24 http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto07/doc/koza.html
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第四巻は、近代の思想の諸相があつかわれています。 巻頭論文である刈部直の「総論 近代の思想」では、かつての近代日本思想史の通説に対する見なおしが現在おこなわれていることに触れて、たとえば「徳川時代の思想と明治初期の「文明」論との間には、むしろ連続する側面があるのではないか」「「...
第四巻は、近代の思想の諸相があつかわれています。 巻頭論文である刈部直の「総論 近代の思想」では、かつての近代日本思想史の通説に対する見なおしが現在おこなわれていることに触れて、たとえば「徳川時代の思想と明治初期の「文明」論との間には、むしろ連続する側面があるのではないか」「「近代」の政治思想や「近代」的憲法を受容したと言っても、欧米の多岐にわたる思想・制度のうち、どれをとりいれたのかを判別するのが重要ではないか」「社会主義や大正デモクラシーの主張は、植民地帝国であった当時の日本の現実に、実は寄り添うものでもあったのではないか」といった問いかけを示しています。 それにつづく各論考でも、近代日本思想史研究のアクチュアルな問題意識を反映したものが多く、たとえば大谷栄一の「明治国家と宗教」では、浄土真宗の公認教問題へのとりくみを中心に、既成宗教である仏教と近代国家として成立した日本の統治とのつながりを掘り下げて検討しています。また昆野伸幸の「日本主義と皇国史観」では、従来は近代日本を誤った方向にみちびいたとして十把一絡げに否定されていた日本主義のなかに孕まれている差異を明らかにし、とりわけ『国体の本義』において示されている皇統の自然的なつながりを強調する発想と、平泉澄に代表される主体的な意志にもとづく忠誠を重視する発想のちがいが分析されています。 全体を通じて、近代日本思想史研究のあたらしい動向を伝える内容であるように思います。
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