助けてと言えない の商品レビュー
現世相における30代の原風景
単行本で読みました。 本書の発端になったのは、先年北九州市で発生した、39歳男性の孤独死(餓死)事件。NHK福岡と北九州取材班が男性の足取りを辿るうち、現代社会における30代の世代の特異さに行き当たった。 NHK「クローズアップ現代」で年間最高視聴率を獲得したことからも注目度...
単行本で読みました。 本書の発端になったのは、先年北九州市で発生した、39歳男性の孤独死(餓死)事件。NHK福岡と北九州取材班が男性の足取りを辿るうち、現代社会における30代の世代の特異さに行き当たった。 NHK「クローズアップ現代」で年間最高視聴率を獲得したことからも注目度が知れる。歴代十指に入る視聴率だという。 北九州を拠点に活動するNPOの代表奥田知志氏も交え、現代の30代の世代論と生きる意味を追い求めたドキュメント。 人によってだが、涙を禁じ得ないというよりも、読後にも大いなる疑問が残る警世の本。 平野啓一郎氏が寄稿されている。同じ30代、当事者の意見として貴重です。
聖熟女☆ミ
省みない世代、そして勝手気ままな世代が作ってきた親方日の丸 (「寄らば大樹」の大樹) が当てにできないことが鮮明になったが故に、続く世代は自分で何とかしなければならず、自助努力・自己責任を課さなければならなくなった、という見方もあるのではないか。その上、生活保護というものが自身の...
省みない世代、そして勝手気ままな世代が作ってきた親方日の丸 (「寄らば大樹」の大樹) が当てにできないことが鮮明になったが故に、続く世代は自分で何とかしなければならず、自助努力・自己責任を課さなければならなくなった、という見方もあるのではないか。その上、生活保護というものが自身の不甲斐無さを否応もなく明確化してしまうという事実は、最後のプライドまでも引き剥がしてしまう。生活保護を受け、援助を乞おうと思うかと問われると、私も否と答えるだろう。 取材で明らかになった現実以上に、筆者らが心情を語りすぎているのが残念。
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自己責任論社会が生んだ心の歪みを題材にしたドキュメンタリー。 初版から10年経った2023年でも、この「自己責任論」や助けを求められない状況は解決できていない。 こういう社会問題に真摯に向き合った取材に基づいた良書が増えるといいな。
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就職氷河期世代の孤独な実態。「たすけて」と便箋に綴り傍に置いたまま、仏壇の前の布団の上で孤独死(餓死)した両親のいない39歳の男性。自己責任として自分を責め、「助けて」と発することを拒み続ける三十代。生活保護を申請しないで、ホームレス化する三十代。「救いを求めてもいいのではないか...
就職氷河期世代の孤独な実態。「たすけて」と便箋に綴り傍に置いたまま、仏壇の前の布団の上で孤独死(餓死)した両親のいない39歳の男性。自己責任として自分を責め、「助けて」と発することを拒み続ける三十代。生活保護を申請しないで、ホームレス化する三十代。「救いを求めてもいいのではないか」「社会は助けての声を受け止める環境にあるのか」を発信した書。「助けてと言えない」、2013.6発行。
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気になったので読み始めてみたら,ページを捲る手が止まらなくなって一気に読んでしまった。 感想を書き始めてみたら脈絡ない感じになってしまったので,以下箇条書き。 ・この番組で取り上げられているのは自分より一回り上の30代の人たちの話だけれども,でも,他人事ではないなぁと思う。実際...
気になったので読み始めてみたら,ページを捲る手が止まらなくなって一気に読んでしまった。 感想を書き始めてみたら脈絡ない感じになってしまったので,以下箇条書き。 ・この番組で取り上げられているのは自分より一回り上の30代の人たちの話だけれども,でも,他人事ではないなぁと思う。実際,団塊の世代の大量退職が少し落ち着いてからの就職だったので,同時期に就活していて正規の職は見つからなかったという人たちも周りにいた。「うつ」が認知されていたり,不景気で正規雇用での就職率が低いから対策を,となっていたり,きっとここに出てくる30代の人たちよりもよっぽど恵まれた環境で仕事を始められているんだろうけれども,それでも自分たちだっていつどんな理由でドロップアウトしてしまうかわからないし,不安は尽きない。それに,上の世代(たぶんちょうどこの30代のあたり)を見ているので,がんばってもどうにもならないし,という諦めがいつもある。自分たちの世代は,そういう世代なのかなーというのをこれを読んでいて思った。 ・伴走型支援って,たしかに今の日本に一番マッチしてる支援だと思う。昔みたいに親と子どもがずっと同じところに住んでるわけでもなし,若い層だけでなく,退職後の老世帯にも必要とされているんでないかなぁ。というかだからたぶん3.11後の支援にもつながったんだと思うけれども。 ・平野氏の話の中で,「世の中で必要とされていることだからその仕事がある」というのと「分人」の考え方が画期的だなーと思った。前者は当たり前と言えば当たり前なんだけれども,就職活動するときってやっぱり自分のやりたいこと→自分のやりたい仕事→自分が就職したい業界,という順で考えてしまうからその当たり前は抜け落ちていて,就職直後のギャップが…というのはそういうのも原因だったりするんじゃないかなぁと思う。「分人」はあとで新書も読んでみようと思う。どうでもいい話だけれども,PCではこれは一発変換できず,iPhone(iOS7)では一発変換されたのがちょっと面白かった。
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読中に思い出していたのは、大学時代の友人のこと。 自分が新卒で入社した会社は割と名の知れたブラック企業で、何年かは必死でぶら下がっていたものの耐えきれなくなって、退職を考え始めた時期があった。 でも、じゃあ辞めてどうするの? 地元は最寄りの電車駅まで自家用車で30分くらいかかる...
読中に思い出していたのは、大学時代の友人のこと。 自分が新卒で入社した会社は割と名の知れたブラック企業で、何年かは必死でぶら下がっていたものの耐えきれなくなって、退職を考え始めた時期があった。 でも、じゃあ辞めてどうするの? 地元は最寄りの電車駅まで自家用車で30分くらいかかるようなド田舎で、帰ったところでやりたい仕事もない。再就活も難しい。というよりも、実家に帰ったら家族に甘えてしまって、ずぶずぶと沼にはまってしまう気がするので帰ろうとは思えなかった。 その頃友人は独り暮らしをしていて、自分の住む2DKのアパートの1部屋が物置状態になっているから、そこにしばらく住めばいいと言ってくれた。そのお陰で会社を辞める踏ん切りがついて、フリーターをしつつ再就活を進めて、間もなく正社員として職に就くことができた。短い間だったけれど、大学時代から仲が良く、人間的にも尊敬できる友人とのルームシェア生活は楽しいものであったし、社会人生活を経て改めて自分を見つめ直すのに充分な時間を与えてもらえたと本当に感謝している。 その後、その友人が体を壊して入院してしまうことがあった。彼自身、実家とは疎遠になっていて、先立つものを用意するのに頼る当てがないという。困ったときはお互い様だ、俺自身お前に助けられたんだから、と工面してやって、友人は無事に手術を受けることができた。ヘルニアの。 その友人が行方を晦まして久しい。昔から不安定なところがあったのだけれど、体を壊してから何年か後にメンタルの不調で仕事を辞めることになり、横浜の実家に連れ戻されたというところまでは聞いている。それ以来、何度か理由を付けてメールを送ってみたりもしたけれどいつも返事はなくて、最近ではそれすらしなくなってしまった。けれど大学時代の共通の友人に会うたびに、なんとなく「彼はどうしているだろうか」という話をいつも持ち出してしまう。やっぱり少しでも、彼の消息に関わる情報を知りたいと願っているのだ。 どうか、無事であって欲しい。元気で、とは言わない。せめて生きていてほしい。 それから、「助けて」と言える相手が、どうか、彼のそばにいますように。 もしそうでないのならば、ぼくに何かできないだろうか。彼の助けになれないだろうか。どうか「助けて」と言って欲しい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
かなり笑えない。本当に明日は我が身。 非正規雇用が増えて、正社員すら足下がぐらついている世の中で、働き盛りの人達すら、ホームレスになる可能性は十分ににある。 ホームレスとして取材された人達は、少なくとも怠けてるとか、能力が圧倒的に低いなんて事は、絶対ないです。 でも全員が強い責任感を通り越して、殆ど脅迫概念に近い考えを抱いているのが胸が痛くなります。 「人様に迷惑をかけてはいけない」「自分が悪い」「何とかなる」。 折角自分で生活保護を申請しようとしたり、NPOの人が気にかけても、助けを求める事はどうしても出来ないんです。「1人で何とかしないといけない」という考えが強過ぎて。助けを言うのも、彼らにとっては勇気が居るんです。炊き出しのお誘いですら、彼らには勇気が居る事なんです。 勿論彼らは何かしら働いていた時期がありました。 でも紹介された1人のお話には、社員同士全員余裕無い上に、仲間じゃなくって敵という考えを持っている。その人だけじゃなくって、誰しもがそういう状態。みんなびくつきながら働いている。 会社に努めても誰にも心開けない、社員は道具みたいな扱い。でもこういう会社は多い。 皆余裕がない。助け合いが出来ない。必死。 働いても働かなくっても苦しみしかないこんな世の中に、個人ではとても太刀打ち出来ません。 世の中の多くの人が身動きとれない。読んでいてそういう印象でした。 生活保護を受けるにしても、受けられないのは「自分で何とかしなくては」という事もある様子ですが、生活保護を受けている人そのものに対する印象の悪さも後押ししているんじゃないでしょうか。 TVに紹介されている生活保護者はどうも悪者として報道されがちなイメージを私は持っています。 本の取材の中にも「ホームレスと思われたくない」と思ってらっしゃる人は居ました。 彼らは人として強いプライドを持っている・・と言うよりは、世間のホームレスや生活保護受給者の印象の悪さが、『仕事の無い可哀想な人』というよりも『怠け者の悪い奴ら』という考えを推しているんじゃないでしょうか。 「自分の努力不足」と思っている人はいました。 私が非常に印象強く思ったのは、ある1人のホームレスの人が少し自分の事を語ってくれたときの言葉です。 「(30代に対する身近な理想を)誰しも夢見る幸せな過程だとか、色々あったと思うんですが、そこで失敗している。自分自身の責任」 彼らは誰にも責任転嫁しないんです。どうしても「自分が悪い」。 どうすれば、ホームレスの人達もギリギリの状態で働いている人達も全員が助けてと言える世の中になるんでしょうか。読んだ事はそれで頭がいっぱいでした。
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明日は我が身…か。 色々難しいことは分かるけど、助けてと言われたら何も考えずに手を差し伸べられる社会の方がいいなと思った。
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【派遣切り、ホームレス、餓死。今、三十代に何が】急増する三十代ホームレス、その多くが社会に助けを求めないのはなぜか? 就職氷河期世代の孤独を描き、反響を呼んだ番組を文庫化。
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30台の自殺者が4500人以上いる。毎年。 なんという国だ。この国を支えなくてはならないはずなのに、孤独死とか生活保護とかどうして?? 五体満足なら働かなきゃ。助けてと言えないどころか、助けてあげられる立場なんじゃないの?
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