歌舞伎は恋 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
歌舞伎は恋、いったん恋におちれば、なかなか熱はさめてはくれない。 勘三郎をなくし、恋しさは募るばかりで、熱さめやらず。 六代目菊五郎の敦盛は、何度みかえしても、勘三郎では?と思うほど。 十七代目勘三郎が、山川氏のインタビューを終えて劇場内を移動する途中、三階席に立ち寄って、舞台の歌右衛門に「成駒屋!」と大向う、のくだり。舞台の袖から、照明席から、舞台を観ていた勘三郎を思い出す。 語られる祖父の父の思い出話で彼につながる芸を知り、ずっとこの熱をかかえ、息子の孫の舞台を見続けていく。
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「歌舞伎は恋だ。恋は理屈ではない。」 という最初の一文が、たまらなくて、購入を決めました。 これもまた「演劇界」その他のコラム集。私自身が知ってる演目や知ってる役者が増えてきたせいか、この手の読み物が今面白くてしょうがない。山川静夫さんは大学生のころ、昭和28年が歌舞伎観賞デビ...
「歌舞伎は恋だ。恋は理屈ではない。」 という最初の一文が、たまらなくて、購入を決めました。 これもまた「演劇界」その他のコラム集。私自身が知ってる演目や知ってる役者が増えてきたせいか、この手の読み物が今面白くてしょうがない。山川静夫さんは大学生のころ、昭和28年が歌舞伎観賞デビューだそう。私がいま知ってるような役者さんの一代前の話が多い。もうちょっと前なら、「昔の人は知らないや」って興味が失せてたんじゃないかと思うが、「あの人のお父さんか」とか、「よく解説に出てくる六代目ってこの人のことか」とか、たまに系図を調べたりしながら楽しく読んだ。山川さんも書いている通り、歌舞伎役者というのは家の芸というものを代々継いできていて、息子に亡くなった父の面影を見たり、見ることの叶わなかった昔の名優を当代の役者から想像したり、そういう「脈々」感を味わうのも、歌舞伎の楽しみなのかなあ。 中野翠エッセイは「私はこれが好き!」という個性の強い尖った感じがしたが、山川静夫エッセイは、「みんな違ってみんないい」と穏やかに微笑みつつも「俺の青春はすべてお前に捧げたぜ」というパッションも併せ持った、渋・熱い一冊でした。
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