つむじ風、ここにあります の商品レビュー
新進気鋭の歌人・木下龍也さんの短歌集。 今まで読んだことが無かったジャンルなので、世界が広がるのでは?と思い購入、読了。 ふむふむふむ…短歌ってなかなかに面白い(´∀`) 引き算の美学というか…短いからこその味わい、言葉の美しさが際立つ等々、普通の小説には無い良さがあるのかなと...
新進気鋭の歌人・木下龍也さんの短歌集。 今まで読んだことが無かったジャンルなので、世界が広がるのでは?と思い購入、読了。 ふむふむふむ…短歌ってなかなかに面白い(´∀`) 引き算の美学というか…短いからこその味わい、言葉の美しさが際立つ等々、普通の小説には無い良さがあるのかなと。 何となく短歌って「古臭い」というイメージがあったんですが全然そんなことは無く、現代の日常を切り取ったような内容が多く、違和感無く入り込むことができました。 文章の切り方とリズムが独創的で、綺麗だなぁ…( ̄∇ ̄) とずっと思いながら読んでたんですけど、そもそも短歌ってもの自体を読んだことが無いので、他の作家さんと比べる知識が無いんだなと(笑) そういった意味でも、別の作家さんの作品も読んでみると、知見も深くなって面白くなってくるんじゃないかなぁ…と、もう少し深掘りしてみようかなと思っています。 あと、本線とは全然関係ないんですが、出版社が書肆侃侃房さんになっていて、確か今村夏子さんの「あひる」も同じだったような… すごくセンスある作家さんを発掘をされる出版者さんなんじゃないか…とか思ったり… 別作品もまた見つけたら読んでみようかな…(*´∀`*) <印象に残った言葉> ・つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる(P9) ・盗聴の特集記事を思い出し「知っているぞ」と部屋でつぶやく(P15) ・駅までの距離を歩数で数えたらやっぱり五百三歩目で犬(P19) ・レジ袋いりませんってつぶやいて今日の役目を終えた声帯(P28) ・細々と暮らしたいからばあさんや大きな桃は捨ててきなさい(P32) ・レシートも袋もカバーもいりませんおつりもいいです愛をください(P41) ・生前は無名であった鶏がからあげクンとして蘇る(P57) ・ああこれも失敗作だロボットのくせに小鳥を愛しやがって(P58) ・神様は君を選んで殺さない君を選んで生かしもしない(P61) ・右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る(P68) ・空欄に入る言葉を考えよ やっぱり僕が考えるのか(P75) ・ころんだという事実だけ広まって誰にも助けられないだるま(P78) ・ハイタッチしてもいいのかわからずに君のてのひら指でつついた(P95) ・ショッカーの時給を知ったライダーが力を抜いて繰り出すキック(P104) ・ラコステの鰐に乳首を嚙まれたと購入者から苦情が届く(P104) ・全米でナンバーワンの映画だけ観ているような女が好きだ(P107) <内容(「BOOK」データベースより)> 痛みと風穴が愛おしい 心に向かって254回も引き金をひかれ、逃げられました。 道尾秀介 圧倒的な言語感覚 類まれな想像力と繊細な洞察力で刻む、斬新な世界。 東 直子
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第一印象は”とてもわかり易い”。 穂村さんや笹井さんの歌には、う〜ん、これはむずかしい、何を表現しているのだろうというものにしばしば出会ったのだが、木下さんのこの歌集ではほとんどそれがなかった。 日常で良くあるような一コマにユーモアを加えた解釈、描写みたいのが多く、どれもすっと受け入れられて微笑みを誘われた。 ときに哀愁や切なさ漂うものもあるのだけれど、ぐちゃぐちゃの感情というわけではなく共感しやすい想いを包んでくれているのでとても読み易い。 ”一連”ていうのかな、歌のまとまりごとのテーマもすごくはっきりしていて、この一首に感じる強い印象とは別に、この一連にすることで深まる味わいというのがあるのがとても良く理解できた。 相変わらず付箋が足りない。 後半本当に切れてしまった。 普段付箋を使って読まないのだが、今度ちゃんとストックしておこう。 ○天気図の西の方だけ晴れているおそらく君がいるのだろうな ○盗聴の特集記事を思い出し「知っているぞ」と部屋でつぶやく ○電車から僕僕僕が降りるのを僕僕僕が待っている朝 ○雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる ○下の下でも上の上でもない僕が受け賜わりし青鬼の役 ○ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか ○「千円になります」と言い千円になってしまったレジ係員 ○ロボットノナミダハアブラ ロボットの涙は油 だったはずだろ ○ゴールさえ与えてやれば人間は足を止めるよ人間だから ○大丈夫、大丈夫って言いながら吐くようにして死ぬかもなおれ ○右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る ○空欄に入る言葉を考えよ やっぱり僕が考えるのか ○改札のむこうに母が立っている車で待っていればいいのに ○全国の佐藤を線で結んだら日本の地図になりませんかね ○ハイッタチしてもいいのかわからずに君のてのひら指でつついた ○「えっ?」ていうあなたの癖がかわいくて小さな声で話しかけてる ○ショッカーの時給を知ったライダーが力を抜いて繰り出すキック ○愛してる。手をつなぎたい。キスしたい。抱きたい。(ごめん、ひとつだけ嘘)
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私は詩や俳句や短歌というものが苦手だった。 ストンと心に入ってこないのだ。 それは食べず嫌いなものなのかな。 木下さんの俳句はクスッと笑えるものもあれば、 ちょっと怖いようなのもあり、 でも優しいのもありで、もっと読んでみたいと思った。 佐藤の短歌なんか斬新で笑える。
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直筆サイン入りを手に入れることができた 『針に糸通せぬ父もメトロでは目を閉じたまま東京を縫う』 私がもう針糸通せないことをお見通しのようです! 東直子さんが解説、監修 表紙は犬らしき生き物と飛んでいるタコの墨絵がシュール 小テーマがミニシアターの題名のよう「つむじ風、ここにあります」「インドアマン」「ロボットの涙は油」「天にいるだれかさん」「対佐藤」「ぼくがこわせるもの」など もちろん付箋だらけになったのは言うまでもない 裏側に張りついているヨーグルト舐めるときはいつもひとりだ (そうそう、ヨーグルトだけでなくアイスや溶けかけたチョコとかやってしまうよ 今まで歌にしなかったけど、記憶の片隅の場面が浮かび上がる様子) 仰向けで本を支える両腕で僕を支えるための寝返り (夢中になって読書をしている状態からふと我に返るような姿勢へぐっと引き寄せられ、こちらの身体まで意識づけられるような感覚) 空を買うついでに海も買いました水平線は手に入らない たくさんの孤独が海を眺めてた等間隔に並ぶ空き缶 (海を詠う歌の中でも好きな歌 どんな感情も包み込んでくれるような海にまた行きたくなってしまう 缶コーラもしくはビールでも片手に) レシートも袋もカバーもいりませんおつりもいいです愛をください 「お弁当あたためますか?」「ありがとう、ついでにこれも」「なんですか?」「星」 (買い物場面でこんなに孤独感を表現できるなんて!音読してほしい) 電気つける派?つけない派?もしかしてあなた自身が発光する派? (穂村さん大絶賛するであろう、このすばらしい世界観!)
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分かりやすくて、しかも、奥深い短歌が多いから、普段短歌を読まない奴にもおすすめの歌集だ。 俺や劉備兄貴達と、中国大陸を駆け回るようなわくわく感を感じることが出来るに違いねえ。
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なんだろね。 悲しさがすっと通りすがったり、 ふふっと笑う瞬間があったりと、 不思議な一冊だった。 言葉にできないものが紙面から溢れ出ていて、 それがなんとも心地よかった。 あー自分はこういう感覚を忘れていたのだなと気付かされたような気がする。 多分、明日もふと読みたくなる...
なんだろね。 悲しさがすっと通りすがったり、 ふふっと笑う瞬間があったりと、 不思議な一冊だった。 言葉にできないものが紙面から溢れ出ていて、 それがなんとも心地よかった。 あー自分はこういう感覚を忘れていたのだなと気付かされたような気がする。 多分、明日もふと読みたくなるんだろうな。
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レビューを見ると他の歌人よりレビュー数の桁がまず違い、好感を示すレビューが多かったので読んでみましたが(短歌界の新鋭と言われているらしいですね)私はいいと思う歌とあまりピンとこない歌の両極端に分かれました。 異性の歌人だからでしょうか。 著者略歴 1988年山口県生まれ。山口県...
レビューを見ると他の歌人よりレビュー数の桁がまず違い、好感を示すレビューが多かったので読んでみましたが(短歌界の新鋭と言われているらしいですね)私はいいと思う歌とあまりピンとこない歌の両極端に分かれました。 異性の歌人だからでしょうか。 著者略歴 1988年山口県生まれ。山口県在住。 2011年より作歌及び投稿を始める。 2012年第41回全国短歌大会大会賞受賞 ○空を買うついでに海も買いました水平線は手に入らない ○消えてゆく歌もみんなが口ずさむ歌もひとりが歌いはじめた ○手がかりはくたびれ具合だけだったビニール傘のひとつに触れる ○活字では登場しないぼくたちはどんなにあがいてもエキストラ ○小説のように場面は変わらないだからぼくらは扉をめくる ○弁当のワゴンは五回通過してラストシーンのような夕焼け ○「かなしい」と君の口から「しい」の風それがいちばんうつくしい風 ○それらしく咲いてくれたらああこれが最後なんだと思えたのにな
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同世代の歌人の言語感覚、そのセンスや空気感やシニカルさにやられてしまい、何度か口に出したり見返したりした。
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木下龍也(1988年~)氏は、山口県周南市生まれの歌人。2011年に本格的に作歌を始め、2012年に現代歌人協会主催の全国短歌大会で大会賞を受賞し、歌人としてデビュー。2018年に出版した、岡野大嗣との共著『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』は、短歌の書籍として...
木下龍也(1988年~)氏は、山口県周南市生まれの歌人。2011年に本格的に作歌を始め、2012年に現代歌人協会主催の全国短歌大会で大会賞を受賞し、歌人としてデビュー。2018年に出版した、岡野大嗣との共著『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』は、短歌の書籍として近年では異例といえる、発行部数1万部を超えた。 本書は、2013年に発表された第一歌集である。また、書肆侃侃房が、若い歌人を紹介するために作った「新鋭短歌」シリーズの第1巻(現時点で計51巻)でもある。 私は、短歌に関しては、30年以上前に俵万智(1962年~)の『サラダ記念日』を読んだことがあるだけで(当時の『サラダ』は社会現象となっていた)、最近友人に刺激を受けて興味を持ち始めたのだが、穂村弘(1962年~)、東直子(1963年~)らの入門書や歌集とともに、木下氏の『天才による凡人のための短歌教室』と本書を手に取った。 木下氏は『天才による~』の中で、「一首の完成度について言えば現役の歌人の中でトップクラスだと思う」が「タネも仕掛けもある僕の短歌は僕の胸をどうしても撃ち抜くことができない」と、逆説的なことを書いているのだが、そのタネと仕掛けを駆使した歌は、強い印象を残すものである。私は素人ながら、大まかに言えば、短歌で最も重要なことはテーマを見つける感性で、次に言葉の使い方だと思うのだが、木下氏の選び取るテーマは、普通の人では目が留まらない、しかし、歌にされてみれば、なるほどと思う、実に繊細なもので、それを表現する言葉は、無理無駄のないとても滑らかなものだ。20代前半で作られた歌集と考えると、その驚きは増す。 また、木下氏は『天才による~』で、穂村弘(と吉川宏志)を「徹底的に真似をしてインストール」した、とも書いているのだが、その作風は穂村弘とはかなり異なるように感じられた。 いくつか印象に残った歌を挙げてみると。 「ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか」 「青空にソフトクリームぶちまけてなんて平和な夏なんだろう」 「スポーツの女神の汗を丁寧に蒸留すればポカリスエット」 「かなしみはすべて僕らが引き受ける桜の花は上に散らない」 俵万智、穂村弘、東直子らの次世代の代表的歌人が、繊細な感性で今を詠う歌集である。 (2021年5月了)
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若手の短歌手。椎茸と生魚と自己紹介が苦手っていう著者紹介が良い。自己紹介が苦手な人に共感できる。そういう短歌。 暗い。 根が暗いのがよーく伝わってくる短歌だった。現代短歌ってそういう感じなんだろう。悲哀がないと刺激がない。だから刺激的で感じれる、感じちゃう短歌なんだろう。(ら抜き言葉を使いたい。) しょせん根暗の叫びはどうせ蚊の鳴くような音量なのだろう。それを短歌の31文字という制限に詰め込むことで、増幅して、リズミカルにして、飛んできた。 そんなかんじ。 一生懸命ぼくはここにいるよって叫んでる、ポイ捨てされた飲みかけのペットボトルの歌った短歌集でした。そんなゴミの目線がとらえた、つむじ風がビニール袋を巻き上げた瞬間を活字化した。ぼくもつむじかぜのようにそんざいしょうめいしたいよって。
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