1,800円以上の注文で送料無料

「9歳の壁」を越えるために の商品レビュー

0

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/02/07

2024.1.20市立図書館 著者自身失聴者で、生徒としてそして教師・研究者として聾(聴覚障害)教育の現場にかかわってきた体験から、主に聴覚障害児に見られる「九歳の壁」の実態とそれを乗り越えるための条件分析をまとめたもの。 聞こえる子どもなら日常で耳に入ってくる雑多な音から雑多な...

2024.1.20市立図書館 著者自身失聴者で、生徒としてそして教師・研究者として聾(聴覚障害)教育の現場にかかわってきた体験から、主に聴覚障害児に見られる「九歳の壁」の実態とそれを乗り越えるための条件分析をまとめたもの。 聞こえる子どもなら日常で耳に入ってくる雑多な音から雑多な情報を受け取りながら言葉や知識を増やしていけるが、それが望めない聴覚障害児が聞こえる子どもと遜色なく対等に渡り合える日本語の力をつけるために(それはつまり手話と日本語の完全なバイリンガルになるということ)、聾教育の現場ではさまざまな工夫が行われている。しかし、翻訳・通訳ややさしい日本語のようなリライトなどを通した日本語教育では課題も多いことがわかる。 生活言語と学習言語の関係や習得については、聴覚障害に限らず、別の障害がある場合や外国ルーツの子ども、さらにはそういったハンデがない一般の子どもにもある程度は共通した問題だと思うので、勉強になる。聾教育ならではの課題や問題意識にはっとさせられるところも少なからずあった。 聴覚障害児教育では日本手話が母語で日本語は第二言語相当になるケースが多いので、(潜在的には今までも少なからずありこれからますます増えるであろう)日本語を母語としない子どもの言語教育の問題に向き合うたすけになると思う。 最終的には、学校や園での対応以前に、家庭での言語環境(特に保護者の聴覚障害児への関わり方)がその後の育ちに大きな影響を及ぼしているという結論になっており、それは前に読んだダナ・サスキンド「3000万語の格差――赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話」(明石書店。この研究も、人工内耳手術を受けて聞こえるようになった子どもの言語獲得が出発点)と同じことを言っているのだと思った。 視覚障害児や聴覚障害児と絵本の受容、障害の有無に関係なく目や耳だけでないさまざまな感覚から情報を得られるような訓練としてなにが考えられるのか、もうちょっといろいろ学んでみたい。

Posted byブクログ