アイルランドモノ語り の商品レビュー
アイルランドで見つけた小さな雑貨たちが秘めている物語に耳を澄ますと、人と土地の歴史が見えてくる。アイルランド文学者であり翻訳者でもある栩木伸明のモノをめぐるエッセイ。 栩木さんのエッセイは、先入観があるせいかもしれないけれど、どうしてもやっぱりキアラン・カーソンと共通する声の...
アイルランドで見つけた小さな雑貨たちが秘めている物語に耳を澄ますと、人と土地の歴史が見えてくる。アイルランド文学者であり翻訳者でもある栩木伸明のモノをめぐるエッセイ。 栩木さんのエッセイは、先入観があるせいかもしれないけれど、どうしてもやっぱりキアラン・カーソンと共通する声の持ち主だなぁと思いながら文章を読んでしまう。翻訳は他者をどんどん取り込んで自分の言葉に作り変えていくことでもあると思うけど、栩木さんとカーソンは元々ことばの使い手としてとても近いところにいたのじゃないかと思わせるものがある。 話の紡ぎ方もそう。アイルランドで出会ったモノから語り起こし、その歴史と土地と人とをゆるく繋げていく。本のなかを探索する安楽椅子探偵のように歴史ミステリー的なフックでワクワクさせてくれるけれど、オチや謎の解明に拘泥しないで、エピソードとエピソードに結び目を作っていくような繋げ方がのびやかで優しく、やっぱりカーソンみたいだなと思うのだ。一緒に散歩しながら、連想の赴くままに語られるお話を聞いているような気分にさせてくれる。 孤島の暮らしと伝説を描く画家たちやダブリンの詩人たちの話も面白いのだが、カーソン読者としてはベルファストという街の複雑さが気になる。ここをカトリックに染めようとした『シャムロック・ティー』は、摩訶不思議でゆかいなジュヴナイルであると同時に宗教テロ小説でもあって、そう考えると古川日出男が大好きだった私がカーソンの世界に惹かれるのはフェティッシュな好み以上のものがあるんだろうなぁ。
Posted by
読んでいると、読むことが心地良いと感じさせてくれる。まるでマンツーマンで栩木伸明先生の講義を受けている様だ。適時に休憩を入れるみたいに詩を訳したり、おはなしを入れたり。アイルランドの骨董品を現地で買い求め、文献に当たって徹底的に調べるところは流石。
Posted by
アラン島の翻訳がとても素敵だった栩木さんの、アイルランド愛が詰まったエッセイ。 アイルランドは20年以上前にちらっと訪れた。 ゴールウェイ、ダブリン、リムリック、アラン島だけ足早に訪れたけど、印象深い土地だった。 この本は、栩木さんがダブリンに住んでいた中で、アラン島や他のあら...
アラン島の翻訳がとても素敵だった栩木さんの、アイルランド愛が詰まったエッセイ。 アイルランドは20年以上前にちらっと訪れた。 ゴールウェイ、ダブリン、リムリック、アラン島だけ足早に訪れたけど、印象深い土地だった。 この本は、栩木さんがダブリンに住んでいた中で、アラン島や他のあらゆる土地に足を伸ばし、歴史や文化にも謙虚なまま、誠実に当たっていく。 この上品さとユーモアと、相手を理解したいという優しさと、連想の結ぶ見事な文章。 読んでいて気持ちがいい本のお手本のようだった。 ここに出てくる、いろんな映画を見たくなった。 アイルランドの文化にも映画にも詳しくない私だけど、本文のなかに突然出てくるアーサーネタやジブリなど、私の好きなものがあって嬉しかったです。 アイルランドの苦難の歴史と不屈のエネルギー、民衆の言葉や音楽を信じる姿勢、自然を愛する心が素晴らしかった。 いつか私もユリシーズを読める、、かなあ、、? 今年、マンガ「片喰と黄金」を楽しく読んでいたのだけど、そこからアメリカの1849年ゴールドラッシュ→アイルランドからの移民→その直前にあったアイルランドのジャガイモ飢饉、へ興味が移り、この本でもその話が出てきたので、あーーこれだわ、とわくわく読んだ。 作者の栩木さんが作中でアイルランドの友人たちから、ノビ、と呼ばれているのにホッコリした。 当の私は、栩木さんを今までずっとカジキさんだと思っていた。大変失礼しました。 栩木さんの他の本も読んでみたいです。
Posted by
図書館の返却棚に置かれていたのをたまたま手に取り、面白そうだったので借りてきた。 こういう出会いはやはり図書館ならではだなぁ、と改めて実感。 前からアイルランド映画が好きで、前世は住んでいたのか?と思うくらい、なぜか懐かしさを感じる。 筆者は何度Dunnes Stores こ...
図書館の返却棚に置かれていたのをたまたま手に取り、面白そうだったので借りてきた。 こういう出会いはやはり図書館ならではだなぁ、と改めて実感。 前からアイルランド映画が好きで、前世は住んでいたのか?と思うくらい、なぜか懐かしさを感じる。 筆者は何度Dunnes Stores この本を読んで知った、「Dunne’s Stores Girl/ダン・ストアズ・ガール」。 John Spillaneさんご本人が歌うのをYouTubeで見つけ、ヘビロテ中。Cork訛り、渋い声、アコースティックギター。心地いい。 自然に?こういう曲が店内で流れる街。 死ぬまでに一度は行ってみたいなぁ。 土地にまつわる映画の話も時々出てきて、映画も観てみたくなる。 よい本と出会えて嬉しかった。
Posted by
偶然見つけた小さなモノを手がかりに、話はまるでアイルランド音楽のごとくうねるようにアイルランドの文化や歴史、人々の暮らしへと広がっていく。著者の愛情あふれる、ただし節度ある姿勢に好感を持った。味わい深い一冊。
Posted by
アイルランドで見つけた出会ったモノたちのルーツや記憶をめぐる話でなんというか非常にツボでした。こんな素敵なアイルランドエッセイがあったなんて、と、図書館で借りたんだけど自分でも欲しいよう。栩木さんの他のエッセイもこのあと一気に読んでしまった。
Posted by
著者が、アイルランドで手に入れたり、見かけたモノを中心に詩や文章を引用しながら、アイルランドの文化や歴史を語ったエッセイ調の1冊。アイルランドというと、パブで出されるトドメの一杯であるアイリッシュコーヒーや、それを飲むと妖精に会えるというエピソードぐらいしか予備知識がなかったので...
著者が、アイルランドで手に入れたり、見かけたモノを中心に詩や文章を引用しながら、アイルランドの文化や歴史を語ったエッセイ調の1冊。アイルランドというと、パブで出されるトドメの一杯であるアイリッシュコーヒーや、それを飲むと妖精に会えるというエピソードぐらいしか予備知識がなかったので、違う世界を体感できた1冊でした。
Posted by
- 1