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社内調査入門 の商品レビュー

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2017/08/07

中村勉『社内調査入門』(金融財政事情研究会、2013年)は、元検察官・弁護士の手による社内不祥事調査の実践的な手引き書である。 序論を除く構成としては、社内調査の端緒(Ch.3)にはじまり、準備(Ch.4)、客観的証拠の収集(Ch.5)、ヒアリング(Ch.6)を経て、懲戒処分(...

中村勉『社内調査入門』(金融財政事情研究会、2013年)は、元検察官・弁護士の手による社内不祥事調査の実践的な手引き書である。 序論を除く構成としては、社内調査の端緒(Ch.3)にはじまり、準備(Ch.4)、客観的証拠の収集(Ch.5)、ヒアリング(Ch.6)を経て、懲戒処分(Ch.9)、不祥事公表(Ch.10)と、おおよそ時間軸に沿っている。 本書の前半において、著者は社内調査の端緒を2つの類型(社内で発見したか外部から通報があったか)に分け、状況に応じた適切な調査モデルの選択方法を解説している。社内調査の各活動に対して法的根拠を述べている点に、私は信頼感を抱いた。 白眉は、本書の15%を占めるCh.6だと思う。ヒアリンクの目的は「証拠の王」たる自白を得ることだとし(p.102)、そのための手法を詳述している。たとえば、リストアップされた関係者へのヒアリングの順序は、「下から聞く」「現在から聞く」ことが原則だという(p.119)。前者の理由は、被疑者の上司が関与している可能性があるため、後者の理由は、不正行為が現在進行形かどうかを見極めるためだそうだ。 もう1章挙げるなら、法執行機関への対応について説いたCh.8も参考になった。事情聴取が予見される際の会社の第一歩は、法務部長や総務部長への窓口一本化である。具体的には、顧問弁護士を通じて警視庁・検察庁に直接電話を入れ、主任捜査官と面会予約をとる。面会では、常務または社長クラスが出向き、捜査機関から幹部を引き出すようにする(p.136)。その上で調査への全面協力を宣言しておけば、事情聴取をホテルなどで秘密裏に実施するなどの融通が利くのだという。 今期の国際化サイバーセキュリティ学特別コース(東京電機大学)の中にデジタル・フォレンジックという科目があり、私も受講した。この科目の企業における位置づけを考える上で、同書は役に立つだろう。

Posted byブクログ