殺す理由 の商品レビュー
ルーベンスタインの中世におけるアリストテレスの発見をテーマとした「中世の覚醒」が面白かったので、読んでみた。 ルーベンスタインは、中世の研究家ではなくて、国際紛争解決の研究家で、こっちの方が本業ですね。 で、アメリカの建国以来の戦争の歴史をたどり、アメリカ人はなぜかくも攻撃的...
ルーベンスタインの中世におけるアリストテレスの発見をテーマとした「中世の覚醒」が面白かったので、読んでみた。 ルーベンスタインは、中世の研究家ではなくて、国際紛争解決の研究家で、こっちの方が本業ですね。 で、アメリカの建国以来の戦争の歴史をたどり、アメリカ人はなぜかくも攻撃的なのか、という問題に挑む。 いろいろな通説をある程度踏まえつつ、具体的に、なぜ、どのように戦争することにしたのか、そしてどのようなレトリックによって、国民を納得させたのか、などなどが整理されている。 なるほどと納得するところも多い一方、まあそんなことだよね、となんとなく新鮮味もなく読めてしまう。 おそらく、アメリカ内では、きっと非難されたり、驚かれたりする内容だろうけど。 で、最後に「国際紛争解決」のささやかな希望が述べられる。 それは、ファシリテーション! そうか〜、アメリカは暴力的な国であると同時に、それをあきらめずに、ファシリテーションしようという人がいて、その技術向上に取り組む人がたくさんいるんだな、というもアメリカの一面。 本書は、2010年、オバマ政権下で書かれたわけだが(平和的にみえるオバマですら、やっていることは歴代大統領と変わるところではないという評価かな?)、今の状態をどう見るんだろうな? まあ、確認するまでもないか。
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あまり意識していなかったのだが、 よく考えると中東のごたごたも、 結局は朝鮮、ベトナム戦争の繰り返しであった。 なぜ戦争を選択するのか、 それは決して愛国心や開拓魂だけではない、 ということはわかった。
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R・E・ルーベンスタイン『殺す理由 なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか』紀伊國屋書店、読了。米国の歴史とは戦争を選択してきた歩みである。本書は、紛争解決学の著者は通俗的なドクサを退けながら、米国の歴史を辿るなかで集団的暴力が「道徳的に」正当化されてきた文化的・社会的要因を探る。 「なぜアメリカはかくも憎まれるのか」はイコール「なぜアメリカはかくも戦争ばかりしたがるのか」である。著者はフロンティア征服欲に観られる通俗的な文化論を一蹴する。戦争を選ぶには確固たる理由があるのだ。 実利にさといはずのアメリカ人が戦争を容認してきた理由は、それが道徳的に正当化されると納得したときに戦争が選択されるという。本書は「自衛」「愛国」「道徳」の側面からその経緯を浮き彫りにする。 著者は米国史を振り返りながら一つの共通点を見出す。それは、関わっていこうとする戦争が道徳的に正しいか否かの判断について最も大きな影響を与えているのはアメリカの市民宗教(ベラー)ということ。 国家統合としての「見えざる国教」による承認が満たされた場合、戦争へ舵を切り、人々は献身していく。市民宗教は最良の形で表出することもあれば逆もある。そして為政者はそれをコントロールする。 平和を創出するためには、原論に直結した議論も必要でろう(日本ではこれがミスリード)。著者の議論は、平和原論に対して極めて辛辣かつ挑発的な「実践さ」が特徴だが、省りみられない深部にメスを入れる。 ベラーのいうアメリカの市民宗教の内実について、その歴史的経緯を比較的わかりやく描いたのは同志社の森孝一先生の『宗教から読む「アメリカ」』だとは思いますので、あわせて読んでおくとお得ではないかと思います。
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アメリカの歴史は戦いの歴史。 アメリカをグローバルなスーパーヒーローと位置付けることは明らかにさらなる暴力の誘因となる。 アメリカは比類ない徳を有するという思い込みは過去に行った数々の介入のよりどころとなっていた。 戦争を正当化するためには軍事力の行使が脅威を排除する唯一ないし最...
アメリカの歴史は戦いの歴史。 アメリカをグローバルなスーパーヒーローと位置付けることは明らかにさらなる暴力の誘因となる。 アメリカは比類ない徳を有するという思い込みは過去に行った数々の介入のよりどころとなっていた。 戦争を正当化するためには軍事力の行使が脅威を排除する唯一ないし最良の方法であることを証明しなければならない。
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