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ベケットを見る八つの方法 の商品レビュー

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2013/04/22

『ベケットを見る八つの方法:批評のボーダレス』は、生誕100年を記念して2006年に東京で行われた国際シンポの論集『ボーダレス・ベケット』の日本語オリジナル編集版(原著は英仏混在版)。 J・M・クッツェーをはじめ、スティーヴン・コナー、ブリュノ・クレマン、アントニー・ウルマン...

『ベケットを見る八つの方法:批評のボーダレス』は、生誕100年を記念して2006年に東京で行われた国際シンポの論集『ボーダレス・ベケット』の日本語オリジナル編集版(原著は英仏混在版)。 J・M・クッツェーをはじめ、スティーヴン・コナー、ブリュノ・クレマン、アントニー・ウルマン等々、世界の第一線で活躍するベケット研究者たちがずらりと顔を並べ、そこに日本の研究者たちも加わったベケット論集。 これだけ国内外の名だたるベケット研究者が顔を揃えた論集はこれまでに邦訳はなく、テーマも切り口も多彩。本邦初紹介の批評家も少なくなく、さまざまなベケット像がいろんな角度から浮き彫りにされている。 スティーヴン・コナーはバディウやナンシー、ブリュノ・クレマンはブランショやドゥルーズ、シェイン・ウェラーはデリダやアドルノといったように、全体的に哲学者への言及が目立つ。現代思想に関心を持つ人には興味深いコンテンツではないかと。 巻末に置かれた編者・岡室美奈子氏「自動降霊機械としてのテレビ」はベケットのテレビ作品『…雲のように…』を扱ったもの。テレビ用に書かれたこの作品が、テレビというメディア(媒体=霊媒)そのものを自己言及的に表現しているとするその論述は鮮やか。 新しく豊かなベケットの読み方を示唆してくれる一冊。

Posted byブクログ