新・日本文壇史(10) の商品レビュー
日本文学のなんという広がりと奥行き! 「日本文学から世界文学へ」と副題された本シリーズの最終巻では、尾崎一雄、丹羽文雄、舟橋聖一、川端康成、三島由紀夫、島尾敏雄、庄野順三、吉行淳之介、安岡章太郎、小島信夫、三浦朱門、小川国夫、古井由吉、安部公房、開高健、大江健三郎、遠藤周作、大...
日本文学のなんという広がりと奥行き! 「日本文学から世界文学へ」と副題された本シリーズの最終巻では、尾崎一雄、丹羽文雄、舟橋聖一、川端康成、三島由紀夫、島尾敏雄、庄野順三、吉行淳之介、安岡章太郎、小島信夫、三浦朱門、小川国夫、古井由吉、安部公房、開高健、大江健三郎、遠藤周作、大庭みな子など日本文学を代表する作家たちの作品と業績、そして文壇の終焉が歯切れよく回顧され、最後に「異端が正統なき時代の正統となった」村上春樹の世界性を論じて、ああ堂々の掉尾を飾っている。 本巻で私が驚いたのは舟橋聖一の妻妾同居生活で、巌谷大四に「僕に自信はないが、今晩僕の部屋で、二人の女と…」と口吻を漏らすこの稀代の耽美主義作家の創作の秘密はじつにエロくて生々しいものがある。 昭和29年から3年間にわたって三島由紀夫と毎晩のように性愛を重ね、彼の「澄んだきれいな瞳」を見続けていた豊田貞子が、映画「憂国」の由紀夫の眼にはそれが失われていた、という証言も生々しいが、昭和42年に船山馨と銀座のバーで川端康成夫妻と同席した著者が目撃した、康成が見ず知らずの隣の女性の身体を手で執拗に撫でまわす光景は「眠れる美女」の世界を思わせてもっと生々しくて息を呑む。 また遠藤周作には仏留学時代に将来を誓ったパストルという婚約者がいたにもかかわらず、鴎外のエリスのように彼女を袖にして岡田順子と結ばれたという秘話も紹介されている。 かにかくに全10冊を時の経つのも忘れて読んだはずの健忘症の頭の中には、例によってなんの残影も残ってはいないが、それというのも著者がここで手際よく紹介してくれた原作のほんの一部しか私は読んだことがないからである。 嗚呼、なんという日本文学の広大無辺の広がりと奥行きであることか! あの世に行くまでにあとどれくらい時間が残っているか分からないが、小西甚一、ドナルド・キーンと比肩するこの恰好の文学ガイドブックを手掛かりに、これからも好きな作家の好きな文章を独りぼつぼつ渉猟してゆきたいと思っている次第である。 じぇじぇじぇじぇ日経平均大暴落ほんとは誰も信じちゃいない安倍蚤糞 蝶人
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