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脳のなかの天使 の商品レビュー

3.8

32件のお客様レビュー

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2024/06/26

『脳のなかの幽霊』は脳の機能や患者たちの病理にフォーカスを当ててそこから人類の脳の不思議・神秘をミクロな次元から(つまり「細部」に光を当てて)解明していった印象がある。それと比べると本書のアプローチは実にマクロな次元において、人類の脳が芸術や哲学をどう切り開いてきたかを説いている...

『脳のなかの幽霊』は脳の機能や患者たちの病理にフォーカスを当ててそこから人類の脳の不思議・神秘をミクロな次元から(つまり「細部」に光を当てて)解明していった印象がある。それと比べると本書のアプローチは実にマクロな次元において、人類の脳が芸術や哲学をどう切り開いてきたかを説いている印象を受ける。ざっくり整理してしまうなら「人類の脳が『概して』この世界をどう捉えているか」「どう捉えられうるポテンシャルを孕むか」という見方がベースにあると睨む。その意味で本書は応用編として読みごたえあり、十二分に満喫できたと思う

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2022/11/20

自閉症など脳の障害がある場合、本当にいろいろな症状があるんだと思わされるし自分にもいつか訪れるかもしれないので興味深い。

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2022/02/15

もちろん、人間の脳を生きたまま解剖して其の働きを調べることなどできるはずもないので、何らかの理由で脳に損傷を負った患者の観察から、脳のそれぞれの部位のはたらきを明らかにしていくことになるのだが、それでも人間の脳のメカニズムのすべてが解明されるには程遠いのである。 特に、自己とか自...

もちろん、人間の脳を生きたまま解剖して其の働きを調べることなどできるはずもないので、何らかの理由で脳に損傷を負った患者の観察から、脳のそれぞれの部位のはたらきを明らかにしていくことになるのだが、それでも人間の脳のメカニズムのすべてが解明されるには程遠いのである。 特に、自己とか自己意識というものが脳のどんなはたらきによって形成されるのかは、科学者のみならず哲学者にとっても大きな問題として議論されてきた。いつかそれが明らかにされる日は来るのだろうか。

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2021/03/23

おもに視覚の神経と感情と行動について。 そして話はあちこちに飛ぶ。おもしろいのは全体的にはフロイトに否定的でありながら防衛機制に関しては評価が高いというあたりで、防衛機制のそれぞれについてコメントがあり、また意識の解明に役に立つとまでしているあたり。

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2019/11/28
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購読の動機 量子脳理論に関するユーチューブ見ている内に著者の放送動画に出会った。脳に関する最新の地誌が得られることを期待する。心は体から生まれるのか否か?

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2019/04/12

脳神経科学の分野で著名な研究者であるラマチャンドラン先生の著作3冊をまとめ読み。なぜもっと早く読んでなかったのだろうと、自分に問いたくなる名著だ。自我、自意識というものの進化的起源を神経学の病理研究事例から考察していく。「私の心」が私の体の中にあって、私の思考や言動を司っていると...

脳神経科学の分野で著名な研究者であるラマチャンドラン先生の著作3冊をまとめ読み。なぜもっと早く読んでなかったのだろうと、自分に問いたくなる名著だ。自我、自意識というものの進化的起源を神経学の病理研究事例から考察していく。「私の心」が私の体の中にあって、私の思考や言動を司っているという概念がグラグラと揺れる。脳機能について、現段階ではまだまだわからない事も多いが、少しずつ科学的に解明されていく時代に自分がいあわせていると思うとワクワクする。

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2018/11/05

著者は医者として臨床のバックグラウンドがあり、ローテクで済む「スモール・サイエンス」が好みだと語る。おかげで一般読者にも分かりやすい本が書けるのだろう。様々な症例から、健常な人間を見ていては分からない、人間の意識・情動・認知のメカニズムの姿がボンヤリとながら見えてくる。 著者の...

著者は医者として臨床のバックグラウンドがあり、ローテクで済む「スモール・サイエンス」が好みだと語る。おかげで一般読者にも分かりやすい本が書けるのだろう。様々な症例から、健常な人間を見ていては分からない、人間の意識・情動・認知のメカニズムの姿がボンヤリとながら見えてくる。 著者の手法は還元主義的だ。脳全体での複雑なフィードバックお存在はもちろん否定しないが、脳はさまざまな機能の集合体であり、それらの機能は脳内の別々の場所に局在していることを明らかにしている。主観的には、ヒトはひとつの意識の元に統一された存在だが、実はさまざまな脳内機能のパッチワーク的存在とも言えるのだ。脳が局所的に機能不全になった患者の症例がそのことを物語る。 半昏睡状態で目の前にいる自分の父親を認識できない患者が、なぜか隣の部屋から父親が電話をかけてくると、にわかに意識を取り戻して父親をそれと認識して会話する!このように、なんともミステリアスな症例が数多く取り上げられている。 ・幻肢と可塑的な脳  著者の十八番。治療法にまでつなげている。 ・見ることと知ることと  視覚のプロセスはもっとも研究が進んでいる。30ほどの視覚野の働きが組み合わさっていることが分かっている。ホムンクルス誤謬。 ・うるさい色とホッとな娘−共感覚  なんだか芸術家っぽくてオシャレな共感覚。 ・文明を作ったニューロン  ミラーニューロンについてはまだ詳しいことは分からないが、模倣による学習や社会的知能だけでなく、自意識もミラーニューロンが生み出したのではないかと。 ・スティーヴンはどこに 自閉症の謎  自閉症はミラーニューロンの障害なのではないかと。 ・片言の力−言語の進化  ブーバ-キキ現象。一種の共感覚が言語の原型を作ったのではないかと。 ・美と脳−美的感性の誕生 ・アートフル・ブレイン-普遍的法則  美を感じる9つの法則。かなり自由に論を進めていて楽しめる。 ・魂をもつ類人猿−内観はどのようにして進化したか 大胆な仮説も疲労してくれて、発展途上の学問の面白さが伝わる一冊。

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2018/04/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2013年刊。著者は米国カリフォルニア大学サンディエゴ校脳認知センター所長兼教授。  「脳のなかの幽霊」他の著作を有する著者による追加報告・続編的趣きの書である。  幻肢や幻視、共感覚、あるいはサヴァン症候群を含む自閉性スペクトラム障害(ミラー・ニューロン障害仮説に立脚)に関しては、前著にも書かれていたと思うし、本書がその繰り返し側面を持つ印象はある。  しかし、本書はそれに付加して、ホモ・サピエンスの言語能力の生物学的進化に関する仮説、美的感覚と脳(チラリズムへの高い関心度。ただし男女問わずらしい)。アートと脳。そして自意識の問題へと筆を進めていく。  そういう意味で、前著を既読済みであれば、4章までは読み飛ばしでいいだろう。  しかし5章以下はなかなか読み応えがある。  本著者の特徴は、認知心理学的なものよりも、現実の脳疾患の患者が見せる特有性を踏まえ、当該認知機構他の脳内の局所性を可及的に分析しようとする態度である。  そしてそれは脳内の非侵襲的測定技術が亢進したことに鑑みても、有意な分析手法となっているといえそうだ。  この中で興味深いのは言語の進化である。  確かに、本書では具体的にこれという箇所を特定しているわけではない。  しかし、まず進化における外適応(他目的で進化したものが別目的にも利用される)を前提とし、人間の言語の特徴的な部分として、抽象化能力=2つ以上のものを、類似するものとして結びつける力(語と内的心象との結合が可能になる)、入れ子構造(再帰性能力)等に求め(本文では他の要素も提示)、それを脳の機能的な局所性の分析(疾病者を含む)から、前者は下頭頂小葉(IPL)の中の「角回」であると。  後者=入れ子構造の理解をヒトの道具製作の特徴(複合道具)を踏まえ、ブローカー野の近縁領域にあると見、これらの混成が言語の爆発的進化を招来したという。  さらに興味深いのは自意識の叙述だが、かかる説明・仮説、つまり脳の機能の混成・複合的作用と、その帰結が齎す仮説に説得力を付与するのは、具体的かつ豊富に提示される脳の疾病の説明部分だ。  表面的な認知心理学とは一味も二味も違う上、骨という脳の機能性を捨象した分析とも違う。  また比較対照を霊長類だけに求めることで、進化の道筋を全く想起できない弊害からも解放される。これは特筆してよかろう。  脳の機能的な特異さを感得できるばかりか、容易に解けない人間の進化、さらには自意識という哲学領域にも踏み込む本書。読み応えのある内容なのは確かである。

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2015/04/25

おそらく専門書の何倍も読みやすいに違いない。 だけど、脳神経に素人で頭のよくない私には、少し難しかったのが正直なところ。 驚きの連続でへえ〜って心の中で常に思うことばかりだれど、特に興味がわいたのは、なぜ人は抽象画を好むようになるのかの章。なるほど!そこにアハ!を感じる訳か、とひ...

おそらく専門書の何倍も読みやすいに違いない。 だけど、脳神経に素人で頭のよくない私には、少し難しかったのが正直なところ。 驚きの連続でへえ〜って心の中で常に思うことばかりだれど、特に興味がわいたのは、なぜ人は抽象画を好むようになるのかの章。なるほど!そこにアハ!を感じる訳か、とひとり合点がいった。

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2014/12/24

脳の中の幽霊等も非常に面白く私の思想に大きな影響を与えたが、この著作は一際面白いものだと思った。今回の中心的なテーマはミラー・ニューロンや共感覚であり、それを軸にするような形で人間の起源、自己の正体に迫っていくようなものだった。一部は文系の私にとっては難解に感じるような本格的神経...

脳の中の幽霊等も非常に面白く私の思想に大きな影響を与えたが、この著作は一際面白いものだと思った。今回の中心的なテーマはミラー・ニューロンや共感覚であり、それを軸にするような形で人間の起源、自己の正体に迫っていくようなものだった。一部は文系の私にとっては難解に感じるような本格的神経科学に踏み込んでいたが、概ねの内容は専門的知識を持たない人間でも十分に理解できるように構成されていたと思う。次の著作が出てもまた読みたい。 しかし、今回煽り文句として「人間に取って美とは何なのか?」というものが大きかったと思うのだが、その点についての言及が、美というもの、芸術というものを中心的なテーマとして追及している私からすると割合的にも、深度的にも物足りない部分があった。 そもそも芸術の領分というのは技術の進歩による理系学問の発展、伸長に対する文系学問最後の砦だと考えている私にとって、これはある意味では喜ぶべき事実なのかもしれない。これだけ明瞭に、斬新に事象や概念について神経科学的なアプローチで切り込んでいるラマチャンドラン氏の手をもってしても、還元主義的アプローチでは(少なくとも現時点では)芸術の領域にはまだ踏み込むことが許されていないという解釈もできるからだ。最も原始的で直観的な美の原動力を説明づけることが出来たとしても、重層的に塗り重ねられた歴史と文化と社会構造の複雑な体系であるところの芸術の本質というのは未だにサンクチュアリとして残されている。いずれ数百年、数千年先になればそれすらもすべてがあらわになってしまう時が来るのかもしれないが、少なくとも私がまだ人文科学的アプローチで研究している領域が残されているという点、そしてその中で神経科学的、還元主義的アプローチとの学際的研究を行うことが現代までの芸術研究をもう一歩先に進める可能性を持っていることを確認できたことはこの本を読んだことの意味として大きなものだと思う。

Posted byブクログ