「わかりやすい経済学」のウソにだまされるな! の商品レビュー
社会人生活を始めて、常に「わかりやすい説明」を求められて続けてきた私にとって、この本のタイトルにある「わかりやすい経済学」に惹かれてきたのは認めざるを得ません。 この本の著者である益田氏は、経済というのは生き物であり、即効性があり明確に効果がある解決策というものは無いと、この本...
社会人生活を始めて、常に「わかりやすい説明」を求められて続けてきた私にとって、この本のタイトルにある「わかりやすい経済学」に惹かれてきたのは認めざるを得ません。 この本の著者である益田氏は、経済というのは生き物であり、即効性があり明確に効果がある解決策というものは無いと、この本で解説しています。更に、経済を読むためには、5つの視点(合成の誤謬・時間軸のずれ・セクターの違い・モラルハザード・社会目的との相克)を意識する必要があるとしています。 重要なのは、結論そのものではなく、結論がどのような過程を経てなされたものなのか(直感的なものか、逆効果・反作用まで理解したもの)を判断することであるとしています。 コンセプトとしては素晴らしいと思ったのですが、なぜ日本国債がこのまま増え続けたら問題なのかについての説明は、明確にされていなかった点が残念に思いました。 以下は気になったポイントです。 ・ワンフレーズ提言の穴として、1)工程表が示されていない、2)実現した場合の反作用がある(p35) ・改革とはあまりにも抽象的な語で、それが何を意味するのかは十人十色(p40) ・経済予測は、短期は需要面から、長期は供給面から予測する(p58) ・為替レートの決定理論は、1)購買力平価、2)国際収支(特に経常収支)、3)二国間の金利差、があり、それぞれ、長期・中期・短期の為替変動に影響する(p65) ・議論が平行線になるのは、その原因として、「拠って立つ価値観」の違いにある(p76) ・日本全体の貯蓄超過は、日本の対外的な収支差額である経常収支黒字と概念的に一致する、このため、財政赤字にもかかわらず国債金利、すなわち日本の長期金利が低位にあるのは、経常収支の黒字があるからといえる(p102) ・日本において1986年以降、名目成長率が長期金利を上回ったのは、バブルの真っ盛りの87-90年のみで、他の22年間は長期金利のほうが高い(p108) ・高所得者の子孫はより多くの国債を保有する可能性あり、数十年後に所得税減税のために発行された国債が償還されるときは、消費税がその財源となる可能性があり、親が裕福でなかった人が負担することになるだろう(p114) ・円高でも増収増益を続ける日本企業は、鉱物資源の原材料が不可欠な製造業、輸入品をうまく活用する消費関連産業(p145) ・1995年の円高と2008年以降の円高の状況がことなるのは、1)個人投資家、民家資金が多い、2)国際協調が期待できない、である(p152) ・食糧自給率は、2011年度で、カロリーベースでは39%(1965年には73%)、生産額ベースでは 66%(p161) ・TPPへの賛否を議論するには、まず「自由貿易に賛成か反対か」を議論する必要がある(p163) ・貿易自由化への形態として、1)関税を率先して下げる、2)二国間FTA、3)マルチの枠組みであるWTOを通して関税引き下げ、4)自由貿易圏へ参加する、TPPもそのひとつ(p183) ・日本ではRCEP(=ASEAN+日中韓+豪ニュー+インド)のほうが、TPPよりも経済関係が密接であり、重要であると思われる(p186) ・日本の貿易収支は、大きな海外生産のシフトにも拘らず黒字を維持してきた、加工組み立て工程は移転したが、高度な技術を要する部品製造や工作機械の製造工程は国内に残したので、それらのアジア諸国への輸出が増加した(p197) ・現在出されている年金支給引き上げ案は、1967年生まれ以降(2012現在で45歳)の人は、68歳まで厚生年金を受け取れないことになる(p226) ・2011年の基礎年金の給付額は、本来の水準より2.5%割高で、過剰な年金支払いによる財政負担は 2000-2011年度で累計7兆円(p228) 2013年4月3日作成
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