ドクトル・ジヴァゴ の商品レビュー

ボリース・パステルナーク【著】,工藤正廣【訳】

2020/05/06

腐敗した帝政が､長引いた第一次大戦の果てに革命で倒れたとき､人々は何を期待しただろう｡しかし革命政府の失政によって大量の餓死者を生み､赤軍は容赦なく抵抗する民へ砲撃を浴びせた｡歴史は冷酷な姿を今に伝える｡チェーホフが活躍した時期を30年程度ずらして､インテリの目を通してロシア革命を見たら､きっとこのような物語が出来る｡ロシア革命の欺瞞をこれでもか！と糾弾する内容が並んでいるのに､文章はあくまで詩的で流麗｡勿論最後の「ジヴァゴの詩」もいいけれど､川端香男里の巻頭言も訳者後書きも含めて､大枚はたく価値あり｡