「日本国憲法」廃棄論 の商品レビュー
表現は正確ではないかもしれないが、著者は『大日本帝国憲法下の立憲君主制は、臣下がとった行動の最後の責任を天皇陛下になすりつける畏れ多い政治体制であった』という。 この話、先日読んだ、浅田次郎『マンチュリアンリポート』に恐ろしく符合することに内心驚いている。 張作霖爆殺事件に...
表現は正確ではないかもしれないが、著者は『大日本帝国憲法下の立憲君主制は、臣下がとった行動の最後の責任を天皇陛下になすりつける畏れ多い政治体制であった』という。 この話、先日読んだ、浅田次郎『マンチュリアンリポート』に恐ろしく符合することに内心驚いている。 張作霖爆殺事件に激怒した昭和天皇は、田中義一内閣に事件の徹底究明と処分を命じる。田中総理もその意向であったが、軍部の反対で結局うやむやにせざるを得なかった。 田中の事態収拾の手ぬるさに再び激怒した昭和天皇は『もう田中の奏上は聞きたくない』と発言し、田中首相は恐懼して涙ながらに辞職した。 こののち、昭和天皇の爆弾発言は影をひそめる。立憲君主のありかたについて、いろいろお考えになられたに違いない。 本多勝一は、戦時中の『米軍をピシャリとやっつけることはできぬのか』なる陛下のご下問を捉えて『彼こそ戦犯だ』と言うが、これは過去の経験を踏まえて『お前たちは、目論見と結果がつねに真逆ではないか。自己弁護ではなく、本当に事態を収拾するための策を示すべきではないか。』との真意に発したギリギリの発言だったのではないか。 じつは今回は、普段と違う読書の仕方をしている。傍らに、樋口陽一『五訂憲法入門』(勁草書房)を置き、必要に応じて参照しながら読み進めているのだ。 入門書の効用は、中山研一『刑法講義総論・各論』を通読したのち、『刑法(全)』を読んで戻ったら、非常に理解しやすかった経験で実感したものである。もう25年以上も前のことだけど。
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