変 の商品レビュー
ノーベル賞作家、莫言の自叙伝的小説。『紅い高粱』や『豊乳肥臀』『白檀の刑』など作品を読んできたがどれもハズレがない。本作は、ノニーノ国際文学賞受賞時にイタリアで出版社にせがまれて書いたものだという。短編のようなサイズ感だが、さすが天才と思わせるようなシーン展開や情景描写。読み応え...
ノーベル賞作家、莫言の自叙伝的小説。『紅い高粱』や『豊乳肥臀』『白檀の刑』など作品を読んできたがどれもハズレがない。本作は、ノニーノ国際文学賞受賞時にイタリアで出版社にせがまれて書いたものだという。短編のようなサイズ感だが、さすが天才と思わせるようなシーン展開や情景描写。読み応えがある。 中国の文化、中国人の気質について、日本人は少し誤解しているかも知れない。私は中国人と縁があって長く付き合ってもいるが、彼らの人と人を軸とした関係構築の逞しさ、反面には社会制度への不信に由来するのだが、身近な者を大切にする距離感や文化は日本とは対極的にも感じる。そうした中国らしさが話に盛り込まれる。 そもそも、日本では小学生を学校から追放したり、殴ったりもしない。勿論、今の中国ではなく、戦後の古く貧しい中国の話だが。どこまで事実かは分からないが、小説であるため、詳述は避けておく。とにかく、薄いページ数の割りに莫言の良さを失っていない良作だ。
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中国籍作家として初めてノーベル文学賞を受賞した人の自伝的なお話。 語り口調で進み、読みやすかった。 混沌とした時代を生きた作者の生き様を感じた。
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中国のノーベル賞作家の自伝的小説ということで挑戦してみた。予想に反して読みやすくてひきこまれた。まるで青春小説のようで、フィクションも含まれているようだが小学生のころの逸話は面白すぎて笑いながら読んだ。中国の歴史的背景に詳しければさらに楽しめるはず。その部分は少し難しかった。
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初の莫作品だが、ノーベル賞作家云々を抜きにしても直ぐに引き込まれた。 もっと重いテーマの作品を読んでみたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
敢えて批判的言辞を弄するまでもなく、淡々とした会話描写それ自体がそのまま現実批判になっている。 →なるほど、そういう手法もあるのか。確かにわざわざ言うまでもないことを言語化するのは無粋な時が時々ある。 なぜ断らないのか。それはもちろん、つらい境遇の魯文莉の心情を汲むという面があると同時に、そうしたやり方が、現今の中国の慣習だからであり、小説では敢えて金を預かることによって、逆に社会批判が成り立つのである。 →すごい読みだ。
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莫言の本をやっと読む。 莫言の自伝的物語。 莫言は 小学校の時に 放校処分に合う。 1969年のはなしで、劉天光先生は 口が大きかった。 それで、劉ガマとか 劉カバ と名付けたのが 莫言で、 そのことで放校になったという。(ちょっとありえないけど) 同級生で 何志武と魯文莉がいた...
莫言の本をやっと読む。 莫言の自伝的物語。 莫言は 小学校の時に 放校処分に合う。 1969年のはなしで、劉天光先生は 口が大きかった。 それで、劉ガマとか 劉カバ と名付けたのが 莫言で、 そのことで放校になったという。(ちょっとありえないけど) 同級生で 何志武と魯文莉がいた。 魯文莉は、卓球の選手でチャンピオンとなり、かわいい子だった。 父親は トラックの運転手で ソ連製のグリーンのCAZ51 に乗っていた。 そのトラックは 朝鮮戦争の時に活躍して、未だに走っていた。 また、トラックの運転はその当時でも珍しく、地位も高かった。 何志武は 魯文莉が 好きで 何になりたいと言う作文で 『俺には他に理想はない。たったひとつの理想があるだけだ。 俺の理想は 魯文莉の父親になることだ。』と書いたことが みんなから 笑われ 先生からも追求された。 そのため、何志武は、学校をそのまま出て行ってしまった。 莫言と比べても、決断力があり、思いっきりのいい子だった。 莫言は 工場で働いたり、軍隊に応募したりして、 人民解放軍に 入ることができた。そこで、トラックCAZ51 に合う。 莫言は 運命的な出会いを感じ、運転手になることを夢み、 また、北京まで 行ったりした。 莫言は 本が好きで いろいろと本を投稿したりして、 評価されるようになって、大学に入る。 さらに 『紅いコーリャン』が 張芸謀によって 映画化されることになり 有名となった。 時は流れて 何志武 は 怪しいビジネスをして成功し、 魯文莉は 結婚し、子供を産み、そして 未亡人となり、 劉カバ先生と再婚したりした。 莫言は 何志武と魯文莉 にあうのだった。 中国の 特色的社会主義に変化していく中で それぞれが 変化した人生を歩み 交差する。
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2012年のノーベル文学賞が村上春樹ではなく莫言だとわかった時、ネットでは僻みもあっただろうか、穿た見方をする論者を見たのを思い出す。つまりは、莫へのノーベル賞授与は言論統制の国で生きる彼への助け船であり、より反政府的な小説を書きやすくさせるためのものだというようなものだった。こ...
2012年のノーベル文学賞が村上春樹ではなく莫言だとわかった時、ネットでは僻みもあっただろうか、穿た見方をする論者を見たのを思い出す。つまりは、莫へのノーベル賞授与は言論統制の国で生きる彼への助け船であり、より反政府的な小説を書きやすくさせるためのものだというようなものだった。この作品は莫にとっての自伝的な小説だが、少なくともそのような感じはしない。むしろ、中国の近代史を危うげない形で辿る中で、郷愁に浸るような繊細な作品だ。それなり面白く読んだ。
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莫言が自らの子ども時代から若者時代を中心に描いた作品。150頁弱と短く読み易い。 たいへん面白く読めた。
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黄色に大きく『変』でひどく目立ち、よくよく見ればあのノーベル賞作家ではないか! 変、だなんて、どんなストーリーを書く作家なの?と興味本位で手に取れば、英語でchangeと添えられており、ちょっとがっかりする。あ、そっちの変か…。 彼の自伝的小説だとのことだが、文章は軽快な感じで...
黄色に大きく『変』でひどく目立ち、よくよく見ればあのノーベル賞作家ではないか! 変、だなんて、どんなストーリーを書く作家なの?と興味本位で手に取れば、英語でchangeと添えられており、ちょっとがっかりする。あ、そっちの変か…。 彼の自伝的小説だとのことだが、文章は軽快な感じで、手記っぽくもエッセイっぽくも読める。 文化大革命の激動の中国から現在に至るまで、国に翻弄されて生きてきた自身を振り返りつつ、変わり続ける中国をも炙り出そうという気概が感じられる。 読者に語りかけるような表現が、独特でありながら思いのほか読みやすく、中国の歴史はからきしダメな私にも、当時の雰囲気が何となくイメージできてくる。 中国の変化という大きなテーマに見せておきながら、その実、著者の思い出を瑞々しくも描き出した青春の物語とも読める作品。
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<中国社会の変容に自らの人生の変遷を重ねる、ノーベル賞作家の自伝的小説> タイトルの「変」をぱっと見ると、「奇妙な、変な(strange)」の方の「変」かと思うのだが、英語で「Change」と併記されている。つまりは1970年前後から30年あまりの中国の変化を自伝めいた形で綴っ...
<中国社会の変容に自らの人生の変遷を重ねる、ノーベル賞作家の自伝的小説> タイトルの「変」をぱっと見ると、「奇妙な、変な(strange)」の方の「変」かと思うのだが、英語で「Change」と併記されている。つまりは1970年前後から30年あまりの中国の変化を自伝めいた形で綴った小説である。 比較的短く、軽いタッチである。 中心となるのは、主人公が小学校5年生のときの同級生2人との思い出、そしてその後である。1人は何志武、思い切りがよく切れ者の男子、もう1人は魯文莉、卓球が得意でまずまずかわいい女の子。何志武は魯文莉に好意を抱いている。 主人公とこの2人は時を経て再会をするのだが、再会までには主人公自身、波乱に満ちた人生を送る。小学5年生で放校処分を受け、工場労働等を経て、軍に入隊。文才が認められ、有名人となっていく。 流れるように物語は時を下り、3人はそれぞれの運命を辿る。 訳者による巻末の解説によれば、文体や話法に実験的な手法を用いているようなのだが、中国語をよく知らないこともあって、その辺が読み取れないのは残念だ。 G.マルケスやW.フォークナーの影響を受け、マジックリアリズムを駆使した長編を書いているとのこと。本書にはさほど目眩く描写はないように思うが、ソ連製のトラックの話や、魯文莉と先生が卓球をするシーンにはそんな片鱗が覗いているような印象も受ける。 訳者は、最後の場面に魯迅の『故郷』を重ねている。 それぞれの人生を送り、互いに変わってしまった旧友との再会は、時に、ほろ苦さを纏うものなのかもしれない。 中途でぷつりと断ち切られるような幕切れは、まだ3人のこの先の人生が続くことを象徴しているようにも読める。
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