世紀の空売り の商品レビュー
投資の世界を小説で勉強しようと思い読んだ。でもサブプライムのCDOのCDSという特殊分野で一般的な勉強にはならず。1回目は流れを追うだけだったが、すぐ2回目読んだら結構コンパクトでわかりやすかったことに気付いた。描き方も巧みで「もう一度言ってもらえますか」(p252)や「ゼロ!」...
投資の世界を小説で勉強しようと思い読んだ。でもサブプライムのCDOのCDSという特殊分野で一般的な勉強にはならず。1回目は流れを追うだけだったが、すぐ2回目読んだら結構コンパクトでわかりやすかったことに気付いた。描き方も巧みで「もう一度言ってもらえますか」(p252)や「ゼロ!」(p272)など劇的で良い。東江一紀の翻訳が自然でさすがというのもある。普通に良くできた小説。 でもこれが作り話でなく2007年に実際に起きたことというのは笑えない。著者は金融危機の源を1981年にソロモン・ブラザーズが合資会社からウォール街初の上場企業に転じ財務上のリスクを株主に転嫁したこと、つまり投資銀行側の問題としている。しかし一般庶民の強欲や無責任が集まって投資銀行を動かしていたと考えれば、源は一般庶民ひとりひとりではないか。 ・一軒めを買ったあと、その家が値上がりし、貸し手がやってきて、二十五万ドルの新規貸し付けを提案したからだ。姉妹はその資金で二軒めの家を買った。すると、その家も値上がりしたので、同じ試みが繰り返された。「五軒めを買い終えたころから、市場が下落を始めて、ローンの返済がまったくできなくなったらしい」(p180) 他におもしろかったのは以下。 ・『そこをもっと詳しく、標準語で説明してもらえます?』とか。そう突っ込んでおくと、いくつかためになることが聞き出せるんです。まず相手が自分のしゃべっていることをわかっているかどうか、はっきりしますね。(p59) ・ジョン・マックが、ハーウィー・ハブラーの冒していたリスクの内容を知る者が、行内にはほかにひとりもいなかったという事実を明言することなく言おうとしていたのは、ハーウィー・ハブラーの冒していたリスクの内容を知る者が、行内にはほかにひとりもおらず、ハーウィー・ハブラー本人も知らなかったということだった。(p375) ・みずほ証券は、いまだにみずほにしかわからない理由で、アメリカのサブプライム債権を扱う賢いトレーダーという体裁を身にまとい、モルガン・スタンレーの手から、サブプライムに裏付けされたCDOを十億ドルぶん受け取った。(p370)
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CDOを取引するために努力した人たちの話や、AIGがリスクを負っているため証券会社は悠々と取引を売っていた話、何億ドルの取引をしても全然動かない取引値といった個別の内容は面白かったが、詳細な内容は書かれていないし、全体的にわくわくする部分が少なめ。それでも読ませてしまうのは原作者...
CDOを取引するために努力した人たちの話や、AIGがリスクを負っているため証券会社は悠々と取引を売っていた話、何億ドルの取引をしても全然動かない取引値といった個別の内容は面白かったが、詳細な内容は書かれていないし、全体的にわくわくする部分が少なめ。それでも読ませてしまうのは原作者と翻訳者の腕な感じがします。 当時の雰囲気を知るために読むような本。
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映画を先に見ていたので、話が理解しやすかった 事実は小説よりも奇なり...! ビル・ミラーとアイズマンが話すシーンとか、そんな出来すぎたことが起こるかねっていう気持ちになった マイケル・バーリが気の毒すぎた、懸命すぎた余りに非難されるなんて、現代の魔女狩りじゃんね 金融業って...
映画を先に見ていたので、話が理解しやすかった 事実は小説よりも奇なり...! ビル・ミラーとアイズマンが話すシーンとか、そんな出来すぎたことが起こるかねっていう気持ちになった マイケル・バーリが気の毒すぎた、懸命すぎた余りに非難されるなんて、現代の魔女狩りじゃんね 金融業ってひっどいなあと思ってしまった、、、
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マイケル・ルイスの本、はじめて手に取りましたが、予想をはるかに超えて面白かったです。2008年に引き起こされる世界金融危機の発端となるサブプライム・モーゲージ債。これが貸し手の金融機関と借り手(所得の低い米国人)の間だけでしたらここまで被害は大きくならなかったのでしょうか、いわゆ...
マイケル・ルイスの本、はじめて手に取りましたが、予想をはるかに超えて面白かったです。2008年に引き起こされる世界金融危機の発端となるサブプライム・モーゲージ債。これが貸し手の金融機関と借り手(所得の低い米国人)の間だけでしたらここまで被害は大きくならなかったのでしょうか、いわゆる投資銀行と呼ばれる連中が、錬金術をはじめるわけです。しかもタチが悪いのが、錬金術をはじめた投資銀行のトップが、事態を全く理解しておらず、S&Pなどの格付け機関もその金融商品(CDSやCDO)について理解していないのです。 本書では、この錬金術に気づいた極めて少数派の人々が、その人物像も含めて丁寧に描かれており、とても興味深く読みました。また複雑な金融商品についても、素人にもわかりやすい説明がされているので、すらすら読めました。本書にも書かれていますが、金融機関の人々は、あえてわかりづらいネーミングをします。ですから金融商品の名前は額面通りに受け取るのではなく、自分で名称をつけてしまう方が賢いやりかたでしょう。米国の投資銀行、そして格付け機関も共犯者と言っていいと思いますが、世界経済を破綻寸前においやった人々の実話と、それに立ち向かった(逆張りした)少数の人々(本書の主人公)の物語は、これからも語り継がれていくべきだと思いました。
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GFCの爆心地がどこだったのか、なぜあそこまでの金融危機となり得たのか、世間に逆行して住宅市場をショートできた賢人たちがどのようにその決断に至ったのか… それらが非常にわかりやすく、かつ飽きずに読み続けられる良書だと思います。 市場が間違っていて自分は正しいと確信できるだけの分...
GFCの爆心地がどこだったのか、なぜあそこまでの金融危機となり得たのか、世間に逆行して住宅市場をショートできた賢人たちがどのようにその決断に至ったのか… それらが非常にわかりやすく、かつ飽きずに読み続けられる良書だと思います。 市場が間違っていて自分は正しいと確信できるだけの分析力と、莫大なショートポジションを維持したその胆力は想像を絶するものがありました。
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サブタイトルに「賭け」の文字が見えるけれど、実際に読んでみると賭けでも何でも無くて常識的な行動をしていたんだなぁという印象を持ちました。 結局、原因をつくった人たちが破綻後も得をしていたというのもちょっと意外。みんなそろって損していると思っていたのに。 時系列で描かれているの...
サブタイトルに「賭け」の文字が見えるけれど、実際に読んでみると賭けでも何でも無くて常識的な行動をしていたんだなぁという印象を持ちました。 結局、原因をつくった人たちが破綻後も得をしていたというのもちょっと意外。みんなそろって損していると思っていたのに。 時系列で描かれているので、登場人物の出入りが激しい印象が有り、登場人物一人一人の行動の把握が難しいと思いましたし、サブプライム関連の用語が一部難しくて理解できていないところもありましたが、全体的に見れば楽しめたと思います。 結局あの経済危機は何だったのかを把握するには良い本だと思いました。
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まだ記憶に新しい、2008年の金融危機 (日本でいうリーマンショック) を扱うノンフィクション。 好況に沸くウォール街で繰り広げられるマネーゲームを冷静に分析し、その先行きを正確に見通した男たちがいた。彼らはどのようにして、サブプライム・ローンのまやかしを見抜き、その破綻に賭け、...
まだ記憶に新しい、2008年の金融危機 (日本でいうリーマンショック) を扱うノンフィクション。 好況に沸くウォール街で繰り広げられるマネーゲームを冷静に分析し、その先行きを正確に見通した男たちがいた。彼らはどのようにして、サブプライム・ローンのまやかしを見抜き、その破綻に賭け、そして巨額の利益を得ることができたのか。なぜ多くの人々が、破滅の瀬戸際までこのローンの危うさを見過ごしていたのか。 3組のグループの足跡を追いながら、金融危機に至るまでの顛末を描く。 まさに小説より奇なる展開と、解説の分かりやすさで、一気に読んでしまった。 ローン発行会社、銀行、投資ファンド、格付け機関、それぞれがライバルを出し抜き、利益を生み出すためのトリックを駆使したあげく、作り上げた複雑なシステムは現実と乖離してしまう。 ウォール街からは、実際にローンを借りている人々の姿が見えていなかった。 渦中にいて外からの視点を失うことの危険性。 それが忘れられた頃に、バブルは何度でも繰り返され、その度に破綻に至るのだろう。
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銀行員3、4年目の時に上司におすすめしてもらい読みました。この本を読んでいない先輩よりは「リーマン・ショック」「空売り」「CDS」「サブプライムローン」と言った用語についても自分の言葉で話せるようになったと思います。 リーマン・ショックについてほとんど無知の状態で手に取りました...
銀行員3、4年目の時に上司におすすめしてもらい読みました。この本を読んでいない先輩よりは「リーマン・ショック」「空売り」「CDS」「サブプライムローン」と言った用語についても自分の言葉で話せるようになったと思います。 リーマン・ショックについてほとんど無知の状態で手に取りましたが、ストーリーが面白く、手に汗握りながら、ワクワクしながら一気に読み進めました。 知ってるようで知らない「リーマン・ショック」についてキャッチアップ出来ます。
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モーゲージ債: ローンをかき集めて証券化したもの.リスクとリターンを階層別に切り分ける サブプライム:劣位 誰かの人間の資産は誰かの人間の負債→モーゲージ債はこの負債をこねくり回して証券化 流動性が高まり効率性が生まれ負債を抱える側も低金利でローンを借りられるようになるという一...
モーゲージ債: ローンをかき集めて証券化したもの.リスクとリターンを階層別に切り分ける サブプライム:劣位 誰かの人間の資産は誰かの人間の負債→モーゲージ債はこの負債をこねくり回して証券化 流動性が高まり効率性が生まれ負債を抱える側も低金利でローンを借りられるようになるという一見するといい話 →経済の発展って「貸し借りの発展」なんだな 主人公のアイズマンは裏表がなく,ある意味”空気が読めない”ところがあるけど 他人に流されず,自分で考える力を持っているとも言える 金を貸す銀行側が正常な判断ができなくなることはある 少し前だったらスルガ銀行がいい例.返済能力が行き詰まる融資を見つけたらそれはいずれ弾けるバブルなんだなあ.歴史は繰り返す ブラックスワンにかけることは,痛みを伴う. モーゲージ債の保険(CDS)の保険料,プットオプションのロング ”欲に訴える手がダメなら,次は不安を煽る” なぜ格付け期間は爆弾見たいな債権に最高評価をつけてしまったのか ・格付けがザルであることを格付けさせる側(投資銀行)が見抜いてそそのかした ・消費者の信用度評価に用いるスコアがザルだった. 車の運転経験がゼロの人に,「この人は事故を起こしたことがない」とゴールド免許を発行する 見たいなスコアリング 具体的には出稼ぎのために移住してきた人(ローンを借りたことがないから当然ローンを焦げ付かせたこともない)に高い信用度をつけた. 意思決定で大事なことって「未知をなくす」ことだなあ こういうブラックスワンでチャンスを掴むには ・世の中は案外合理的ではないという認識(外見はまともでも中身が杜撰で付け入る隙があるものが存在する) ・人の話を鵜呑みにしない懐疑心 ・自ら真実に到達しようとする好奇心,執念,頭脳 ・その日が来るまでメンタル・フィジカル(資産)がダメージを受けることになろうともブラックスワンが来るまで耐え忍ぶ忍耐力と余力 が必要,それを行動に反映する大前提として「自分は無知である」という謙虚さが必要.傲慢になったらそこで終わり タレブみたいなひとがいっぱいでてくるし、みんな自分の行いが報われるまで物凄く「何か見落としているんじゃないか」と葛藤している。 ブラックスワンにかけるというのはその日が来るまでは報われない苦しみを避けられないらしい。 鶏小屋の鶏1000羽が「明日も餌をもらえる」と思っている中、自分だけ「明日は七面鳥にされる、今夜にでも逃げ出そう」と考えているように。 サブプライムの崩壊にかけていた人も終盤「金融そのものの崩壊」というリスクには振り回されたっぽい いくら保険を買ってもその保険を支払う能力が相手になければその契約は意味ないもんな ”投資銀行の経営陣が,自行には十分な流動性があるという時,それは例外なく,流動性がないことを意味する” →外見を取り繕うシグナリング 言葉だけじゃなくて行動でも 稀な事象ほど,発生確率が低く影響も小さいと誤解されがち. ー>誰も見向きもしなかったプットオプションが暴落を機にとんでもない価値を持つようになる. 筆者は最後に,買っても負けても莫大な報酬が支払われるウォール街のシステムを避難している 今回のシステムの崩壊にかけた人はもちろん,今回のシステムの崩壊に加担する側の人間も雇われ先から数千万ドルの報酬を得ている 多分その仕組みは今も変わってなくて,タレブのいうSkin in the gameではない,ということだろう. 頑張っても報われない世界もあれば頑張らなくても(成果が比例しなくても)勝手にお金が入ってくる世界もある そういう意味で世の中は公平に作られていないということをもっと早く知っておきたかった.
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難解な部分が多かったが、リーマンショック時に大成功を収めた各投資家のエピソードがかなり詳細に記されていたので非常に面白かった。 登場するそれぞれの投資家の個性の強さ・能力の高さは1級のものだった。
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