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まなざしのエクササイズ の商品レビュー

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2014/10/12

 「この本には、人間という被写体を、いろいろな方法で、いろいろな角度から撮影する方法が記されている」と著者が言うように、本書は7か国語に翻訳され、アメリカやイギリスでは大学の写真専攻の学生の教材として用いられている、ポートレイト(人物写真)を撮るための実践書だ。  ところが、ポー...

 「この本には、人間という被写体を、いろいろな方法で、いろいろな角度から撮影する方法が記されている」と著者が言うように、本書は7か国語に翻訳され、アメリカやイギリスでは大学の写真専攻の学生の教材として用いられている、ポートレイト(人物写真)を撮るための実践書だ。  ところが、ポートレイトという言葉に含まれる「あいまいな説得力と厳粛さ」を、先人たちの写真を例にとって著者が解説し始めたとたん、それは単なる技術論ではなく、写真を撮るために必須の「まなざす」という行為論になり、写真を読み解くための写真論となる。しかも、ロラン・バルトやベンヤミンなどを縦横無尽に引用しながら、写真とは何かを語る著者のまなざす地平は、写真技術の範囲を大きく逸脱しており、「表現」に関わるイノベーションを学ぶ意味でも、大いに示唆に富む。  写真を見る方法を知ると、その「世界」が変わる。この変化を「わかる」という。本書は「わかる」ための、隅々まで目配りのきいた分厚い招待状だ。

Posted byブクログ