禁蜜 の商品レビュー
切ない女心が忍ばされた官能物語
2011年の本格的な長編デビュー作『義母の艶香』(双葉文庫)から5作目にして初めて竹書房ラブロマン文庫から上梓された本作は、大学生の主人公(義息・19歳)と、その母(義母・32歳)、そして義母の妹(叔母・28歳)の想いが互いに交錯する、悩ましくも艶かしい作品に仕上がっている。 ...
2011年の本格的な長編デビュー作『義母の艶香』(双葉文庫)から5作目にして初めて竹書房ラブロマン文庫から上梓された本作は、大学生の主人公(義息・19歳)と、その母(義母・32歳)、そして義母の妹(叔母・28歳)の想いが互いに交錯する、悩ましくも艶かしい作品に仕上がっている。 サブタイトルの『義母と叔母とぼく』や、冒頭や中盤での妄想シーン、そして、初めて出会った13歳から現在に至るまでの、6年間もの長きに渡る主人公の想いなどからストーリーを追うと、メインヒロインは紛れもなく義母に見えるであろう。清楚で奥ゆかしい容姿と振る舞いはまさに女神という立ち位置である。しかし、主人公を求めるような言動も垣間見せ、想いも傾いているかのように写る義母には主人公の父親たる夫(長期海外出張中)がおり、そちらへの愛情が消えた訳でもない。 久方振りの再会以来、甥っ子の成長した姿に想いを馳せるものの、その主人公と姉(義母)の様子から指南役に回る叔母。実はこの叔母こそが物語の牽引役であり、もう1人のメインヒロインである。奔放で積極的な振る舞いから、主人公の筆下ろしに始まり、後半に出てくる2人のサブヒロン(主人公のバイト先の上司と同僚)への直接および間接的な導火線となり、最終的には身を引くべくお膳立てをするといった活躍振りである。ただ、2人のために恋慕の情を表に出すまいとしつつも所々で漏れてしまうところには健気な謙虚さをも垣間見せており、さらには意地っ張りな性格が邪魔している側面もあったりで何とももどかしい。想いを互いに「垣間見せ」ながらも、それぞれ別の理由や思惑から遠慮してしまう点では似ている優しい姉妹と言えるかもしれない。 こうした流れから本作は予想とは少し異なる方向で結末を迎える。王道的展開で成就した後で捻りを加えたかにも見えるため、その性急さや想いの移り変わりには蛇足感を覚えるかもしれないが、「その後」を見据えた冷静さと現実感を湛えた、女流作家ならではの落としどころと見て取ることもできよう。結ばれる幸せもあれば、結ばれない幸せもあり、そのために結ばれる、ということか。 爆ぜそうな想いを発散できない悶々とした雰囲気が全体を覆う中、後半に見られた2人のサブヒロインにはコミカルな役回りをも与えており、何より官能描写が、そのシチュエーションも含めて、総じて淫猥で申し分無いことから、少なくとも本作は見紛うことなき上質な官能小説であり、最早「元AV女優」との肩書きは不要な作者であると断言したい。
DSK
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