三姉妹とその友達 の商品レビュー
スマホ利用率を0%にするために立ち上がる4兄弟という、題材的にはちょっと面白そうだが、書き方次第では説教臭くもなりそうだなと思ったが、嫌な予感が的中すると共に、戯曲風の所謂実験的書き方というヤツなのだろうが、ハッキリ言ってわかり難い。
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ポツポツパラパラと降ってくる小雨みたいな小説。 ゆるやかに連なるコトバは、それなりの心地よさをもってるけど…。
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+++ 高度なコミュニケーション社会の発達の行く末に失望し、失われた人間性を取り戻すため、立ちあがった四兄弟。大舞台の幕が今、上がる…夢想家の長男、実務肌の次男、兄に忠実な三男、ミステリアスな四男―彼らが語るのは、脱力と失笑を誘う、ただの世迷い言か?それとも、人と人とが本当につな...
+++ 高度なコミュニケーション社会の発達の行く末に失望し、失われた人間性を取り戻すため、立ちあがった四兄弟。大舞台の幕が今、上がる…夢想家の長男、実務肌の次男、兄に忠実な三男、ミステリアスな四男―彼らが語るのは、脱力と失笑を誘う、ただの世迷い言か?それとも、人と人とが本当につながる夢のような世界なのか?戯曲を模した小説、その小説のノベライズという、まさかの手法で生み出した、二つのトゥルーストーリー。隠れた名作「この世の、ほとんどすべてのことを」も友情収録。 +++ この世の不条理とか理想の世界とか、著者には思惑があるのかもしれないが、わたしにはよく解らなかった。好き嫌いが分かれる趣向の作品かもしれない。他人によってさまざまに読み解くことができる、とも言えるかもしれないが、わたしはもっとストレートな物語の方が好みである。著者はきっと頭がいいのだろうな、と思わされる一冊である。
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個人的には中原昌也・青木淳悟・福永信という芥川賞未受賞作家の三人こそが、ここしばらく日本文学の先頭を走っていると思っている。そんな福永信の最新作はもちろん問題作。 「スマートフォンを海へ投げ捨て、貝がらを耳にあてろ!」という謎の帯文が、ふざけているようで実のところ中身のすべてで...
個人的には中原昌也・青木淳悟・福永信という芥川賞未受賞作家の三人こそが、ここしばらく日本文学の先頭を走っていると思っている。そんな福永信の最新作はもちろん問題作。 「スマートフォンを海へ投げ捨て、貝がらを耳にあてろ!」という謎の帯文が、ふざけているようで実のところ中身のすべてであるという不条理小説の極み。しかし普通のストーリー小説ではないので、ネタバレとかそういう問題は一切ない。むしろここには、物語を語りながらも、物語とは別の面白さしかない。 いや物語はここにも確かに存在するのだが、あるのはいわゆる物語の面白さではなく、それを意識的に破壊することによって発生する怪しい熱のようなものだ。ここにある物語的要素は、破壊されることを前提とした素材であり燃料であって、それ自体を目的として作り上げられたものではない。いわば「道具としての物語性」ということになるだろうか。物事にはそういう使い方もある。 感覚的に言えば、「何ひとつ有意義なことは言っていないのに、すべてを言っている小説」ということになるが、「のようなふりをして、やっぱり何も言っていない小説」とつけ足すのが本当かもしれないし、さらに「のようでいて、やっぱり世界全部を言い尽くしている小説」と、もひとつ足して言い切りたい欲望にも駆られるこの無限ループ。「あるようで、ない。ないようで、ある」そんな宙ぶらりんな状態を面白いと感じる向きは、ぜひ読むべき一冊。もちろん二冊でも三冊でも百冊でもなく一冊。 表題作「三姉妹」とそれに続く「そのノベライズ」という作品がワンセットで「戯曲+その小説版」のような形をなすトリッキーな構成。明らかに二度手間に見えるが、形が変われば中身は変わる。思ったよりだいぶ変わる。もちろん変わらない部分もあるが、だからこそ変わって見える部分が浮き彫りになるようでもあり、気になって仕方なくなってくる。 となると、そのいかにも狙いすましたような枠組みに意識を奪われがちであるが、単なる形式主義とは異なり、ワンフレーズ単位の面白さ、その言葉のつなぎ方のセンス、そしてそういった言葉の並びから自動生成される物語の一見スムースに見えてまったく捉えどころのない「騙し絵」のような動きなど、やはりこの作家は中身の精度がすこぶる高い。そう、福永信の小説は、いつも騙し絵のようだ。 ちなみに、巻末に「友情収録」されている「この世の、ほとんどすべてのことを」という小品も、いかにも「ちなみに」といった佇まいで、ひらがな増量で軽く書き飛ばした童話のようなふりをしていながら、その実とぼけた顔してババンバンな逸品。あるいはこちらのほうが、福永信の凄さを瞬間的に感じられるかもしれない。
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