幸せに暮らす集落 の商品レビュー

ジェフリー・S.アイリッシュ【著】

2023/05/28

米国の高齢者住宅に住む知人が、ジェフリー氏の講演を聴いて感動したとのことから、読了。宮本常一氏の忘れられた日本人への言及が多い理由が、氏の見つめる眼差しの細やかさから伝わる。本中で、シリコンバレーで育ち、九州で暮らすジェフリー氏の少しの迷いが、とても素直で良い。皆、常に何かを探して生きているけれど、最期はこの土喰集落の皆さんのような平安がベストなのだろう。

2013/06/21

平均年齢77歳、27人の集落で、数値上はいわゆる「限界集落」だけど、そんな見られ方は迷惑だと著者は言う。かくいう著者はアメリカ人で、その集落に外部から入っていった。
日本のよき地域コミュニティは崩壊した、みたいな言い方をするけれど、そんな他人事のような表現ではなくて、崩壊させた、あるいは崩壊を傍観したのだなあと思うし、そして残っているこうした所に飛び込んでいく方法もある。しかし著者は、消えかかっているものに無理やり人工呼吸器をつけて生かすのも不自然だ、という。文中でも、櫛の歯が欠けるように登場人物が亡くなっていく。
それでも。近い将来消えさるとしても、この集落で起こっている日々は、どうみてもタイトル通り幸せな暮らしで、果たしてこれらを棄てて、何が欲しかったんだったかな、と思わざるをえない。