ヒーローから転職した俺の使い魔な生活(1) の商品レビュー
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たまにこんな大穴があるからライトノベルはやめられない。 かつて世界を救った暗殺ヒーロー・犬斗と、異世界から捨て石として送り込まれた魔法少女・カトリーナが、互いの孤独を知りながら共に戦う話。流行りの説明的長文タイトルであり、俺TUEE系やハーレムを連想させるが、そんなことはない。思い出すのは平井和正「サイボーグ・ブルース」だ。孤独なヒーロー。 かつて世界を混乱に陥れた暗殺者がいた。どこにでも瞬時に現れ、世界中の有力な指導者を暗殺していった。誰もが世界の終わりを感じ、死を意識した。 一人の少年がいた。彼には父がいた。兄がいた。かつてのそんな光景をもつ少年に残っているのは復讐心だけだった。復讐する。ただ作業する。世界に恐怖を感じさせた暗殺者はいつの間にかいなくなっていた。すべてが終わった時、少年には家族も仲間もいなくなっていた。彼は執着をもたなくなった。 この設定だけでご飯三杯はいける。 そんな過去をもつ高校生・犬斗がいきなり謎の化け物の襲撃の場に立ち合う。隣には自分を兄のように慕ってくる女の子。彼女を逃がすために立ち回る犬斗。突然現れる魔法少女。助太刀。可愛い魔法少女に「……私と一緒に、戦って」などと言われたら、手を出さざるを得ないでしょう。 だが厨二病的ラッキーでは終わらない。主人公の過去を、未練を、未熟さを、覚悟のなさを、敵であるはずの者が指摘する。異世界から来た王国側のカトリーナも、連合側のラプター将軍も、それぞれの立場を知り覚悟を自覚した上で戦いに挑んでいる。自身の知識を役立てるのが嬉しくて、無邪気に無謀な戦いに足を突っ込んだ犬斗とは違う。 ストーリーは最後まで盛り上がる。犬斗が再び力を手に入れて、カトリーナと共に戦う決意をするシーンでは身震いした。 カトリーナの役目は嫁ではない。主人公を写す鏡であり、真っ直ぐなものであり、戦友であり、守りたい者でもある。 登場人物は全員憎めない。根っからの善人も悪人も己の立場を理解していない者もおらず、人情味溢れながらも甘くない。粋がある。謎の女性・美猫も絶妙なスパイスとなっている。 イラストは可愛い。購入した理由は、絵師がねこにゃんだったからというのもある。魔法少女っぽい軍服姿のヒロインは可愛いし、変身後のヒーローもかっこいい。 次巻への繋ぎを作り、一冊で綺麗に終わらなかった点はマイナスかな。早く続きを、いや、待ちきれないので著者の別作品を読みます!!
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