幕末の天皇 の商品レビュー
松岡正剛曰く「日本人の必読書」。「日本人は信長・秀吉・家康の話をしていれば日本を語っているつもりになっているようなところがあるけれど、その3人に匹敵するのが、藤田さんが指摘した幕末の光格天皇・孝明天皇・明治天皇なんです」との事。両者を匹敵するとし、比較対象するのもどうかと思うが、...
松岡正剛曰く「日本人の必読書」。「日本人は信長・秀吉・家康の話をしていれば日本を語っているつもりになっているようなところがあるけれど、その3人に匹敵するのが、藤田さんが指摘した幕末の光格天皇・孝明天皇・明治天皇なんです」との事。両者を匹敵するとし、比較対象するのもどうかと思うが、戦国武将に比べると確かにマイナーではあり、このような研究で幕末・維新史の新たな視点としてフォーカスした事の意義は大きい。私自身、平成の代替わりでの200年ぶりの上皇誕生で、光格天皇が脚光を浴びて興味を持ち(というかそれまで存在すら殆ど知らなかった)、本書を手にしたという「にわか」でしかないし。 ただし、「織田がこね、豊臣がつきし天下餅、食うは徳川」と戯れに言いますが、それに準(なぞら)えれば、光格が王権の復活を宣言し、孫の孝明がそれを王政復古のお餅にしたところを、すべて明治がパクッと食べたということになる。」この説明もそう言えなくもないが、少々無理があるような気もする。孝明天皇はそもそも公武合体派だし、明治天皇にも権力者になろうとする意思や野望があったとは思えない。その点では天下を虎視眈々と狙い、戦を仕掛けた豊臣や徳川とは異なるであろうし、そもそも世襲権力である点も大きく異なるように思える。 尚、本書で最も読み応えがあるのは、やはり日米通称修好条約の勅許を巡る、幕府と朝廷のやりとりである。ここが時代の転換点だったとつくづく感じさせられる部分である。
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幕末の天皇 藤田覚 講談社学術文庫 2013年02月12日 奈良大学図書館 ISBN978-4-06-292157-2 第一章 江戸時代の天皇 第二章 光格天皇の登場 第三章 天皇権威の強化策 第四章 鎖国攘夷主義の天皇 第五章 江戸時代最後の天皇 http://bookc...
幕末の天皇 藤田覚 講談社学術文庫 2013年02月12日 奈良大学図書館 ISBN978-4-06-292157-2 第一章 江戸時代の天皇 第二章 光格天皇の登場 第三章 天皇権威の強化策 第四章 鎖国攘夷主義の天皇 第五章 江戸時代最後の天皇 http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062921572
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江戸時代最後の天皇、孝明天皇。 そっから遡って祖父の光格天皇の話からスタートして なんで大政奉還、公武合体、尊王攘夷、安政の大獄などなど 日本全国揺るがす激動の時代になったのか 大名と幕府と朝廷と天皇のその時の在り方はどうだったのかを 分かりやすく書いてある本。 しかも明治時代ス...
江戸時代最後の天皇、孝明天皇。 そっから遡って祖父の光格天皇の話からスタートして なんで大政奉還、公武合体、尊王攘夷、安政の大獄などなど 日本全国揺るがす激動の時代になったのか 大名と幕府と朝廷と天皇のその時の在り方はどうだったのかを 分かりやすく書いてある本。 しかも明治時代スタートした時の 幼い天皇はなぜ決まったのかとかも。 まぁはっきり言えばもうグチャグチャなわけで 裏切りと裏切られの連続なわけ。 朝廷vs幕府で盛り上がってるけど肝心の天皇は 放置されながら名前だけ使われてる始末。 民衆はもう幕府はあてにならねー! 天皇万歳イェイイェイなわけで そこを朝廷がうまいこと利用したり失敗したり。 まぁ今現在に至る天皇の儀式等は ほぼこの光格天皇が復活させようぜ! という感じであれよあれよと 御所も儀式も復活したわけで。 その行動力はすさまじいと思う。 もう徳川さんちの言うこと聞いてりゃええねん時代に 終止符を打ったと言っても過言ではないし もちろん飢饉とか海外からの圧力とか色々あるわけだ。 いやはや、なんだか幕末って 新選組や明治政府の方にスポット当てがちけど これはとても読んでよかった。
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光格天皇をここまで掘り下げた本は研究書・論文以外ではないと思う。 孝明天皇からその後の皇室の姿を規定したともいえる光格天皇にさらに興味が湧いた。良質の文庫。
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江戸も幕末も詳しくないのだが、とても読みやすかった。 幕末の天皇となると、孝明天皇が思い浮かぶが、その祖父・光格天皇から書き起こされているところが興味深い。 形式だけでない権威となり得た経緯が面白かった。
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著者の藤田覚先生が以前、2011年明治維新史学会秋季大会の講演中に「近世幕藩体制に天皇を如何に位置付けるか」ということを話されておりました。 この江戸時代の「天皇」を考える上でも、欠かせない一冊だと思います。 講談社選書メチエで出版された時期が、昭和天皇崩御の5年後ということも...
著者の藤田覚先生が以前、2011年明治維新史学会秋季大会の講演中に「近世幕藩体制に天皇を如何に位置付けるか」ということを話されておりました。 この江戸時代の「天皇」を考える上でも、欠かせない一冊だと思います。 講談社選書メチエで出版された時期が、昭和天皇崩御の5年後ということもあり、歴史学の世界でも「天皇」について考える流れが始まった時期ともリンクしますね。 主な内容について。 本書の問題関心は、幕末の孝明天皇が頑ななまでに通商条約を拒絶するなどの「政治化」を果たしたのか、という点にある。 要は、いつから江戸時代の天皇・朝廷と幕府の力関係が変化したのか。 そこで、著者が注目したのが光格天皇の頃である。 光格天皇の代には、 「神事や儀礼の再興・復古が集中的に」行われ、「天皇・朝廷の神聖(性)と権威を強化する試みが、主体的にかつ執拗に続けられ」たとされる。 また、「朝廷の権威を求める当時の客観情勢とあいまって、政治、思想、宗教などのさまざまな分野で天皇の存在がクローズアップされ、その政治的、思想的、宗教的権威が強化された」としている。 この光格天皇の時から、「主体的」な天皇が登場したのである。(本書p.p.255〜256) 光格天皇が何故、「天皇権威」の上昇にこだわったのかというと、著者は光格の生い立ち(閑院宮家に生まれ、皇位につく)に触れ、皇統から離れた傍流から即位したために「軽んじられる」天皇と記載された史料もあることから、 傍流出身であるが所以の行動と考えられている。 一般的に光格天皇について知られている尊号事件もこの頃の「天皇権威」上昇にまつわる事件として取り上げられている。 この「天皇権威」が仁孝、孝明と受け継がれ、 幕末の「政治化」された天皇の登場にいたるとされている。 本書の内容は、近年では教科書『詳説 日本史B』などにも取り上げられている内容なので、ご存知の方も多いように思います。 それだけ本書が一般的にも評価されていると言えるのです(幕末部分は、著者の専門時期でないため、この場では割愛)。
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幕末の天皇、というとおそらく孝明天皇を思い浮かべる人が大半だと思います。 大河ドラマをはじめとする幕末ものにも孝明天皇は登場します。 強硬に攘夷を唱え、公武合体派にも尊皇攘夷派にも推戴されかつ利用された天皇。 ですが、そこまでの過程はほとんど知られていないのではないでしょうか。 ...
幕末の天皇、というとおそらく孝明天皇を思い浮かべる人が大半だと思います。 大河ドラマをはじめとする幕末ものにも孝明天皇は登場します。 強硬に攘夷を唱え、公武合体派にも尊皇攘夷派にも推戴されかつ利用された天皇。 ですが、そこまでの過程はほとんど知られていないのではないでしょうか。 そこに登場するのが孝明天皇の祖父・光格天皇です。 幕末の尊皇攘夷運動の発端はこの人にあると言ってもいいくらいの天皇です。 外国船が日本沿岸に頻繁に現れ、ついにペリーがやってくる。 アヘン戦争の衝撃を受け、日本は異国船打払令を撤回、 止むなく開国をしていく。 と始まる幕末史。通商条約締結に伴い、ついに幕府は条約締結の勅許を天皇に求めます。 ですが、ちょっと待ってください。 幕府は自ら禁中並公家諸法度を制定して朝廷の政治権力を制限し、 国政のすべてを握っていたはずです。 なのになぜこの時は勅許を求めたのか。 朝廷のことを気にする必要があっのか。 その下地を用意したのが光格天皇なのです。 そこまで影響力のあった人物であるにも関わらず、 彼について触れた書籍類は非常に少ない。 これはなぜなのでしょうか。 この本はそんな光格天皇にスポットを当て、 彼の行動から幕末の政治史がどのように動いていったのか、 朝幕関係がどのように推移していったのか、 その流れを詳しく掘り起こしています。 にひんじんとして、光格天皇の事績はぜひ知って欲しい。 広く読まれて欲しい一冊だな、と思います。
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江戸時代は徳川幕府が権力を握っていた時代で、天皇には力がなかったはずだが、なにゆえ、幕末にあのような求心力をもったのか。これは幕末史に興味があるぼくにも興味深いテーマである。藤田さんによれば、そもそも将軍職をはじめ諸大名にしても、天皇から形式上の官位を与えられていたそうだ。将軍も...
江戸時代は徳川幕府が権力を握っていた時代で、天皇には力がなかったはずだが、なにゆえ、幕末にあのような求心力をもったのか。これは幕末史に興味があるぼくにも興味深いテーマである。藤田さんによれば、そもそも将軍職をはじめ諸大名にしても、天皇から形式上の官位を与えられていたそうだ。将軍も大政を委任されているのである。形式的とはいえ、天皇あっての将軍であった。そして、本書では明治天皇の曾祖父である光格天皇のころから、かつての宮廷行事や御所の再建等をめぐり、天皇の主張が強くなっていったらしい。光格天皇は復古の精神に燃えていたのである。そして、幕府の力が衰える中、光格天皇の孫である孝明天皇は、頑迷に攘夷を主張することで、尊皇攘夷派の中心となっていった。それは、朝廷内の権力闘争とも結びついていた。あの安政の大獄といわれるものも、幕府と朝廷の公武関係を脅かす攘夷派に対する幕府側からの反撃だったのである。やがて、朝廷は攘夷派の中心となっていくが、その中で生身の天皇はむしろ小さな存在となっていく。つまり、天皇制の一人歩きである。孝明天皇毒殺説が出てくるのはその現れと言える。本書は、一般向けとはいえ、一々著書や論文を引いて説の出所を明らかにする。本書もまた、専門外の人が読んでも楽しめる良著である。
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