緋文字 の商品レビュー
最後まで読み、「辛い」と声が出た。結局、牧師と神との間で交わされる神聖な対話や関係の前では、子供を産んだヘスターは無力だ。森での美しいヘスターも歯が立たない。牧師は、「ヘスターの苦しみを痛いほど知っていた(だからこそ辛かった!)、他人に罪人であることを隠して苦しんだ!、死ぬ前に罪...
最後まで読み、「辛い」と声が出た。結局、牧師と神との間で交わされる神聖な対話や関係の前では、子供を産んだヘスターは無力だ。森での美しいヘスターも歯が立たない。牧師は、「ヘスターの苦しみを痛いほど知っていた(だからこそ辛かった!)、他人に罪人であることを隠して苦しんだ!、死ぬ前に罪について告白するのだ!(その直前に壮大な説教をして大衆を心酔させている)、ヘスターに自分達は永遠に結ばれないと彼女を戒める!」という論理を展開していく。牧師は、神の采配で、迷いから救われたという。宗教的には勝利したのだろう。でも、ヘスターは。。。神との誓いを優先して、美しい信仰心を讃えて先に死ぬ牧師。残されたヘスターは、複雑な思いを抱えながら生きていくようだ。妊娠、出産、子育て全てをたった一人でやり遂げたヘスター。彼女には、牧師のような自己陶酔的な宗教的正義の境地には至れなかった。観念的な世界だけで完結できない日常がある。そのかわり、ヘスターには、パールがいる。女性らしい美しさを、隠し否定して生きなくてはならなかったヘスターだが、娘には美しい衣装を着せて育てた。「成熟した未来に、神聖な愛が人を幸福にするものだということを、うまくいった実例として、証明できる人」が、パールであればよいな、と思う。最後に、、、上記に書いたような、こんな単純な話ではない小説だと思いました。一気に短時間で速読したので、大切なポイントがごっそり抜けてる気もします。パールや緋文字の意味など、気になりながらも、深く分析することなく、読み終えました。後日、改めてじっくり読みたいと思う作品となりました。
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作品は1850年に発表されたものだが、舞台はさらに200年も遡ったアメリカのニューイングランド。 そこはピューリタンの町で、当然ながら厳格な信仰が守られているコミュニティだ。 タイトルの緋文字とは、そこで姦通の罪を犯した女性への罰として、その衣服の胸のところに常に着けるように定め...
作品は1850年に発表されたものだが、舞台はさらに200年も遡ったアメリカのニューイングランド。 そこはピューリタンの町で、当然ながら厳格な信仰が守られているコミュニティだ。 タイトルの緋文字とは、そこで姦通の罪を犯した女性への罰として、その衣服の胸のところに常に着けるように定められた緋色のAの文字のこと。 その女性は、町で尊敬を集めている牧師と関係を持ち子をなしてしまうが、彼女には夫がいたため、罪とされた。一方牧師の方はその関係がバレずにいた。 後から町にやってきた夫は、医師に身をやつし町の中で一定の位置に居座るようになるが、二人に執拗に復讐をしようとしていく。 キリスト教をベースにしているため、罪とか罰という観念が、現代から見ると大きく異なっている気もする。正直、そこまで苦しまなくとも、とさえ。 しかしそれが当時の空気感であり、それがいわゆる「世間」であったということを思えば、一概に昔話にしてしまうこともできない。 よくも悪くも、一定の規律やルールを定めずにはおれない、そしてそれに縛られることを自ら望むのが人間ということか。 また、物語の後半でも描かれるのだが、罰を受けるがゆえに聖性を帯びてくるという展開も、キリスト教的なものと言えまいか。 しかしこの論理は極めて危険なものであるということは、歴史が示しているとおり。それをあえて19世紀半ばに描くという点は、もう少し深掘りできることかもしれない。
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米文学史の授業で初めてその名を知った、ホーソーンの代表作。 授業でのあらすじの説明から、なんて暗い話を19世紀に書いたのか、疑問でならなかった。 その疑問は解けてはいないが、ヘスター・プリンの強さと、不倫相手の弱さと苦悩を描かずにいられなかったのだろうと推察した。 それにしても、授業であらすじを紹介されていなければ、あの牧師が不倫相手だということになかなか気づけなかったんじゃないかと思う。 授業では、牧師は苦しみ抜いて最後は死ぬが、その死にはまったく意味がないと先生が言っていた。その通りだとも思うし、そこまで言ってはかわいそうとも思ったが、結局は牧師という公職(?)についていながら、近くでへスターを助けるわけでもなく、ただただ自己満足の懺悔をしただけなんだから、やはり先生の言う通りなのだろう。
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私に宗教の観点が欠けているので、 牧師の苦しみがもどかしく感じる。 そこまで罪の意識に苛まされるのだったら手を出すなと。
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税関の部分は、だらだらと長く続き、読みにくい。しかし、『私』のセイラムの地への愛着は郷愁を喚起し、寂れた街で過ごす人々もまたセイラムの地に縛られているのかと考えると哀愁を帯びて感じられ、改めて読み直すと共感を覚えた。地縁的なものに敏感な人には、通ずるものがあるのではないか。 本編は、ストイックな牧師の姿が印象的だった。三角関係とそれぞれの変化は解るが、パールの役割や緋文字のAについては消化不良に終わった。
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愛と苦悩 (実際に読んだのは角川版) 古典の名著といえば、そのうちの一冊にホーソンの『緋文字』があげられるだろう。 なるほど、清教徒入植間もないアメリカで、姦通の罪で晒されたへスター、その夫、姦通した相手の若い牧師のそれぞれの心のうちを巧みに描いている。 また、罪の子、パールの無...
愛と苦悩 (実際に読んだのは角川版) 古典の名著といえば、そのうちの一冊にホーソンの『緋文字』があげられるだろう。 なるほど、清教徒入植間もないアメリカで、姦通の罪で晒されたへスター、その夫、姦通した相手の若い牧師のそれぞれの心のうちを巧みに描いている。 また、罪の子、パールの無邪気な姿が、その無邪気さのために光源となってそれぞれの姿に影を作っている。 たしかに、たしかに文学作品としては素晴しいのであろう。 ただ、私の感想はそうではない。 まずは『緋文字』の序として『税関』という物語が併せて掲載されているのだが、これが淡々として、43頁まで読むのに、酷く苦労した。 ここで少し面白くなってくるのだが、61頁まで、またこの淡々に付き合わされる。 挫折しかけた。本当に。 さて、物語がやっと始まってくるのだが、一冊読み終えるのに一週間かかってしまった。 読後は何とも言えぬ不快感。 いや、物語自体は希望ある終わりかたではある。しかし......。 鴎外の『舞姫』に似たような展開だと思った。 内容が類似しているというのではない。 男、姦通した側のディムズデイルの情けなさに心底腹が立ったのだ。 へスターが相手の名前を明かさず、罪の証を胸につけ、さらし者になり、罪の子を育て上げる強さに対し、ディムズデイルは私は罪を犯したと自らの救いを求めるばかり。 挙げ句の果てにその罪の重さに堪え兼ねて告白をするはいいが、そのまま天に召される。 何とも勝手な御仁である。 神よ、私を許したもう、そればかりだ。 多少はへスターに対する気持ちや、自らの子を愛するそぶりも見せるが、結局彼が悩んでいるのは自分のため。 へスターやパールに対してではないのだ。 それを美辞麗句で飾り立て、「苦悩」という自己満足を完結させる。 それに対し、裏切られたことで復讐を考える老博士のほうがよっぽど「悪」に徹していて好感が持てる。 また、へスターの強さは「愛」故の行動なのだろうと思われる。 二人とも「愛」のために選んだ道が異なっただけで、己の身勝手さを理解している。 この三人とも紛うことなき人間の姿であるといえば、確かにその通りだ。 どこに感情移入するかで物語はまったく異なる様相を見せるだろう。 それが名作たる所以なのかもしれない。
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