散文 の商品レビュー
縦横無尽に、あるいは多彩に(悪く言えば無節操に)行う詩作と違い谷川俊太郎は散文ではかなりおとなしく、律儀にかつ誠実に沈思黙考を続けてその成果を「散文」にする。そこから見えてくるのは表層的な過激さを謳うのではなく、常に自分が信じられることを信じそれに殉じようとする強い意志と精神力だ...
縦横無尽に、あるいは多彩に(悪く言えば無節操に)行う詩作と違い谷川俊太郎は散文ではかなりおとなしく、律儀にかつ誠実に沈思黙考を続けてその成果を「散文」にする。そこから見えてくるのは表層的な過激さを謳うのではなく、常に自分が信じられることを信じそれに殉じようとする強い意志と精神力だ。この「粘り」があるからこそ彼は詩作を続けられてきたのだなと脱帽してしまう。だが、その気力がどこか「読ませる」文芸としての旨味・色気をもたらすことを邪魔しているとも思う。ひと口で言えば『散文』は渋すぎて、滋養はあるが甘ったるくない
Posted by
- 1