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康煕帝の手紙 の商品レビュー

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2013/02/05

もとの本は中公新書として1979年に出ている。大学に就職したあとだから、ぼくもすぐに買ってもっていたが、なぜかなくしてしまい、ずっとさがしていた。しかし、ネットでも古書店でもみつけられず、あきらめていたところ、この度装丁だけでなく、関連論文、資料が増補されて出版された。実際、本書...

もとの本は中公新書として1979年に出ている。大学に就職したあとだから、ぼくもすぐに買ってもっていたが、なぜかなくしてしまい、ずっとさがしていた。しかし、ネットでも古書店でもみつけられず、あきらめていたところ、この度装丁だけでなく、関連論文、資料が増補されて出版された。実際、本書を本屋で見かけたときは、懐かしい昔の友人に出会ったような気持ちだった。康煕帝は、清朝の黄金時代を築いた最初の皇帝で、本書はその皇帝が3度のモンゴル遠征に出た際に、最も愛する皇太子に送った情愛あふれる手紙(満州語)を中心に書かれている。康煕帝は、遠征の途次、人々の暮らし、土地の肥沃度、馬の善し悪し、ウサギや雉などの獲物の状況を細かく、皇太子に報告している。敵ガルダンを追う中で、人々が動揺したときには毅然とした態度をとる一方、ガルダンの消息がつかめない状態でのあせりも書面にしたためる。また、自分はテントの中で苦労して手紙を書いているのに、皇太子から手紙がなかなかこないことへのいらだち、よけいなものを送るなとか、母である皇太后への気遣いも伺われる。こうした遠征の途中での手紙のやりとり、もののやりとりにはそれを運ぶ人がいたわけで、馬を走らせる人々もたいへんだったろうと推察できる。この康煕帝の愛する皇太子は、他の兄弟たちが従軍し官位を与えられ、皇位継承権を得たことで、不幸な最後をとげることになるのである。もとになった資料は台湾から出ているが、岡田さんはその日付の乱れを本書で訂正している。専門外の人間が読んでも楽しい本である。

Posted byブクログ