世界史の中のパレスチナ問題 の商品レビュー
安易に古代の物語と現代を接続せず、複雑で解決の難しい現状が如何にして生まれてしまったかを丁寧に説明した良書。 アラブの人々はなぜ諸悪の根源みたいなイギリスではなくアメリカを敵視するのか不思議だったが、イギリスは全方位に対して酷いのでユダヤ人からも恨まれている、と書かれていて、なる...
安易に古代の物語と現代を接続せず、複雑で解決の難しい現状が如何にして生まれてしまったかを丁寧に説明した良書。 アラブの人々はなぜ諸悪の根源みたいなイギリスではなくアメリカを敵視するのか不思議だったが、イギリスは全方位に対して酷いのでユダヤ人からも恨まれている、と書かれていて、なるほど…?となった。
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現在のハマスとイスラエルの衝突について理解を深めたいと思い読んでみた。どうしても宗教問題として見てしまいがちだったが、根本は領土問題であること、そのきっかけはオスマン帝国の滅亡や植民地支配を望むイギリスの三枚舌外交であることに加え、もともとユダヤ教徒はヨーロッパにおいてキリスト教...
現在のハマスとイスラエルの衝突について理解を深めたいと思い読んでみた。どうしても宗教問題として見てしまいがちだったが、根本は領土問題であること、そのきっかけはオスマン帝国の滅亡や植民地支配を望むイギリスの三枚舌外交であることに加え、もともとユダヤ教徒はヨーロッパにおいてキリスト教徒からも排斥や差別を受け、自国からユダヤ教徒を追い出したい人たちがシオニズム運動を支持することや、アメリカが911以降始めた戦争により広めたイスラモフォビアもこの問題の泥沼化の要因の一つであることなど、結局大国やヨーロッパの国々にも大きな責任がある問題であるということが理解できた。
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2013年発行の新書。イスラエルとパレスチナが抱える長年にわたる拗れた関係性を、ユダヤ/イスラム/キリストという3つの一神教の成立、十字軍、近代以降の西欧諸国の中東地域の植民地支配、第二次大戦以降のシオニズム運動の勃興、イスラエル建国、3次にわたる中東戦争、湾岸戦争、21世紀初頭...
2013年発行の新書。イスラエルとパレスチナが抱える長年にわたる拗れた関係性を、ユダヤ/イスラム/キリストという3つの一神教の成立、十字軍、近代以降の西欧諸国の中東地域の植民地支配、第二次大戦以降のシオニズム運動の勃興、イスラエル建国、3次にわたる中東戦争、湾岸戦争、21世紀初頭のアラブ革命までを俯瞰。 あまりにも細かく複雑なので一読しただけだと関係性が理解できない。Kindleハイライトしまくって、何度か読み返して理解していく感じ。 2013年の本なので、アフガニスタンにおけるタリバンの政権掌握、シリア内戦の激化、トランプ政権時のアメリカの対イスラエル外交政策の変化、といった最近の事象はもちろん書かれていない。
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・そもそもイスラエルが出来るずっと前から、アラブ人はイスラエル教徒だけではなく、中東地域ではユダヤ教徒やキリスト教徒と共存が出来ていた。ナショナリズムにより排外主義が盛んになったのは近世、近代になってから。 ・反ユダヤ主義がはびこる原因は、福音書にイエスが磔にされることを望んだの...
・そもそもイスラエルが出来るずっと前から、アラブ人はイスラエル教徒だけではなく、中東地域ではユダヤ教徒やキリスト教徒と共存が出来ていた。ナショナリズムにより排外主義が盛んになったのは近世、近代になってから。 ・反ユダヤ主義がはびこる原因は、福音書にイエスが磔にされることを望んだのがユダヤ人の民衆だと書かれているから。 ・レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐は、ユダヤ教徒の儀式である過越祭を描いている。 ・イスラム教とユダヤ教は共通の祖としてアブラハム(イブラーヒーム)を尊敬している。両方ともアブラハムを預言者として重視している。 ・ユダヤ人がキリスト教徒から差別されるようになったきっかけは十字軍の遠征。 ・オスマン帝国が領国内の外国人に与えた特権、カピチュレーション(領事裁判権、租税免除など)は、最初強国であるオスマン帝国が弱国のフランスに恩恵的に与えられたものだったが、後にオスマン帝国が衰退していくと、カピチュレーションは西欧諸国によるオスマン帝国に対する不平等条約に変質した。1858年に締結された日米修好通商条約のひな型もカピチュレーションに基づくものだった。 〈帝国主義時代〉 ・強大国が弱小国を支配するにはそれを正当化する理由が必要だった。文明化の使命という考え方が植民地支配を正当化するものだった。 ・ヨーロッパでは人種主義が登場する。その中でもっとも暴力的な表現が反ユダヤ主義。ロシアで国家が介在してユダヤ人への組織的な差別、迫害が発展しユダヤ人虐殺が行われるようになった(ポグロム)。 ・フランス革命以降、ヨーロッパの国々でユダヤ解放令が出されていった。封建制から資本制へと移行したということ。個人を身分で縛るより身分制を廃止して自由な労働力を確保しようとする観点からユダヤ人解放が進んだ。 ・ユダヤ人はそれぞれの国家においてより良き国民になろうとして改宗してキリスト教徒になろうとした者もいた。しかし、ユダヤ人は改宗しても所詮ユダヤ人であり続けるのだという人種主義的な考え方が広がる。ユダヤ教徒について、社会進化論や人種論、優生学などの疑似科学が広まり「ユダヤ人」は人種としてみなされるようになった。 ・ポグロムを契機にして起こったのがパレスチナへのユダヤ人移民だった。 ・シオニズムは19世紀ヨーロッパ、とりわけロシアていこくのナショナリズムの影響を強く受けている。 シオニズムはポグロムのような反ユダヤ主義の広がりに対するユダヤ人ナショナリストの民族主義的な防御反応である。 ・第一次世界大戦でのオスマン帝国の敗北と崩壊が、この地域の政治秩序を根底から変えた。 ・第一次世界大戦においてのイギリスの3枚舌外交。
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ユダヤ人の2000年来の思いがあり、大国の思惑が行きかい、今となっては解けないほどに複雑な問題となってしまった。とされているが。 しかし、己の中に理由があればどんな行為も正当化出来る、の超大きなお話しにしか読めませんでした。 単純に行った事のみを考えれば、許されるわけがないでしょ...
ユダヤ人の2000年来の思いがあり、大国の思惑が行きかい、今となっては解けないほどに複雑な問題となってしまった。とされているが。 しかし、己の中に理由があればどんな行為も正当化出来る、の超大きなお話しにしか読めませんでした。 単純に行った事のみを考えれば、許されるわけがないでしょう。え、コレ、許されているの?オカシイデショ。 しでかした事に対する言い訳がクソ長い。私の感想は、それだけです。
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イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の宗教、言語のこと、色々と複雑。 イギリスの3枚舌に驚いた。イギリスの責任は大きいと思った。 パレスチナ問題、複雑すぎて、解決は難しいと再認識。。。
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パレスチナ問題は解決するのが難しいんだろうけど、問題自体を深く理解するのが難しかった。というかこの本が細かすぎた。
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パレスチナ/イスラエルの問題は根が深い。今回1.フサイン・マクマホン協定 2.サイクス・ピコ密約 3.バルフォア宣言という相反する3つの約束をイギリスがした事を知った。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou25701.html
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著者の臼杵陽氏は、東京外語大アラビア語学科卒の、在ヨルダン日本大使館専門調査員、エルサレム・ヘブライ大学トルーマン平和研究所客員研究員などの経験を持つ、現代中東政治・中東地域研究を専門とする政治学者。 本書は、過去一世紀に亘り、中東問題、更には世界政治問題の中心の一つであり続け(...
著者の臼杵陽氏は、東京外語大アラビア語学科卒の、在ヨルダン日本大使館専門調査員、エルサレム・ヘブライ大学トルーマン平和研究所客員研究員などの経験を持つ、現代中東政治・中東地域研究を専門とする政治学者。 本書は、過去一世紀に亘り、中東問題、更には世界政治問題の中心の一つであり続け(ここ数年でこそ、中東の焦点はISに当たってはいるものの)、かつ、未だに解決の糸口さえ見いだせない「パレスチナ問題」を、世界史という長期的・広域的な観点から位置付け、問題の根源がどこにあり、それがどのように展開し、現状はどうなっているのかを詳細に考察したものである。 内容は、大きく3部に分かれ、第1部では、3つの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の相互関係から始まり、十字軍、東方問題まで、第2部では、帝国主義時代から第一次世界大戦後の英仏支配、第二次世界大戦後の米ソ冷戦期におけるアラブ・イスラエル紛争のうち第三次中東戦争に至るまで、第3部では、パレスチナ・イスラエル紛争への変質(アラブ・イスラエル紛争のパレスチナ化)から、湾岸戦争後のアメリカ単独一極支配とそのアメリカの覇権の終焉、アラブ革命の勃発までを扱っている。 私は、本年1月にエルサレムとパレスチナを1週間ほど一人旅をするにあたり、知識を深めるために本書を購入した(旅にも持参した)のだが、新書ながら400頁を超える中身は非常に濃く、大変役に立った。特に、前近代における「ユダヤ教徒という信徒集団」が、近代に入って社会進化論・人種論あるいは優生学などの疑似科学的な議論の広まりの中で「ユダヤ人という人種」とみなされるようになっていったこと、第1次中東戦争の裏側には、イスラエルとトランスヨルダン(現ヨルダン)とそれ以外のアラブ諸国の三者にそれぞれの思惑があり、全体としては事前の秘密合意に従った軍事作戦を展開していたことなどの詳しい記述は、大いに興味を惹くものだった。 著者は最後に、「私自身、かつてパレスチナ問題を語ることは人類の解放を語ることにつながるのだという確信をもち、差別や抑圧のない社会を作るための一助になりたいという理想に燃えていたことがありました。・・・このような新書を著すことによって問題の所在を明らかにして解決の方向性を見出そうと試みたのですが、いっそう深い森に迷い込んだ感じで、むしろ将来的な展望が見出せなくなってしまったというのが本音といったところです」と記しているのだが、実際に現地を歩いてみると、宗教と民族とナショナリティが多次元的に複雑に絡み合っていることを実感し、自分としても著者と同様に混乱の度合いが深まったような気がする一方で、エルサレムやベツレヘムやラーマッラーでは、少なくとも表面上は穏やかで平和な時が流れているということも強く印象に残ったのである。 宗教・歴史・政治あらゆる面からの現代世界の縮図ともいえる「パレスチナ問題」を深く理解し、更に世界の将来を考えるために有用な一冊と思う。 (2017年1月了)
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文体はですます調で、なるべく分かりやすく伝えて下さろうとしているのでしょうが、主語の煩雑さが、私には一読では理解しにくいと感じました。それでも新たな視点を与えてくれる内容が多く、後日改めて読んでみようと思います。
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