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一目小僧その他 の商品レビュー

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2013/02/16

この本では怪異的な伝説の類が収集され、テーマごとに論じた文章が集められている。たとえば一つ目小僧や、人間に化ける魚や鰻、白鳥に化身する餅、巨人など。 一つ目小僧に関しては、隻眼の神のイメージが変容して妖怪化したものだろう、と柳田は結論づける。 これはいいが、他の文章は読み進めてい...

この本では怪異的な伝説の類が収集され、テーマごとに論じた文章が集められている。たとえば一つ目小僧や、人間に化ける魚や鰻、白鳥に化身する餅、巨人など。 一つ目小僧に関しては、隻眼の神のイメージが変容して妖怪化したものだろう、と柳田は結論づける。 これはいいが、他の文章は読み進めていくと、どうも解釈−結論づけが恣意的のそしりを免れず、学問(科学)としてあまり緻密な検証が完遂されていないような気がした。『海上の道』は特にそうだったが、確かな証拠が少ない中で、あまりにも飛躍的に仮説へと進んでしまうような危うさを感じてしまうのだ。 だがこのことは、開拓者としての柳田国男の価値を損じるわけではない。フロイトと同様、たどりついた「仮説」に幾つもの問題があったとしても、すべての人に先んじて革命的な思考をまっとうしたという事実が、彼の歴史的な偉大さを明らかにしている。 おまけに柳田国男の文章は相変わらず随筆風で、膨大な知見が柳田という主体の中で結びつき、からみあい、ゲシュタルトとして醸成されていく様子が読んでいて彷彿とされるために、柳田を読むことはわくわくするような読書体験をもたらしてくれるのだ。 本書は妖怪じみた伝説を集めたということで、一般に興味もひくし、やはり、何よりも楽しめる一冊だった。

Posted byブクログ