空海と密教美術 の商品レビュー
密教の曼荼羅や法具についての解説をおこなうとともに、日本に密教をもたらした空海の生涯と思想を解説している本です。 密教美術についての解説が中心だと思って手にとったのですが、空海を中心に密教の思想について広く説明がなされており、一般の読者向けの密教入門として読むことのできる内容に...
密教の曼荼羅や法具についての解説をおこなうとともに、日本に密教をもたらした空海の生涯と思想を解説している本です。 密教美術についての解説が中心だと思って手にとったのですが、空海を中心に密教の思想について広く説明がなされており、一般の読者向けの密教入門として読むことのできる内容になっています。とくに密教では、さまざまな法具を用いた儀軌が重視されるので、本書のようなスタイルの入門的解説書は役に立つのではないかと思います。密教美術に関心の範囲がしぼられているという読者のばあいは、やや古くなりますが佐和隆研の本などを手にとるべきなのかもしれません。 多少気になったのは、密教を仏教の他の宗派に比して高く評価されるべきであるといった著者自身の立場がときおり漏れ出ているように感じられるところです。もちろん仏教美術の分野においては、密教が他の宗派を圧倒していることは事実なのでしょうが、それらの分野において見るべき美術作品をもたないということは、その宗派の思想的評価に直結するものではなく、さまざまな仏教思想の展開として把握されるべきであるように思います。
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