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消えた琉球競馬 の商品レビュー

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2016/01/20

(お宝本:あぜやん) 本書は琉球時代の幻の名馬『ヒコーキ』を追いかけて、著者(競馬記者)が挑んだ、琉球競馬という 琉球、沖縄の歴史を映す鏡の熱き物語。 琉球競馬という言葉を聴くと、皆さんは近代の競馬最速馬で有名なディープインパクトを 思い浮かべる人もいるかと思うが、速さを競う競...

(お宝本:あぜやん) 本書は琉球時代の幻の名馬『ヒコーキ』を追いかけて、著者(競馬記者)が挑んだ、琉球競馬という 琉球、沖縄の歴史を映す鏡の熱き物語。 琉球競馬という言葉を聴くと、皆さんは近代の競馬最速馬で有名なディープインパクトを 思い浮かべる人もいるかと思うが、速さを競う競馬とは違い、琉球競馬は 宮古馬(小柄な在来馬)が足並の美しさを競った競馬である。 美しさを競うと共に世界でも珍しい独特の走り方も行う。 側対歩という走法で、右前脚と右後脚、左前脚と左後足で、同時に繰り出す走りかたで、 美しさを競っている。 この競馬は、馬具に華麗な装飾を施し、直線走路で美技を競い合い、勝者には地域の住民等から 熱烈な称賛を受けることで、金品は貰うことなく、あくまで、名誉のみが与えられる。 琉球王朝時代の士族等が気品豊かに遊んだ文化である。 本書は第7章からなる内容であるが、6章まで、かなり時間をかけて名馬『ヒコーキ』を追いかけ、 ついに7章で名馬『ヒコーキ』の育ての親族に出会う時のシーンが印象的である。 では、その部分は読んだ時のお楽しみということで、琉球の時代から沖縄の戦前までの 琉球競馬と共に、沖縄の歴史に迫ってみよう。 馬が琉球列島に渡来したのは、11世紀頃に九州から南下した説が有力である。 育った馬を琉球から初めて輸出したのは、琉球の三山時代(中山、北山、南山の3大勢力)が 統一される以前の14世紀頃とされる。 輸出は馬以外は硫黄も含んでおり、輸出先は明国であった。 その後、琉球王国が統一されて、1692年当時の琉球は独立国という体裁を保ちながら、 薩摩藩の支配を受ける一方、明国(のちの清国)とも冊封関係を続けていた。 その状況で生き抜くためには、武力の代わりに文化を前面に押し出した時代である。 その頃の官人(役人)の職務に必要な緒芸(12種)をあげると、 1学文(和学と漢文)、2算勘(算数)、3筆道(作文)、4筆法(習字)、5謡(謡曲、舞踏)、 6唐楽(中国音曲)、7茶道、8立花(華道)、9医道、10包丁(料理)、11容職方(理容と着付け) 12乗馬方(馬術)となる。 琉球王国が終焉する時代には、屋取という、王朝時代の無禄の士族たちが首里や那覇での 生活に見切りをつけて、地方に分散して、農業を行って開墾した土地集落を形成した。 その屋取から成功して裕福になった人々が、琉球競馬に熱中した主人たちである。 大正8年の頃が今風にいう沖縄のバブルの時代である。 第一次世界大戦で、世界的な砂糖不足になり、沖縄の黒糖相場が跳ね上がった。 しかし、そんなバブルも長くは続かなった。 大正10年頃に砂糖が行きわたり、糖価暴落がおこった。 不景気で食糧難になり、いわゆる「ソテツ地獄」で、ソテツを食べて中毒死する事件もあった。 やがて、琉球競馬も時代の流れにのれずに終焉をむかえた。 この物語は、競馬という娯楽だけをみるのではなく、 琉球競馬を通して、琉球時代の一部士族等による優雅な時から、沖縄戦という悲劇な時代までを 写す鏡として、心に刻まれる物語であることがわかる。 最後になるが、著者、梅崎氏には、心から感謝を申しあげたい。 なぜなら、琉球競馬の関連資料(参考文献)を拝見して分かりますが、膨大な冊数になっており、 私は、この資料のなかで気になる沖縄本を今後時間をかけてじっくり読んでいきたい。 沖縄面白本棚ブログより http://azeyan.blog.jp/

Posted byブクログ

2013/04/29

競馬といっても十数頭が競馬場で早さを競い、観客は馬券を買い一喜一憂するギャンブルとしての競馬ではなく、フィギュアスケートのようにスピードだけでなく、その美しさをも競い合った琉球王朝時代を彷彿させる優雅で上品なものであったらしい。 歴史はかなり遡り、証人は高齢化、さらに戦争で資料...

競馬といっても十数頭が競馬場で早さを競い、観客は馬券を買い一喜一憂するギャンブルとしての競馬ではなく、フィギュアスケートのようにスピードだけでなく、その美しさをも競い合った琉球王朝時代を彷彿させる優雅で上品なものであったらしい。 歴史はかなり遡り、証人は高齢化、さらに戦争で資料が消失しているなか、よくここまで調べ上げたものだと、敬服する。 それにしても沖縄の歴史は深い。 戦争で資料や史跡が消失してしまったのはとても残念だ。

Posted byブクログ