保守思想のための39章 の商品レビュー
陳腐な「私語り」をするが、過去に西部の「衆愚」を批判する姿勢にどうしても馴染めなかったことを思い出す。それは端的にこのぼくもまた「衆愚」でしかありえない(教養もないしエリートでもない)という自覚によるものだった。でも「いま」虚心に耳を傾けると、西部の思考はむしろその鋭すぎる切っ先...
陳腐な「私語り」をするが、過去に西部の「衆愚」を批判する姿勢にどうしても馴染めなかったことを思い出す。それは端的にこのぼくもまた「衆愚」でしかありえない(教養もないしエリートでもない)という自覚によるものだった。でも「いま」虚心に耳を傾けると、西部の思考はむしろその鋭すぎる切っ先を西部自身にも向けて徹底的に分析・解析しようと「葛藤」しているように読める。だからぼくはこの本をお手軽な保守思想の教科書としては読めない。西部が(クサい言い回しではなはだ恐縮だが)実存を賭けて論じきった渾身の論考の詰め合わせと読む
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保守思想というのは分かりにくいのだが、これを39のキーワードから説明しているのが本書である。基本的には慣習や伝統を大切にし、性急な変革を嫌う立場で、感情、相続、家族、地域、祖国などを大切にするんだが、悪習を守るのが保守主義なのではなく、歴史と伝統や常識にのこっている英知を尊重し、議論によって專門知識人の狭量や大衆がもつ気分に流されまいとする立場であって、バークにしろ、トクヴィルにしろ、ブルクハルトにしろ別に貴族制を擁護したわけではないそうである。要するに「まっとうな物の見方」を大事にして、自己に懐疑をつきつけ、人間の有限性を知り、平衡をとおしてセキュリティを施していこうとする思想なのではないかと思う。技術論については、たしかに「情報の虚無」は感じることがあるが、結局、使われずに使いこなすという点が大事で、IT以外で問題解決したほうがいいなら、躊躇しない柔軟性が大事なんだろうと思う。今までマルクス・レーニン・トロツキーとよんで、バーク・オルテガ・アレント・高坂正堯などを読んできたが、チェスタトンの著作も読んでみたくなったので注文しておいた。右翼的・左翼的雰囲気に流されないためにも保守思想は学ばなければならないと思う。後期ヴィトゲンシュタインも保守思想として読めるのは意外に感じたがそうかなとも思う。
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