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いま、柳田国男を読む の商品レビュー

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2022/10/09

『柳田國男全集』(筑摩書房)の編集委員を務めた著者が、柳田の思索と研究を突き動かしていた動機にせまることで、柳田民俗学の意義と可能性について考察をおこなっている本です。また、柳田民俗学を「一国民俗学」という枠組みのうちに囲い込む通説を批判し、比較民俗学への視点が含まれていたことを...

『柳田國男全集』(筑摩書房)の編集委員を務めた著者が、柳田の思索と研究を突き動かしていた動機にせまることで、柳田民俗学の意義と可能性について考察をおこなっている本です。また、柳田民俗学を「一国民俗学」という枠組みのうちに囲い込む通説を批判し、比較民俗学への視点が含まれていたことを明らかにしています。 本書の冒頭で著者が触れているように、東日本大震災以降、人びとが「故郷」を口にするようになり、さらにほんとうの意味での復興とはなにかということが問われるようになっています。著者もそうした現代の状況のなかで、「いま、なぜ柳田国男なのか」と問いかけ、柳田自身が民俗学を志した動機のうちにその意義をさぐろうとしています。 ただ正直なところ、本書がくわしく解明している柳田民俗学の出発点と、現代的な状況とのつながりが明瞭に見えてこないように感じました。本書と並行して見田宗介の著作を読んでいたのですが、そこでは高度成長以後の日本人が伝統的な「家郷」を失い、マイホームという夢に象徴されるような都市におけるささやかな「家郷」をつくってきたことが、社会学的な観点から論じられていました。現代の民俗学は、たしかに著者の指摘するように、柳田國男を性急に越えようとするあまり、柳田を矮小化することになってしまった例もあったかと思いますが、見田が見抜いていたような現代的な日本社会の変化におうじたかたちであたらしい民俗学的な領野を開拓していった功績までは否定できないのではないでしょうか。本書の柳田解釈は非常に説得的ですが、現代的なテーマに接続するような視座を開くことができているのかという点に、疑問を感じました。

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2019/09/03

数年前に出た本ですが最近になって読みました。柳田国男を民俗学の巨人としてではなく、また単なる先行研究としてでもなく、「正しく」再評価しようとする試みだと思います。『故郷七十年』と『遠野物語』を参考にしながら柳田国男との思い出も挟みつつ考察しています。民俗学は今に通じ、未来への視座...

数年前に出た本ですが最近になって読みました。柳田国男を民俗学の巨人としてではなく、また単なる先行研究としてでもなく、「正しく」再評価しようとする試みだと思います。『故郷七十年』と『遠野物語』を参考にしながら柳田国男との思い出も挟みつつ考察しています。民俗学は今に通じ、未来への視座も獲得するとの論には説得力がありました。

Posted byブクログ