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クライシス・キャラバン の商品レビュー

4.2

11件のお客様レビュー

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2019/01/05

2013.6記。 CNNで難民キャンプの報道を見て、いてもたってもいられずささやかな寄付をネット経由で募金する。そのお金はどこでどう使われているのか。このルポルタージュを読むと胸ふたぐ思いがする。 「クライシス・キャラバン」とは、文字通り世界でもっとも刺激的に報道されている人...

2013.6記。 CNNで難民キャンプの報道を見て、いてもたってもいられずささやかな寄付をネット経由で募金する。そのお金はどこでどう使われているのか。このルポルタージュを読むと胸ふたぐ思いがする。 「クライシス・キャラバン」とは、文字通り世界でもっとも刺激的に報道されている人道危機の現場(ジェノサイド、飢饉、紛争)を常に求めてさまよう援助機関を指した(おそらくは著者の作った)言葉。国連機関、NGOの旗が立ち並ぶ難民キャンプ付近ではホテルの部屋代は高騰し、売春宿が立ち並ぶ。何より、報道される現状が悲惨であればあるほど、援助機関の募る義捐金への応募の額は膨らむのだ。 「どのNGOも(ニュースのインタビューに)他より多くの死者数を提示しようとしました。というのも一番大きい数字を示した人物が、その夜の9時のニュースに映ることをみんな知っていたからです。」(P.26) 途上国政府、すなわち援助を受け取る側は、「援助産業の内部での競争を利用するのに精通するようになった」(P.147 )。ついには援助の終了を恐れ、次の危機を自ら作り出す。水源に毒を投げ込み、住民に耕作を放棄させ離散させる。「飢饉と難民」が新たに生みだされる。著者は、特に最近のダルフール危機はこのようにして生じたとほぼ断言している。 いっそ援助などしないほうがましなのか。著者はこれを古くて新しい問題として捉えている。赤十字を設立したデュナンは、そこに苦しむ人がいるならば、と中立の人道支援を唱え、ナイチンゲールはそれこそが「国民が戦争に耐えられる期間を長引かせている」と批判した。本書を読む限り、この答えはまだ出ていないように思える。 最後に、本書は「キャラバン」たちを非常に批判的に見ているが、現地で迷い悩みながら働くスタッフへの敬意を失っているわけではない。単なる援助悪玉論に堕した類書も多い中、「まず何が起きているかを問う」という本書から学ぶ点は多かった。

Posted byブクログ

2015/05/23

「人道援助」が巨大なビジネスになり、ドナー諸国の巨額の金が動き、契約機関・報道機関・ジャーナリストなどを巻き込んで、壮大な無駄になっている現状。 闘士や戦士をアメとムチで戦わせ、スポンサーがカウチポテトで楽しむ構造。様々に悪として語られて来たけれど、世界に認識されるにはまだ少し...

「人道援助」が巨大なビジネスになり、ドナー諸国の巨額の金が動き、契約機関・報道機関・ジャーナリストなどを巻き込んで、壮大な無駄になっている現状。 闘士や戦士をアメとムチで戦わせ、スポンサーがカウチポテトで楽しむ構造。様々に悪として語られて来たけれど、世界に認識されるにはまだ少しかかりそう。

Posted byブクログ

2014/12/01

これはキツい。紛争地への支援はどれほどの意味があるのか。資金を提供することが侵略者への加担となり、戦争を長引かせる要因になりえるという、そんなことはおおそらく先進国の裕福層は考えもしなかっただろう。

Posted byブクログ

2014/10/19

人道支援という大義名分で金を集めても、本来救いたい難民を作り出している軍閥を支援することになる。先進国と途上国の内戦が、人道的感情を金に変えてフィードバックする経路として安定したシステムとなってしまっている。ささやかな抵抗でしかないが、もう募金はすまい。

Posted byブクログ

2014/08/25

あと巻末の用語集。 とにかくどうしたらいいのか暗い気持ちになる。 ちなみに本文の日本語訳のひどさも本気でひどい。

Posted byブクログ

2014/05/21
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内戦などの原因で難民になった人たちに世界中から寄せられる援助。その援助が、内戦の当事者である武装勢力にがっつりピンハネされているとしたら?という切ないお話。 例えば、僕が子供の時、よくニュースになっとったエチオピアの飢饉。実は食料自体は足りていたけれど、世界中の目を引いて援助を呼び込むため、武装勢力が食料をガメとったらしい。まあ、実際現地を牛耳ってるのは武器持った怖いお兄さんやし、武力介入せん限りは手出しも難しいやろしなあ。 もちろん、そんな輩とは取引しません!という志の高い団体もおるけれど、援助の歯車回すことにしか感心のない団体もおって、結局水は低きに流れる。。。難民を救うはずの援助が原因で、いつまでも内戦が終わらない、という皮肉な現実が今もアチコチで見受けられるとのこと。 カネ、モノだけの援助よりも、国として独り立ちできるよう、仕組み作りをサポートするのが一番効果的な援助、ていう結論でした。長い時間はかかるやろけど。 アフリカは民度低いなあ、という向きもあるけれど、こないだまで植民地で政治の経験がほとんどないうえに、宗主国の都合で引かれた適当な国境線で、「さあ、解放したったから国としてまとまって(-_-)b」言われてもそりゃ無理やと思うわ。部族間で戦国時代みたいになるって。 ヨーロッパの人らも、もうちょい面倒見たれよ、と遠い島国の片隅から思いました(-_-)

Posted byブクログ

2014/04/20
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★★★★☆ 背筋が凍る。 破滅への道には善意が敷き詰められているという言葉の意味が知りたければこの本を読べばよい。 ルワンダを始めとした世界の紛争地域において、NGOの活動が現地にどのような影響を与えているかを現地への取材を行って書かれた本。 NGOというと良くも悪くも使命感に燃える、善意の第三者という印象だが、現実はそんな甘いもんじゃない。 もちろん彼らは営利団体ではないから、嘘をいって金を集めてその実、暴利を貪っているなどということはない。 だが、出資者(ドナー)へ活動の成果を伝える義務があるという点においては、むしろ営利団体よりキツイかもしれない。 企業なら赤字を出さないというのが一応の基準になるが、紛争地域で活動するNGOの場合、ドナーが満足する基準というものが存在しない。 そこで重要なのはエンターテイメント性だ。 どれだけドナーの心を動かすレポートを提示するか。 そのためには、より残酷な現実が必要になる。 彼らは残酷な現実を求めて紛争地域の奥へと入り込む。 そこは虐殺を行っている軍や民兵組織が管理していることが多く、金を払わねば立ち入ることが出来ない。 ドナーから集められた金はNGOを通して虐殺者たちに渡り、虐殺者たちは金を持ったNGOにとって魅力的な素材を提供するため、少年に親を殺させ、少女をレイプし、腕や足を切断する。 赤十字の創立者デュナンは負傷した兵士が見殺しにされている現状を憂い、「兵士をちゃんと治療した方が戦費は抑えられる。だから負傷兵を放置するのはやめてほしい」と政府に訴えた。 それを聞いたナイチンゲールは激怒したという。 「戦費が膨らむほど戦争はやりづらくなる。戦費が安くすんでしまったら政府は簡単に戦争をするようになってしまい、かえって犠牲者が増えるではないか」と。 目の前の人間を救うために介入するべきか、死者の総数を減らすために介入をとどまるべきか。 白か黒か、神かゴミかで分けられるほど、世界はわかりやすくない。 もどかしい現実を受け入れ、全てはグレーゾーンの濃淡の中にあるとわかることが、大人になるということなら、人は一生迷い、戦い続けなければならないのだろう。

Posted byブクログ

2014/04/15

 紛争地では、国連やNGOなど多くの援助組織が、人道主義のもと中立の立場で難民やけが人や飢えた人を助けている。マスコミで報道され、かわいそう!と思う先進国の人たちが早く不幸から脱出できますようにと好意の寄付をするという構図がある。  しかし、現地での活動するには、現地の実力者が課...

 紛争地では、国連やNGOなど多くの援助組織が、人道主義のもと中立の立場で難民やけが人や飢えた人を助けている。マスコミで報道され、かわいそう!と思う先進国の人たちが早く不幸から脱出できますようにと好意の寄付をするという構図がある。  しかし、現地での活動するには、現地の実力者が課す税金や盗難やらに資金がとられ、援助物質も中抜きされてしまう。それらが武器資金など紛争継続の元になっているというショッキングな現実を暴露する。悲惨が続くことで援助が膨らみ、紛争や残虐行為は更に続くのである。  では、弱者への援助は不要なのか?それに答えを出した人はいない。人道援助とは何か、施す側の理念と受ける側の現実との齟齬を、本書は容赦なく白日にさらした。より多くの人々に考えてもらいたい問題である。  内容は重いが、ルワンダ、シエラレオネ、アフガン、など章に分かれて実例で説明しており、とても読みやすい。巻末の業界用語集など理解を助ける工夫もいいアイデアである。

Posted byブクログ

2013/05/06

人道支援のための活動が、結果的に加害者への支援となる事へのルポ ツチとフツの単純二分論などの認識の甘さを差し引いても、今世紀になって出始めてきている援助、開発系の良著に比類するクオリティもなかった 思っていたより酷い、という程度には本書を読む価値があったのですが

Posted byブクログ

2013/03/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

リンダ・ポルマン『クライシス・キャラバン 紛争地における人道援助の真実』東洋経済新報社、読了。人道援助の現場の混乱と真実をレポートする「衝撃」の一冊。飢えた子供への憐憫が集めた資金や物資は巨大な利権だ。それを援助団体、武装組織、地元の政府といった当事者たちが群がり奪い合う。 UNHCRのキャンプを拠点に出撃していく武装組織。「お涙頂戴」とPR合戦に明け暮れる当事者とNGO。人道援助という「金科玉条」の裏に見え隠れするジレンマを本書は紹介。幾多の現地取材に基づく筆者のレポートは読者を圧倒する。 本書はシニシズムを決め込むこと提言すると捉えるのは早計。ジレンマを無視し、募金をすれば終わり(=解決する)という善意という名で関係を絶つ他者意識を筆者は撃つ。善意で解決するとは思わないが、関わりと倫理を問う一冊。了。

Posted byブクログ