小林玄の感染怪談 の商品レビュー
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パフォーマーとして活動する傍ら、お化け好きが高じて集めるようになった数々の怖い話。そんな著者が一番質が悪いと苦言するのは、聞いたらやってくる怪異達。まるで病のように伝播する怪談話とその他の怪異達を集めた本書である。 *** お気に入りの話は「深夜の訪問者」、「格安物件」。 「深夜の訪問者」はこちらは読んだら話中に出てくる幽霊がやってくるとのことなので、自己責任系怪談となる。新婚のHさんは夫の帰りを待ちながらうとうととしていた。そして時計が夜中の12時に差し掛かったあたりで、インターフォンが鳴る。夫が帰ってきたのかと思ったが、鍵を持っているはずの夫がインターフォンをわざわざ鳴らすだろうか?不審者の可能性も考え、ドアスコープをのぞくと、近距離で同じくドアスコープをのぞき込む奇妙な女性が立っていることに気づく。常軌を逸した行動にしばらく硬直していると、夫がドアを開けて帰宅してきた。何事もないように帰ってきた夫の様子を見るにドアの前の女はいなくなったようだ。今あった出来事を夫に話すが、互いに心当たりがない二人は釈然としないまま就寝するほかなかった。そして、この恐怖譚は想像力を豊かにこの話を読んだ人間のところにも伝播していったのであった。 読みながら描写されている幽霊の姿を脳裏に描いた場合、幽霊と深くリンクしてしまいこの幽霊が来るとのこと。幽霊がやってきて何かしてくるわけでは無い様だが、真夜中に不意にインターフォンが鳴るというのはそれだけで気味が悪い。ましてやドアスコープ越しに幽霊と見つめ合うのだから、可能ならば避けて通りたい事態だ。この話を読む場合、脳裏に克明な描写をしながら読まない方がよさそうである。 「格安物件」は破格の物件を見つけた友人のG。都心へのアクセスも良好なのに、相場より格安の物件という事は瑕疵物件であることは間違いがない。しかし、霊感がないから関係ないと豪語するG。しばらくの間、快適な新生活を満喫していたGであったが、水回りの不調を皮切りに、様々な怪奇現象に見舞われることとなるのであった。なかなか心理的な負担を与えられる結末を迎える話だった。瑕疵物件なので怪奇現象が起こるのはお約束であるが、その怪奇現象が起こる原因になったであろう事件がえぐすぎる。殺人や自殺は事故物件ではよくある話(ない方がいいけど)だが、その先が行われた物件というのはなかなかないのではないだろうか。幽霊が出るのは嫌だが、そんなおぞましい行為が行われた物件はもっと嫌だ。怖い思いをした上に、精神的な苦痛を与えられたGが気の毒で仕方がない。
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他社の芸人さんの怪談本より良く出来ているが(おそらくリライタさんの腕が良い)、同社のシリーズではフツーという印象。
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