ヒトはイヌのおかげで人間になった の商品レビュー
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(本書の中からの引用や、それを自分なりに解釈したモノを無作為に以下書き記す。) 人間と犬ほどに「愛し合う能力」を共有化している関係はない。 人間が狼を犬に進化させたと同時に犬がヒトを人間に進化させたのかもしれない。 多くの動物の関心は自分仲間に限定され自他の区別をするが、人間と犬だけはそうしない。 むしろ人間の場合は他者まで愛してしまうことがあるから、時として自分の仲間でさえ抹殺しようとするのかもしれない。 「仲間」という概念は人と犬の関係から生まれたのではないだろうか? 初めて異種の動物との良好な関係を築けたことが他の動物を家畜化する基盤となり、ついには地球上の生物の在り方を抜本的に変える結果となってしまったのだ。~ポール・テソン 近代以前、人は捕食者でもあり、また被捕食者でもあった。食べられる可能性があったから(食べられないようにすることで)人間は進化した。~ドナ・ハート、ロバート・サスマン 謝るという行為は、人間が犬から学んだことかもしれない。 ��私見:だからプライドの高い人間は謝ることを知らないのか…) 犬は人間なしでは生きられなくなってしまったが、猫は人間なしでも生きていける。 つまり猫はノブレス・オブリージュとして人間に付き合ってあげているのである。 犬は人間が何をしたいと思っているのかを常に読み取ろうといる。そして自分(犬)たちに命令していることを実際理解している。曲芸をする猿や馬車を牽く馬はそういう考え方をしない。 その理由に、人間の目を見つめるのは犬しかいないことがあげられる。 そして犬だけが人間からやさしくされることを見返りと考えている。 因みに、猿や馬にとっての見返りは痛みや圧迫からの解放でしかない。 時折巷で問題になるDVや体罰問題などにも応用できる考えが随所にある良書だと思った。
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人の近縁であるチンパンジーは「競争する性質」を持っていて、人ともっとも仲良しの異種である犬は「協力する性質」を持っている。人は、助けあうことや愛することを犬との共生の中で獲得した、つまり犬に教えられたとする仮説が本書の中心。犬と人間の共進化、お互いに影響を与えながら今の姿になっているという説はなかなかおもしろい。犬は狼を基準として幼形成熟(ネオテニーと言われる)した種族ということで、家畜化されてそういうふうになったのだけれど、よくまあ短いスパンで野生のこわい狼が、そんなやさしい犬になったもんだと思う。ソ連時代のロシアの研究で、ギンギヅネの実験というのがあるそうで、キツネを飼いならしていくと代替わりしていくにつれて、頭蓋が小さくなり、歯も小さくなり、耳がたれたりなどし、姿が変わって性格もおとなしくて人懐こくなったそうです。40年という年月でそうなったらしいですが、家畜化はそんな短い期間で起こるのだな、とちょっと驚きました。イノシシが豚になり、野牛が乳牛やら肉牛になり、鶏がいて、羊がいて、ヤギがいて・・・・。進化だとか、環境に適応するように生物が変化するっていうけれど、家畜として人間社会に組み込まれるっていうのは、すごいことなのだろう。いっぽうで、象や馬は完全に家畜化されないとも言われる。また、犬に対して、とくに何かの役に立てとはいわない飼い主が多いと思うのです。ただ居てさえくれればいい、存在しているだけでじゅぶんだよと。そして、重い病気の子どもや老人にも、同じように存在しているだけでの価値を認めたりする。そして、それが尊いように思えたり。そういった愛のあり方を考えて、人間の高尚さを信じたりしそうになるけれど、気づいてみれば、犬の人間に対する愛のあり方こそが「存在しているだけで十分です」というカタチだったりもする。ま、エサをくれればっていうのもあるけれど。たいがい、犬は人を社会階級や人種や性別で差別しない。人間にも、犬のように、本質的にその存在だけを認めて差別しない種類のもいますが、さっきも書いたように、近縁種のチンパンジーが自分の仲間とは、犬種がそうであるように協力的ではなくて、競争する性質であることから、人間は犬との共進化の過程で、「差別のない愛」という概念を犬を通じて知ったのかもしれない。本書の中での、他の本からの喩えの引用では、犬を「カント学徒のようだ」と書いてあった。カントって哲学者は、いろいろな肩書や偏見みたいなものを取りさらったうえで、人間をみていたのだろうか。と、まあ、そういうことが書いてあったり考えたりするようになる本です。犬を飼っている犬好きの人が読むと、すごく楽しい気分で読み終えられそうです。ぼくは犬を飼ったことがないけれど、それでも犬は好きなので、やっぱり愉快な気分で読んでいる時間が多かったですね。
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イヌ(狼)とヒト(猿)は約4万年も前から生活を共にしている。ヒトが猿からヒトへ、イヌが狼からイヌへと進化していったのは互いに対する「愛」が理由ではないかと著者は分析している。 そんな著者が犬を引き取ることになり、著者とその家族、そして犬との生活が綴られている。
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犬との関係は体感では分かっていても文章にするとこういう気持ちなんだと代弁してくれている。犬との関係は飼い主ではなく、家族なんだと改めて感じることができる本。
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あくまでも作家が書いた書物なので、科学的な論証に厳密なわけではなく、しばしば強引な断定があるが、それでも実に興味深い論である。この本は進化論者、動物行動学者、獣医などが主張しはじめているヒトとイヌの「共進化」を書いていて、著者の立場はこれを一歩進めて、農耕の発生以前に家畜化していたイヌとヒトは、もっとも長いつきあいであり、例えば嗅覚の退化など、ヒトの肉体的変化ももたらしたが、人間の愛情や社会性にもイヌの影響があるとしている。動物のなかで種をこえてほかの動物に興味をもつという一般的傾向があるのは、イヌとヒトだけであるという。
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第1章 ベンジーがやってきた 第2章 犬の愛し方 第3章 イヌのおかげでヒトは人間になった 第4章 犬は特別?ほかの家畜との比較 第5章 犬はみな子狼? 第6章 人と犬との四万年のロマンス 第7章 犬が牙をむくとき 第8章 犬がしてくれること 終章 愛こそがすべて
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当たり前にいる動物の代表選手”犬”が人類にどのような影響を与えたかという切り口で、とてもおもしろかったです。 医療に関連しても色々な役割を果たしている犬がいるというのもおどろきでした。 それは、引き込まれる文章から始まります。 ・・・・・ 犬がいるからこそ、人は新しく長いーそし...
当たり前にいる動物の代表選手”犬”が人類にどのような影響を与えたかという切り口で、とてもおもしろかったです。 医療に関連しても色々な役割を果たしている犬がいるというのもおどろきでした。 それは、引き込まれる文章から始まります。 ・・・・・ 犬がいるからこそ、人は新しく長いーそして不確実で、決して終わりにつか付かないー道のりを歩きはじめた。 ものを感じる「すべての」生き物はみな同じであることを認めていこうと気づいたのである。 仏教はそれを教えている。だが、この概念をもたらしたのはキリストでモーゼでもブッダでもない。 人間をすっかり信頼して隣を歩き、何があろうと人を見すてない小さな生き物だ。 その小さい生きもののおかげで、人は種の壁を越えて愛することを学んだ。
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