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紙の約束 の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2023/09/30

英国のジャーナリストがマネーとその歴史について、特に債務に焦点をあてた考察を述べている。2012年に出版された本で、リーマン後の巨額債務までの事例が当時の最新の問題だった。10年以上を経た現在では、コロナ対策による支出の中で債務問題はさらに巨大化している。本書の中で巨大債務にあえ...

英国のジャーナリストがマネーとその歴史について、特に債務に焦点をあてた考察を述べている。2012年に出版された本で、リーマン後の巨額債務までの事例が当時の最新の問題だった。10年以上を経た現在では、コロナ対策による支出の中で債務問題はさらに巨大化している。本書の中で巨大債務にあえぐ先進国が陥るのは、インフレか、停滞か、デフォルトのどれかだと断言しているが、現在は債務問題からそのどれも起こっていない。インフレは明らかに別の要因で引き起こされている。本書の指摘は外れたのであろうか?  日本についてみると、ここまで蓄積されてきた国の負債は、もはや全額を返すことは不可能なことは分かる。では、円の大幅な下落やインフレによって購買力を失った通貨で返済するといった事実上のデフォルトが起こるのか、はたまた自ら起こすのかが問題だ。国債の保有者は主に国内の投資家、つまり自国民からの調達なので、その対処はしやすいというのが一般論になりつつあるが、本当にそうなのであろうか? 2022年末の国債の保有者別内訳をみると、日銀が52%、銀行等13.0%、生損保等19.1%、公的年金4.2%、年金基金2.8%、海外6.5%で合計1051兆円となっている。日銀が量的緩和で購入した国債の償還を迎えた時に、借り換えの新規発行債を日銀が買わないと需給関係はどうなるのか? 国債保有の約38%を占める銀行・生損保・年金が、預金者や契約者の死亡や高齢化によって資産の圧縮を図れば国債の売り手に回ることも予想され、国債の消化が困難になり利回りが上昇することになると思われる。利回りが上昇すれば、債務問題はクローズアップされて、日本政府に対する信頼が揺るぎ始める可能性がある。 そもそも、現役世代を助けるため経済危機が深刻になるたびに補正予算を組んで借金を増やしてきた。経済が成長すれば借入を返す原資の税収が増加するという楽観的な理由からだったが、景気刺激策による経済成長は持続せず借金が積みあがる循環となっている。子どもの世代に借金を押し付けるのは無責任にように思えるが、その子どもも次の世代に押し付ければいいというような風潮になっている。子どもの数が急減しているので、どこかで破綻するスキームなのは目に見えている。国債の利回りの上昇は、日銀が新発の購入を減らす5年後か、ベビーブーマーが平均寿命を迎える10年後か、それとも市場の政府への信頼が揺らぐ時が突然来るのか、タイミングは分からない。日本円や日本国債の危機を叫ぶ人はいたが、好況な金融市場によってその声はかき消されてきた。それでも、自分の資産は自分で考えて守らないといけないいと再認識している。 本書の中で、記憶に残る文章をメモしてみた。 「マネーという言葉そのものは、ローマ神話の女神ユノからきている。警告と忠告の女神。その価値に頼りすぎる人々にふさわしいお告げといえる。」 「純債務者(たいていは大多数)が純債権者を投票数で上回るような体制は、潜在的な弱みを抱いている」 「人間はまず、途方もない自己規制を発揮し、貨幣を思いのままに増やしたいという誘惑に抗えるようにならなくてはならない。たとえ自分自身の生存や国家の存続がそこにかかっていたとしても」 「貸し付けを行うには貸し手と借り手の双方に、借り手の収入が増えて返済可能になるという信頼がなくてはならない」

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2019/10/29

経済は、負債なくしては動かない。現在の経済は負債の上に成り立っている。その債務は膨張を続ける。 現在の世界は、ボンジースキームのようなもの。変動相場制が崩壊しかけている。

Posted byブクログ

2018/11/04

フィナンシャルタイムス記者による、紙幣つまり債務について述べられた本。記者ではあるが内容は深く、読み応えのある内容であった。 「(通貨供給の増加により)富裕層は負ける。勝つのは、公的支出の増加で恩恵を受けるか、税金をほとんど払わない貧困層だ」p6 「貨幣経済への移行は、弊害もた...

フィナンシャルタイムス記者による、紙幣つまり債務について述べられた本。記者ではあるが内容は深く、読み応えのある内容であった。 「(通貨供給の増加により)富裕層は負ける。勝つのは、公的支出の増加で恩恵を受けるか、税金をほとんど払わない貧困層だ」p6 「貨幣経済への移行は、弊害もたしかに多いものの、寿命を大幅に伸ばし、民主主義への渇望や機会の均等などをもたらした。マネーがその後押しをしてきたのだ」p35 「為替相場の選択を「トリレンマ」と評している。3つの選択のうち2つを選ぶことはできるが、3つすべては選べないということだ。その選択肢とは、固定相場、自由な資本移動、国による金利水準のコントロールである」p94 「バブルは金本位制の下では起こらなかった」p198 「ブレトンウッズ体制の終焉は、このシステムの最後の歯止めを外した。つくりだされるマネーと信用の量に限度がなくなった」p198 「進んでリスクを取ろうとするアメリカの起業家たちの姿勢は、倒産に対する心構えの甘さからも後押しされているというのが、多くの有識者の考えだ」p263 「ギリシャは多くの点から見て、赤字のための資金調達がどんどん難しくなる、いわゆる負債の罠に陥っていた。負債の罠の前提となる条件は、負債の利率が経済成長よりも高いことだ。つまりその時には、国が収入の増加分よりも多くの利子を支払うことになる」p281 「ユーロ圏の周辺的な国々が抱える支払い能力の問題とは、「債務の再編とユーロからの離脱がなければ、こうした国々の財政状態の改善が達成されるときには、きわめて根深く長期に及ぶ国内経済の景気後退を引き起こさずにおかないという意味である」p289 「ギリシャが債務を返済できないことを受け入れてしまうと、デフォルト以外の道はひとつしかない。他国がギリシャの負債を肩代わりして支払うことだ」p291 「高齢者は先進国にとって非常に大きな問題だ。高齢者は公共支出の額を押し上げるだけでなく、成長の足枷にもなる」p292 「重要な点は、政府が多くのステークホルダー - 債権者、納税者、給付の受給者 -を抱えていることだ。現在の混乱から抜け出すためには、このステークホルダーの誰かが犠牲を払う必要がある。債権者が実質的にお金を取り戻せなくなるかもしれない。あるいは納税者がさらに支払うか、給付がカットされるかもしれない。これら3つの組み合わせも考えられる」p293 「債務削減に積極的に取り組む政府は、選挙民に不人気を博し、政権を失うことになる」p306 「重要なのは、低金利が借り入れの高まりを導くわけではないことだ」p351 「現在のマネーとは負債であり、負債こそがマネーである」p401 「この負債が実質的に返済されることはない、つまり貸し出されたときと同じ購買力を持つマネーの形では返済されない。紙の約束が文字どおり、紙切れに変わる瞬間である」p403

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2015/10/12

古代ギリシャの世界に目を向けると、紀元前600年にアテネの政治家ソロンは債務危機への対処を迫られた。貸し倒れが相次ぎ、多くの人々が奴隷の境遇に身をおとさざるとをえなくなった。ソロンはこうした不運な人々を解放し、債務不履行者を奴隷とする慣行を廃止した。

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2014/07/22

資本主義の本質は債権と債務にある。金を融通すると書いて金融と申すなり。借金こそが資本主義の生命線だ。もちろん返したり返せなかったりするわけだがマネーが消えることはない。誰かが損失を被ったとしても投資されたマネーは経済市場の中を移動してとどまることがない。 http://sesse...

資本主義の本質は債権と債務にある。金を融通すると書いて金融と申すなり。借金こそが資本主義の生命線だ。もちろん返したり返せなかったりするわけだがマネーが消えることはない。誰かが損失を被ったとしても投資されたマネーは経済市場の中を移動してとどまることがない。 http://sessendo.blogspot.jp/2014/07/40.html

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2013/06/08

本書は、過去約半世紀にわたり世界で増加しつづけ、近年の金融危機により急増した貨幣が、この後の世界経済にどのような影響を与えうるかについて考察したものである。 本書の流れは以下のとおりである。まず、現在の貨幣制度の理解するために、貨幣制度の歴史的変遷を振り返り、現在の貨幣制度(不...

本書は、過去約半世紀にわたり世界で増加しつづけ、近年の金融危機により急増した貨幣が、この後の世界経済にどのような影響を与えうるかについて考察したものである。 本書の流れは以下のとおりである。まず、現在の貨幣制度の理解するために、貨幣制度の歴史的変遷を振り返り、現在の貨幣制度(不換紙幣※と変動相場制の組み合わせ)が、それほどの歴史の試練を経てきたものでないことを示す。その後に、現在の貨幣制度により、金融部門がマネーサプライを急速に伸ばし、資産バブルの増加を生じさせたことを論証していく。最後に、近年の金融危機以後の量的緩和政策について触れたうえで、貨幣供給を増やし続けた先進国は、今後、高インフレ又は国債のデフォルトを余儀なくされると主張する。 将来を予見することは難しいため、高インフレ又は国債のデフォルトという悲観シナリオは頭に入れておくくらいとして(可能性を考えておくことは大切だ)、この本は、貨幣制度の歴史を学ぶために読むのであれば、数多の史実がわかりやすくまとめてあり、一読の価値があるものと思われる。 当初、純粋な金本位制(中央銀行に、紙幣の裏付資産として同価値の金、銀の保有義務があった時代)のもとでは、貨幣供給量は国家の金保有量に制限され、経済活動に多々の制約が生じていたこと。同時代を生きた17世紀フランスの経済学者ジョン・ローが、国家と共同して貿易会社を設立し、株式発行によって不換紙幣の発行に成功するも、株式バブルとその崩壊により多くの負債のみが残る結果となったこと。20世紀前半の金本位制は、金準備が貨幣供給量の数%にしかならず、実質的にはニクソンショック前から貨幣は不換紙幣へと変化していたこと。こうした金融ドラマと顛末を学んでおくことにより、将来なにかが起こったときに、対応の余地が生まれるのではないだろうか。 ※不換紙幣:専ら信用によって取引価値があり、発行者である中央銀行は紙幣を持つものに対して何ら請求権を負わないもの。対義語は兌換紙幣。

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2013/04/08

紙幣がどんどん刷られている今の時代、その延長が何処に行くのか?今のタイミングでは是非多くの方が読むべき1冊だと思います。

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2013/02/23

紙幣、債券、歴史的な流れから現在の各国の問題を理解できる。気になるのは全般的な流れでも、そして最後の章で書かれているが現状の通貨制度の限界に触れている点。 自分の様に生まれた時から現在の様な制度だった(ニクソンショックも経験していない。とは良いながらその中でも物凄いスピードで変化...

紙幣、債券、歴史的な流れから現在の各国の問題を理解できる。気になるのは全般的な流れでも、そして最後の章で書かれているが現状の通貨制度の限界に触れている点。 自分の様に生まれた時から現在の様な制度だった(ニクソンショックも経験していない。とは良いながらその中でも物凄いスピードで変化しているが)人間には今後の変化に日本は取り残されないか。そもそも過大な国家債務はどうなるか。悩み事は絶えない。

Posted byブクログ