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ニュートンと贋金づくり の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2013/05/26

原題は”Newton and the Counterfeiter”。 ニュートンvs貨幣偽造犯罪者の物語である。 科学者としての偉大な業績に比べると余り知られていないようだが(自分も知らなかったのだが)、ニュートンはイギリスの造幣局監事であったことがあった。 その時期、稀代の偽...

原題は”Newton and the Counterfeiter”。 ニュートンvs貨幣偽造犯罪者の物語である。 科学者としての偉大な業績に比べると余り知られていないようだが(自分も知らなかったのだが)、ニュートンはイギリスの造幣局監事であったことがあった。 その時期、稀代の偽貨幣犯ウィリアム・チャロナーという男がおり、国家の財政自体を揺るがしかねないほどの規模で偽造を行っていた。 ニュートンは科学的・論理的能力をもってこの男を追い詰め、ついに処刑台に送る。 その顛末を、史料を基に再構築した1冊である。 この時代の硬貨鋳造は比較的素朴であり、一部を削って安い金属で水増しし、差額で利益を得る偽造犯もいた。 急速に膨れあがる大都会ロンドンは、空気も悪く、感染症も蔓延しがちである。硬貨から紙幣へと貨幣が移り変わっていこうとする時代でもある。 そうした時代の空気の中、一方で、『プリンキピア』を刊行して有名人となったニュートン、一方で、片田舎からロンドンへ出てきて、偽造犯としての道を歩き出したチャロナーの道筋が、交わることになる。 一介の犯罪者であるチャロナーに比べて、ニュートンに関する史料は多い。本書でも、記述の多くはニュートン側の出来事が占める。 一時期は錬金術に傾倒し、峻厳な人柄であり、同性愛的傾向があり、といったニュートンの側面は、料理のしようによってはセンセーショナルにもスキャンダラスにも出来そうである。が、著者はサイエンス・ライターとして、非常に淡々と記載しており、落ち着いた筆致に好感が持てる。丁寧に描き出されるニュートンは、偉大な科学者でありつつも、モンスターではなく、生身の人間だったのだろうと感じさせるものがある。 「ページをめくる手が止まらない」とは言い難いが、なかなかに興味深い1冊である。 *counterfeitで「偽造する」。-erがついて「偽造者」である。feitはラテン語の作る(facere)から来ているようである。 *著者が参考にしたとして巻末に挙げられている英国公文書館のアーカイブ。ニュートン自筆の記録なんていうのもあるらしい。ウェブページもあるようでちょっと見てみたが、ニュートンの時代のものまではオンライン公開はされていない模様。しかし、こうしたものがきちんと保管されているというのはすごいことだ。 *本題ではないが、造幣局監事となる前のニュートンの足跡についても触れられている。この時代背景の中で、「物体が動く理(ことわり)」について、宇宙も含めて考えを巡らせていくというのは、やはり偉業だと思う。

Posted byブクログ

2013/05/04

ニュートンと言えば物理学法則を発明した物理学学者として有名ですが、彼には天才科学者という肩書以外にも、贋金づくりを摘発する監事(国家公務員?)の仕事をしていたようです。この本は、彼のその仕事について詳細に書かれたものです。 私としては、本の前半に書いてある、ロンドンでペストが大...

ニュートンと言えば物理学法則を発明した物理学学者として有名ですが、彼には天才科学者という肩書以外にも、贋金づくりを摘発する監事(国家公務員?)の仕事をしていたようです。この本は、彼のその仕事について詳細に書かれたものです。 私としては、本の前半に書いてある、ロンドンでペストが大流行したのでそれを避けるために避難した田舎で、科学者として研究費は励んでいたというエピソードのほうが印象に残りました。 以下は気になったポイントです。 ・リンゴが落ちるのを見たニュートンは、万有引力の法則の理論が閃いた、その理論とは、物体は自身の質量に比例する力で自身の中心に向かって他の物体を引っ張る(p27) ・ロンドンは1666.9に5日間にわたって燃え続け、9.7にようやく燃え尽きた。13000戸以上の家(スラム街含む)、87の教会が焼失した結果、ペスト菌も焼かれたように翌春には疫病の終焉が明確になった(p32) ・当時のロンドンは人口60万人で、イングランド全体の10%、二位以下の60の都市をあわせても及ばない程の大都市、二位のリノッチは2万程度(p64) ・中国との貿易では、中国人が好む銀が使われた、イングランドの国際貿易の4分の3が、ロンドンの埠頭、倉庫、銀行、取引所を通じて行われた(p65) ・ロンドンで暮らす子供は、100人あたり50人程度が2歳までに亡くなっていた、どんな親も少なくとも一人は子供を葬った(p71) ・ロンドンとパリ(欧州大陸)で売られている「金」の対銀価格に差があった。銀塊をもってフランスへ行けば、その銀塊と同量のイギリス銀貨を使って、ロンドンで購入するよりも多くの金が買えた。イングランドで銀貨を集めて銀塊にして、欧州で金を買って、それで多くの銀を手に入れる(p126) ・イングランドで合法的な拷問が最後に行われたのは、1641年の春、カンタベリー大主教のランベス宮殿で500人の暴動が起きた時(p179) ・ニュートンは歴史上でただ一人、1699年に監事から造幣局長官へ直接昇格した、イングランドの貨幣制度を救った功績(贋金づくりの大物:チャロナーを絞首台へ送った)による(p261) ・1715年には1699年に鋳造された世紀銀貨がすべて消えた結果、金本位制へ移行するきっかけが生まれた(p262) ・南海会社の株暴落(1720以降)により、ニュートンは2万ポンド(造幣局監事の40年分の給料)による損失を被った(p265) 2013年5月4日作成

Posted byブクログ

2013/05/02

ニュートンは万有引力を発見したことで有名ですが、そんなニュートンがロンドンで生活するために造幣局監事として、贋金づくりの犯人を捜査する。偉大な科学者の意外な側面を知ることができる1冊。面白い。

Posted byブクログ

2013/01/31

ニュートンが残した功績の一部を記した本。書簡の引用が多いです。銀の相対価格やニュートン力学の話については、浅学故に理解しきれなかった…『プリンキピア』の読解は無理でも、その解説本くらいは読めるようになろう、という気にさせてくれる有意義な一冊でした。

Posted byブクログ