薔薇の回廊 の商品レビュー

アンドレ・ピエール・ドマンディアルグ【著】,松本完治【訳】,山下陽子【画】

2017/07/04

『薔薇の葬儀』に既に収録されているらしいので、読んだことあったはずなんだけど、全然覚えてなかった。
2010年代になってもマンディアルグの新訳が出てることが単純に嬉しい。

2014/03/22

画家の署名本。淡い薔薇色の肌に僧衣を纏った様な瀟洒な装幀で、山下陽子の挿画コラージュは５点収録。谷崎へと捧げられた物語に一層と蜜が滴るようで、紙の風合いが触覚や嗅覚までも刺激する。パリの地下鉄は地下迷宮の様に、地軸が傾き空間が乱れ、時空が歪んで風の渦がぶつかり合う。流しの女のハスキーな歌声、奇妙な異邦人の残像。豊かな髪は風に弄ばれ、先端がナイフの様だ。華奢な身体は少女か或は少年か。俯いた顔の頭部は空間と一体化したのか、別次元にあるのか。急流に剥き出しの透明な肌。失う、失う、失う、薔薇の花を引き毟るように。