しあわせ中国 の商品レビュー
失われた28日間を巡るある種ミステリーのような要素と、中国の歴史・発展・展望が絡み合う物語。 とにかく注釈が多く、中国通でない人には、もはやこれが現実の話なのか架空の話なのかすら分からなくなってくるほど。それだけリアリティに溢れた話だった。時折教科書を読んでいるような気分になるけ...
失われた28日間を巡るある種ミステリーのような要素と、中国の歴史・発展・展望が絡み合う物語。 とにかく注釈が多く、中国通でない人には、もはやこれが現実の話なのか架空の話なのかすら分からなくなってくるほど。それだけリアリティに溢れた話だった。時折教科書を読んでいるような気分になるけど、そこは「失われた28日の謎」という本書最大の謎解きが知りたくて読み進められた
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現代中国版ディストピア小説。中国では発禁処分を受けている。 2008年の経済恐慌をきっかけに、世界は政治・社会・経済の混乱した「氷火期」に突入した。一方で、中国だけは治安や経済の安定した「盛世」を謳歌し、人民も幸福感に包まれて生活している。 北京で暮らす台湾人作家の陳は、しばらく会っていなかった二人の人物と再会する。陳が新聞記事を書いていたころの熱心な読者だった方草地は、一ヵ月がなくなった、誰もそのことを覚えていないと訴える。かつて好意を寄せていた小希は、周りの人たちが変わってしまったと言い残して姿を消してしまう。 自分を取り巻く環境に違和感を覚え始めた陳は、方と協力して河南省へ向かう。ネットのハンドルネームをヒントに小希の居所を突き止め、無事再会を果たす。 その後、国家指導部の何東生を誘拐する方たちの計画に巻き込まれるかたちで、陳は何に取り引きを持ちかける。そして何は真相を語り始める。 経済恐慌は世界のパワーバランスを一変させるためのチャンスと捉えた中国は、経済基盤を輸出から内需に切り替えて安定させることに成功する。さらに日本と安全保障条約を結ぶことによって東アジアにおける中国の覇権と地域の平和を確立させる。 「氷火期」突入の報道をきっかけに、国内は混乱し、買い占めや暴動が多発するが、政府はあえて放置しておき、人民が耐えられなくなってからようやく解放軍を派遣し各地で歓迎を受ける。その後、厳しく社会統制を進め、委縮した民心を弛緩させるため、LSDに含まれる成分を水道水や各種飲料に混入する。そして政府も予期しなかった結果が起こる。「氷火期」から「盛世」に至る一ヵ月のことを誰も覚えていないということがわかった。そこで政府は新聞や週刊誌の内容を修正し、その期間の情報を消し去ってしまった。 第一部・第二部はミステリー風だが、何の告白がメインとなる第三部は政治、経済、軍事、歴史など学術的な内容となり、雰囲気が変わる。 化学薬品で民心を操作するというのはちょっと強引に思えるが、第三部の内容は中国の世界観がうかがえる。陳と小希のネットでのやりとりは電車男を彷彿とさせてほっこりする。 この本が発表された2009年では、日本は経済的、軍事的にまだ侮ることができない相手とされているが、それから十年以上が経った現在では、中国には日本がどう映っているのだろうか。
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中国版1984年といったところか。物語としてはもう少し工夫が欲しかったが、内容の濃さと深さは一級品だ。どこからどこまでが実際に起こったなのかフィクションなのか、詳しい人でないと分からない。中国現代史にある程度知識がないと、理解は難しいかもしれない。
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近未来SFというよりも政治経済小説というのが適切かもしれない。後半で、実際の世界情勢の分析とあるべき未来像とおもわれるものを何東生が語る場面は非常に興味深かった。中国が考える未来の国際関係がモンロー主義(新しい冊封体制)というのが、なるほどと思った。
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